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うってつけの日



 ある日の朝、俺はひとりでエルフの街を歩いていた。


 (ここに来てからもう、結構経つな……)


 俺は転生してきたばかりのことを思い出していた。


 (あのころは右も左もわからなくて、戦うすべもなくて……)




 (最悪だったな……)


 そのころの完全な孤独感を思い出していたのだった。


 (だけど、なんとか最初の魔物を倒して……)


 (それから、エイラさんに応援してもらって……)


 (そして、マトイと知り合って……)


 (なんかすでに、いろいろあったな……)



 とそのとき、前方からエイラさんが歩いてきた。


 「よお、ピギー。どこ行くんだ? ずいぶん朝早いな」


 「ええ。ちょっと散歩に」


 そう答えると、


 「そうか。また店に顔出せよ。待ってるからな」


 そう言うと、エイラさんはぽんと俺の肩に手を乗せて去っていった。


 (エイラさん……)


 (最初に俺のことを応援してくれたひと……)


 (あのとき、本当に嬉しかったな……)



 俺はふと、通りの真ん中で立ち尽くした。


 考えてみると、こんなにも信頼できるひとと知り合えたのは、元の世界でもなかったことなのだ。


 (もともと俺は友達も少なかったし、いじめられっ子だったし、気が弱かったからな……)


 (だけど、こっちに来てからは、むしろいろんなひとが俺を認めてくれる……)


 (最初は不安だったけど……)


 (今は、むしろ居心地が良くなってきてる……)



 と、そのとき、


 「ピギー! ずいぶん朝早いじゃねぇか! 」

 とすぐ近くで声がした。

 「フリューゲルさん。もう店の支度ですか? 」

 「あたぼうよ! 朝飯を食いに来る常連がたくさんいるからよ! 」

 「さすがですね。フリューゲルさんの飯、ほんとに美味いですもん」

 「ガハハ! おだてても奢らねぇぞ! 」

 フリューゲルさんはのけぞって、豪快にそう笑っていた。

 

 俺が店の前から立ち去ろうとすると、


 「……ピギー。疲れたらまたいつでも飯を食いに来い」

 とフリューゲルさんが優しく微笑んで言った。

 「……はい」

 と俺は答えた。



 (俺は、このひとの優しさを知っている……)

 

 (いつでも他人を心配してくれている、本当の意味で強いひとだ……)


 

 「じゃあな! 」

 

 そう言うと、フリューゲルさんは店のなかに入っていった。



 それから、通りを歩いているいあいだに色んなひとに出会った。


 ギルドで武器を直してあげたひと。

 以前揉めた門番。

 現実の世界では友達だった、古澤。


 それから、ゾフさんにも出会った。


 「ピギー君。また素晴らしい素材を待ってるよ」


 道に痰を吐きながら、ゾフさんが言った。

 

 「ピギーさん。今度、食事行きましょうね」

 

 と、いつの間にかすぐ近くにいたエフィーさんが言った。



 それから、目の前から良く知った三人が俺の方に歩いてきた。


 「ひ、さ、し、ぶ、り、ピギー」

 

 にっこりと微笑みながらそのひとが言う。


 「ティスタさん。お久しぶりです」

 

 俺は心から胸が柔らかくなって、そう答える。


 「どう? 元気してんの? 」


 と、ティスタさんが馴れ馴れしく俺の首に手を巻きつけてくる。


 「よせよ、ティスタ。ピギー君が困ってるだろ? 」

 とキースさん。

 「ほんと、ほんと。困ってる」

 とユリ。


 「いいや~。これは喜んでいる顔だね~、私が思うには~」

 と、ティスタさんはいかにもSっぽく、俺の首を締めてくる。


 「いつつ…‥。ティスタさん、ほんとに、痛い、痛い……! 」


 そう言いながら、俺は嬉しくて仕方なかった。


 こんなふうに誰かと楽しく話すなんて、現実の世界でも殆どなかったのだ。



 (いつの間にか俺の大好きなひとでこの世界は溢れている……)


 (ティスタさん、キースさん、ユリ、フリューゲルさん、エイラさん……)


 (このひとたちは俺が嫌がるようなことを、絶対にしない……)


 (他人なんてみんな自分のことしか考えない嫌な奴ばかりだと思って生きてきたけど、案外、そうでもないよな……)


 

 「じゃあね、ピギー。またみんなでお酒飲みに行こ」


 そう言うと、ティスタさんはにかっと笑って去っていった。


 その後ろで、キースさんが謝るジェスチャーを俺に向け、ユリもぺこりと頭を下げていた。


 (本当に、気持ちの良いひとたちだよな……)

 

 (ユーモラスで、優しくて、他人想いで……)





 (だけど……)


 と俺は思うのだ。



 大好きなひとたちで溢れているこの街。


 

 それでも、俺にとって、すべてはこのひととの出会いからなのだ。


 そのひとがいなければこんなに上手く行かなかったし、勇気も出せなかった。



 ……自分の宿に戻った俺は、そのひとに向かってこう言った。


 

 「準備は良い? マトイ。……俺は全部用意できたよ」


 

 しっかりした、意志の強そうな目。


 フードで隠してはいるけど、その美しい顔。


 そして、ほんのちょっぴり、恥ずかしがり屋なところ。


 

 (俺の冒険のすべては、マトイと出会ったところからだ……)


 (この娘がいなかったら、俺はなににもならなかった……)



 マトイが立ち上がり、フードをぐっと押し下げて言った。



 「……ん」



 「……こっちもオーケー。ピギー、行こ……」






 俺たちは宿を出て西に向かって歩き始めた。


 今回は青蛇を駆除するクエストを行うつもりだった。

 そのクエストを受注するとき、フリューゲルさんは必死に俺たちを止めた。

 「あれはA級冒険者が数人必要なクエストだ」というのだ。

 だけど、俺たちに勝算がなかったわけではない。

 市場に通い、それなりに準備もしてきた。

 だから、自分たちの力を試してみたかったのだ。

 「……お前ら、本気みたいだな」

 と、フリューゲルさんが俺たちの覚悟に気づいて言った。

 「そのつもりです」

 と俺は答えた。

 「……じゃあ、これ以上はなにも言わねぇ。いいか、生きて帰れよ」

 「……はい」

 フリューゲルさんは最後に、俺の背中を軽く叩いていった。

 それはいつもと違うニュアンスの叩き方だった。

 なにか、俺の冒険者としての門出を祝う、という意味を感じさせられる叩き方だった。

 俺が覚悟を決めてクエストを受注したことが、フリューゲルさんも実は嬉しかったのかもしれない。




 「マトイ。……いつもありがとう。俺にとって冒険とは、君と一緒に歩くことだよ」



 門を出たところでそう言うと、


 

 「……ピギー。今、私、同じことを思ってた」


 とマトイが珍しく満面の笑みで笑った。


 「……じゃあ、行こうか」

 

 俺も笑ってそう言うと、


 「…‥うん」


 とマトイも頷いて前を向いた。




 通い慣れた街道。

 

 西側には魔物の棲む深い森が見える。


 街を出た途端、辺りを魔物が徘徊している緊張感が漂う。


 でも、空は晴れ渡り雲ひとつなかった。


 

 「……風、気持ち良いね」


 マトイがそう呟いた。


 俺たちの歩く街道のうえを、幾人かの冒険者が武器を背負って歩いていた。


 「……うん、冒険に行くには、うってつけの日だ」



 



 






 










 現在のステータス




 愛称:皮剥のピギー

 種族:人間

 同伴者:マトイ(忌み子) 

 所属ギルド:ハングリー・バグ

 パーティー名:【子豚】

 所持金:金貨42枚、銀貨46枚

 所持品:クレイモア、ブロードソード、バタフライナイフ

     ラージクラブ

 所有スキル:修理士、ポーション生成、調合、魔術フレア


いつも読んでくれてありがとうございますm(_ _)m

これで2章は終わりです。次回からは3章青蛇、ギルド復興編(仮)を始めようと思います。


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