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成果



 それから3日掛けて俺はすべての結晶を喰い終えた。


 

 二日目は思ったより結晶が食べられなかった。

 一種の二日酔いの状態になってしまい、口に結晶を運ぶと吐き気が込み上げてきたのだ。

 それでもなんとか喰い進め、6つの結晶を喰うことが出来た。


 その日の夜に宿の庭でクレイモアを振ると、初日よりもさらに簡単に振れた。

 身体つきにも明らかな変化が見られ、全身が引き締まっていた。

 俺の腕はもともとかなり細かったのだが、それが靭やかに太くなっていたのだ。


 試しに庭に生えていた木にクレイモアを振り下ろしてみた。

 すると、あっさりと木の幹に切れ目が入った。

 斜めに入った切れ目の上を木の幹はゆっくりと滑っていき、やがてバランスを崩して地面に激しく転倒した。

 俺に剣士職の才能はないから、強引に腕力だけで切り倒したという感じだった。

 俺は倒れた木を見つめたまま、突然上がった自分の筋力にしばらく呆然としていた。



 その翌日も一日掛けて残りの結晶を喰った。

 立て続けに結晶を喰うことに身体も慣れたのか、二日酔いも収まっていた。

 それどころか、起きたときに明らかに体調が違うのだ。

 今までは日々の冒険にへとへとに疲れていたのが、全身に力が漲っている。

 それもそのはずで、今までに自分になかった筋力が全身に備わっているのだ。

 起きただけで、体中の筋肉が躍動するのが感じられた。


 5つの結晶を食べ、そのあとで大蜘蛛の結晶を口に入れた。

 それは今までとは全然違う体験だった。

 なかから溢れてくる生命力というか、充実度が、これまでの結晶とは比べ物にならないほど大きいのだ。

 (すごい……なんだ、これ……。身体のなかから、力が溢れてくる……)

 大蜘蛛の結晶を食べ終わったときには、すでにその効果が感じられた。

 ついさっきよりも、歴然と筋力が増している。

 (ちょっと、クレイモアで試してみるか……)

 そして庭に出ていってクレイモアを握ると、――なんと片手で持ち上げられた。

 (クレイモアって、こんなに軽かったか……? )

 (いや、違う……。俺の筋力が尋常じゃなく上がっているんだ……)

 


 「ピギー、結晶を食べた成果はどう? 」

 と、そのときマトイが起き出してきて言った。

 「うん、かなり順調だよ。明らかに強くなっているのが感じられるんだ」

 「ピギー、見た目もぜんぜん違う。かなり、ムキムキになってる」

 「そう、かな……? 」

 自分でははっきりわからないが、マトイが言うなら多分そうなのだろう。

 「試しに、あれ、斬ってみたら? 」

 と、マトイが指差したのは庭に落ちていた巨大な岩だった。

 (あれか……)

 (木は斬れたが、岩はどうだろうな……)

 (だけど、もはや片手でクレイモアが持てるんだ……)

 (両手で握って振り下ろせば、ひょっとしたら斬れるかもな……)


 「……うん、じゃあ、ちょっと試してみるよ」 

 そう言うと、マトイも目を輝かして頷いた。


 

 俺は岩の前に立った。

 (こんなものが、本当に、斬れるのかな……)

 その岩の大きさに、俺は軽く怖気づく。

 (俺に剣士の才能はないから、ただひたすら力づくで振り下ろす……)

 (それだけをイメージして、やってみよう……)


 俺は剣を大きく振りかぶった。

 そしてそれを、力いっぱい振り下ろした。

 すると――、



 ザシュッッッ……



 という音を立てて、岩は真っ二つに割れた。



 「割れ……た……」

 「すごい、ピギー、剣士みたい……」

 

 思わず、ふたりで呆然とする。

 そして、顔を見合わせて、両手を握り合い、

 「割れた、割れた……! 」

 と言いながらふたりで飛び跳ねた。

 「本当に、俺の手で岩が割れた、割れた……! 」

 そのまま二人で抱き合いながら、その場でくるくると回った。

 「すごい、ピギー、偉い……。今まで頑張ってきた成果……。偉い、私が、褒めてあげる……」

 マトイは長い髪のしたで、子どものように満面の笑みでそう言っていた。

 

 

 その後、マトイと話し合って、色の違うハングリーウルフの結晶はまだ温存しておくことにした。

 ひとつは、今俺がフレアを使えるようになっても、せいぜい1,2発使える程度の魔術量しかないからだ。

 要するにフレアを覚えたところで、さほど実践に役に立たない。だから、いつか必要な場面が来るまで取っておくことにしたのだ。

 「マトイが喰えば、今からでもフレアが使えたりしないのかな」 

 そう尋ねると、マトイは左右に首を振った。

 呪いの効力は高く、新たに魔術を覚えてもやはりその魔術は使えないのだという。

 それで結局、俺たちはその結晶を大切にしばらく保管することに決めたのだった。


 そして翌日、いよいよフリューゲルさんのギルドでクエストを受注する日となった。

 「マトイ、いよいよだ。実力も付いたし、必ずクエストを成功させよう」

 そう言うと、マトイも静かなやる気を漂わせて、ゆっくりと頷いた。


 そして俺たちは、フリューゲルさんのギルドのある街の中央に向かって歩み始めた。



 









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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここでフレアの結晶を食べない理由がわからない。 回復アイテムじゃないんだし、弾数制限があるからこそいざという時のためにも早めに覚えて使い方の練習をしておいた方がいいんじゃないの?と。
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