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見物

 




 ティスタさんたちに追いつくと、


 「ピギー君、やるね~。戦闘スキルはないって聞いてたけど、全然戦えるじゃん」

 「あ、見ててくれたんですか? 」 

 「そりゃあ一時的とは言えパーティーを組んでいるわけだからね。ピギー君に傷を負わせるわけにいかないもんね~」

 さすがティスタさんだ。砂埃のなかで自由に戦っているように見えて、しっかりと俺たちのほうにも目を配っていたのだ。

 「それより、倒した魔物の素材を剥いでいなかった? 」

 「あ、はい。僕らはクエストが受注出来なかったので、魔物の素材を売って生計を立てていたんです」

 「へえ~そうなんだ。ちょっと見ても良い? 」

 「あ、いいですよ。こんな感じです」

 俺はバッグのなかから爛れ馬の尻尾と、胃袋を取り出した。


 すると、

 「え、これ、ピギー君が剥いだ魔物の素材? 」

 とティスタさんの横に立っていたキースさんが大声をあげた。

 「あ、はい。一応、そうですけど……」

 「待ってくれよ、これ、綺麗すぎないか……? 」

 「……ホントだ。すっごく、綺麗……」

 いつの間にかユリも近寄ってきて俺の剥いだ爛れ馬の胃袋を眺めていた。

 「ちょっと、これ、触ってみても良い……? 」

 「あ、全然、良いですよ」

 そう答えると、キースさんが俺の手から爛れ馬の胃袋を取り上げて、しげしげと眺めた。

 「すげえ~……。こんなに綺麗な爛れ馬の胃袋、初めて見たよ……」

 「次、私も……」

 なにが珍しいのか、ユリもキースの後ろに並んで次の順番を待っていた。

 「ピギー君、どうやったらこんなに綺麗に剥げるんだ? 俺もやり方を教わって良いかな」


 

 「あの、実は……」

 と言って、俺は自分の固有職である「修理士」について彼らに説明をした。

 「じゃあ、剥いだ素材は全部最高品質にまで修復出来るっていうこと? 」

 とびっくりした顔でキースさんが言った。

 「ええ、多分。そうだと、思います……」

 「嘘だろ。そんなの、ズルいじゃないか」

 「ズルい、と言われましても……」

 と答えると、

 「そりゃあクエストなんか受注しないよな。だって魔物の素材売るだけで生活できちゃうもん」

 と羨ましそうにキースさんが叫ぶ。

 「……確かに、すっごく便利なスキル……」

 と若干悔しそうにユリも呟いていた。



 (そ、そうなのかな……)

 と俺は考えていた。

 (ズルいって言うけど、俺はこの職業が戦闘職じゃなかったから苦労してきたわけで……) 

 (今更ズルいとか言われてもな……)


 

 「ピギー君、褒められているんだから、胸を張っていこう! 」

 と、突然ティスタさんに背中を叩かれた。

 「みんなね、ピギー君の固有職にびっくりしてるんだよ。それはあなたの才能だから、胸を張って良いんだよ」

 と付け足してくれる。

 「あ、はい……。ありがとうございます……」

 と、なぜか小声になってそう返した。


 (そうだよな……。褒めてくれているんだよな……)

 (なんかわかんないけど、微妙に萎縮しちゃった……)


 

 「それより、ピギー君、私たちが討伐した魔物の素材も剥いで良いからね」

 「え、そうなんですか? 」

 「そりゃあ良いでしょ。私たちがさっき倒した魔物の素材は採ってないでしょ? 遠慮なんてしないでよ~」

 「いや、もしかしたら、マナー違反なんじゃないかと思って……」

 「そーんなみみっちいこと言わないわよ! 」

 とまたティスタさんが豪快な声で俺の背中を叩いた。

 「じゃあ、ほら、私たちがさっき倒した魔物の場所、そんなに遠くないから、みんなで戻ろっ! 」

 「ええっ、良いんですか? 」

 「良いよ! 行こ、行こっ! 」


 めちゃくちゃに明るいティスタさんの声に促されて、俺たちはさっき戦闘の行われた少し手前の地点までみんなで戻っていった。



 ……



 その場所まで戻ると、そこには約三十匹近い魔物が地面に倒れていた。


 (すごいな……、あんな短時間で……)

 (俺たちの三倍近い量倒しているじゃないか……)


 「ピギー君、素材を剥ぐところ、見ていても良い? 」

 わくわくした顔で、ティスタさんがそう言ってくる。

 「あ、はい、全然良いですよ」

 そう答えると、興味津々とばかりにキースさんとユリも近づいてきた。


 「じゃあ、早速……」 

 そう言って俺は、足元に倒れていた爛れ馬の腹をナイフを引き裂き始めた。


 (なんか、緊張するな……。俺以外、全員めちゃくちゃに顔が整ってるし……)


 と、絶世の美男美女に囲まれて、俺はそう思っていた。


 「まずは、腹にナイフを入れて……」

 と俺は爛れ馬の腹を一気に引き裂いていった。

 皮剥に関しては結構経験を積んだから、俺もそれなりに自信を持っていた。

 俺のナイフが爛れ馬の股関節まで引き裂くと、

 「おお~」 

 と三人の歓声があがった。その横で、なぜか若干勝ち誇った顔でマトイがそれを眺めている。

 「そして、なかに手を突っ込んで、臓器を採っていきます……」

 「それが、心臓……? 」

 とティスタさんが顔を近づけてくる。


 (やばい、顔、めっちゃ近い……)

 (わかってはいたことだけど、近くで見ると、ティスタさんすげー可愛いな……)


 「そう、です……。それで、こっちが胃袋です」

 若干照れながら、そう答えた。

 「ほお~。それで? これに修理スキルを当てるってこと? 」

 「そうです。やってみますね」

 

 俺は取り出した胃袋、肝、切り取った爛れ馬の尻尾に修理スキルを当てていった。

 すると、みるみるうちに損傷が消え、まるでまだ生きているかのように臓器が綺麗に整う。

 「……なる、ほど……」

 とキースさんが唸る。

 「こりゃあ、便利だわ……」

 と真剣な眼差しになってティスタさんも頷いた。

 「羨ましい」

 と、ユリもぽつりとそう呟いていた。


 

 ……



 その後、その場にあった33匹の魔物の素材をすべて剥いでいった。

 そのすべてをキースさんが近くで見物していた。

 すべてを剥ぎ終わると、

 「いや~、良いもの見せて貰った。ありがとう! 」 

と、なぜかキースさんが握手を求めてきた。

 「え、ああ、こちらこそ……? 」

 と俺も一応、握手しておく。

 

 キースさんはティスタさんのところに戻り、なにか昔話を始めていた。

 「あんなに綺麗に剥げるひとって、過去にいたかな? 」

 「う~ん、私が思い出せるのは……」

 と過去の冒険を思い出しているようだった。



 「……ピギー、今のうちに、結晶化しておいたら? 」

 いつの間にか横に来ていたマトイが言った。

 「マトイ。うん、そうだよな。俺もそう思っていたところだ」


 西に向かって三人の後を歩きながら、バッグから一つずつ採取した心臓を取り出し、それを結晶化していった。


 採れた素材について列挙すると、

 ティスタさんたちによって討伐された魔物は33匹のうち、21匹が爛れ馬。うち6匹が腐り木。残りの6匹が不気味(ぶきみ)(ばな)だった。

 そこから採取出来た素材は、爛れ馬の結晶、肝、胃腸、尻尾がそれぞれ21個ずつ。

 腐り木の結晶が6個。

 不気味花の結晶が6個、花びらが30枚、雌しべ6本、雄しべが30本だった。


 

 採れた結晶に関してもこっそりと水晶で鑑定すると、これらのものが採れた。

 《レベル》に関しては13のものが15個。11のものが6個。9のものが12個。

 結晶の《ランク》に関してはBがひとつ。Cが3個で、Dが20個。Eが5個。Fが4個あった。

 《ボーナス》に関しては、以下の通り。



 《ボーナス》 魔術量増加(小) ×8

 《ボーナス》 ポーション効果上昇 ×3

 《ボーナス》 調理師スキル"調理”獲得

 《ボーナス》 皮剥速度上昇(小) ×2

 《ボーナス》 敏捷性アップ(小) ×4

 《ボーナス》 マヒ耐性 ×2

 《ボーナス》 毒耐性

 《ボーナス》 スタミナアップ(小)×4



 そして最後にBランクあった爛れ馬の結晶を鑑定すると、



 《ボーナス》 魔術量増加(中)


 

 と表記してあった。


 

 (おお……、やっぱり、ランクが高いほうが効果がでかいな……)


 「ピギー、前」

 とマトイが呟くから前を向くと、ティスタさんが俺たちに向かって手を振っていた。


 

 「ピギー君、ほら、はぐれないようにして~! 」


 その声もいかにも楽しそうなのだ。


 「今行きます~! 」

 ついこっちも大声になり、そう返した。



 


 

 現在のステータス


 

 愛称:皮剥のピギー

 種族:人間

 同伴者:マトイ(忌み子) ティスタ、キース、ユリ

 所持金:金貨3枚、銀貨45枚

 所持品:クレイモア、ブロードソード、バタフライナイフ

     腐り木の結晶×10

     爛れ馬の結晶×22 尻尾×22 胃袋×22 肝×22

     不気味花の結晶×6 花びら×30 雄しべ×30 雌しべ×6



 


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