マトイ
エイラさんにフリューゲルさんのギルドを紹介して貰った帰りのことだった。
「マトイ、これでやっと、俺たちもギルドに所属できそうだな」
「…うん。かなりの進歩。私、嬉しい」
(だけど、ギルドにはどんなひとが所属しているんだろう……)
(今日はギルドには誰もいないみたいだったが……)
フリューゲルさんは後日、ギルドの仲間を紹介がてらあるパーティーと一緒にクエストを受注してくれと言っていた。
(まあ、そのときにギルドの様子も大体わかるだろう……)
その晩、俺たちはフリューゲルさんの経営する食堂で夕飯を食べた。
「……美味しい」
心底感激したようにマトイがそう零す。
「うん、美味しいね」
「……うん、とっても」
マトイはなにかを噛みしめるように感動した様子で食べていた。
(マトイのこの表情を見れるのが今の俺にとっては幸せだな……)
(ずっとマトイの笑顔が続けば良いのに……)
……
翌日、俺は朝からあることのためにいろんな準備をしていた。
「……ピギー、買ってきたよ。これで良いの? 」
「ああ、ありがとう。そこに置いておいてくれ」
「……ん」
マトイにお願いして、俺は牛乳や果実のドリンクを買ってきてもらっていた。
ほかに大量の水を床に並べ、万が一のときようにポリバケツも置いてある。
(もしかしたら、吐いてしまうかも知れないからな……)
俺はこの日一日、ひたすら魔物の結晶を喰うことに決めていたのだ。
「マトイ、今日は結晶を喰い続けようと思う。少し無理をするけど、死なない程度に気をつけるから、そっとしておいてくれ」
マトイにはすでにこのことは話してあったが、改めて確認する。
「……うん、わかってる。あんまり無理しないで」
よほど心配なのか、俺の服の袖を摘んでマトイがそう言った。
思わず苦笑しながら答えた。
「大丈夫だよ。そんなに変なことにはならないよ、多分」
「……ん」
と答えたマトイは、俺の隣にちょこんと腰を降ろした。
……
さて、前回結晶を3つ食べたから、結晶は残り23個ある。
今日一日これがすべて食べられると思わないが、なるべくたくさん食べていこう。
俺は床に並べた魔物の結晶のひとつを手に取り、それを口に入れた。
最初に結晶の半分を口のなかで噛み砕き、中から溢れる結晶の汁を楽しむ。
(ああ……やっぱり……これ、めちゃくちゃうめぇ……)
口のなかいっぱいに広がる汁気を俺は舌で転がす。
汁気はかすかにねとねととしていて、それが舌にまとわりつきながら口のあちこちに流れていく。
その粘ついた汁気のなかに結晶の破片が絡みつき、アクセントとなる。
(ああ~……、うめぇ……、しあわせだ~……)
結晶をふたつ喰うころには、俺は完全にぼおっとしていた。
……
カーテンを閉めた薄暗い部屋で、ひたすら結晶を食べていた。
と言っても果物のようにむしゃむしゃは喰えないから、ゆっくりと一つずつを時間を掛けて味わっていく。
俺はぼおーっとカーテンの隙間の日差しを見ていた。
(……気持ち良い、なあ~~……)
と、そんなことをぼおっと思っている。
「……ピギー、大丈夫……? 」
気がつくと、マトイが俺の肩に頭を寄せて座っている。
「うん……、今回は……、そんなに激しくは酔ってない……」
「……もしかしたら、耐性が付いたのかもね」とマトイ。
(……そうかもな……)
(前回はものすごく酔ったが、今回はそこまでは行かずに、ずっと気持ちよさが続いてる……)
(というか、もしかしたら、俺は結晶の酔いに強いのかも……)
……
いつの間にかカーテンの隙間が暗くなっている。
俺はゆっくりと12個の結晶を喰い終わっていた。
「……」
窓の外では仕事終わりに通りを歩く人々の声が聞こえた。
「ピギー」
すぐ近くでマトイの声がする。
「……どうした」
「ずっと、こうしていたいね」
「……どうした、急に」
「なんか、ピギーといると、安心する」
「……そ、そうか」
「多分、それはピギーがひとに優しいからだと思う。ピギーは絶対にひとを迫害しないんだと思う。それがそばにいると感じられる」
「そうかな……、自分では、自覚ないけど……」
「多分、ひとはいじめられたことがないと、いじめられる辛さがわからないんだと思う。ピギーはそれがわかってる。だからみんなに優しい。私にも優しい。私はこんなに優しいひとに会ったことがない」
「エイラさんがいるじゃないか」
「エイラさんも優しいけど、ピギーの優しさとはまた違う」
それから、マトイがこう付け足した。
「……ピギーは私にとって、すごく特別……」
気がつくとマトイの寝息が聞こえていた。
(ずっと我慢して起きてくれていたのか……)
(マトイ……)
俺はマトイをベッドに運んであげた。
それから、暗闇のなかでマトイの顔を見下ろした。
(長い髪で隠しているけど、マトイってすごく綺麗な顔しているんだよな……)
俺は手の裏でマトイの頬を撫でた。
(早く、マトイの呪いを解いてやらないとな……)
俺はマトイの身体のうえに布団を掛け直してあげた。
……
酔いを少し覚ましてから外に出た。
(さて、クレイモアが振れるか試してみるか……)
(とりあえず、まずは持ってみよう……)
すると、クレイモアは軽々と持ち上がった。
(うお……明らかに、めちゃくちゃ、軽い……)
試しにそれを肩まで持ち上げてみる。
すると、ひょいと軽い棒を持つようにクレイモアが持ち上がった。
(すげえ……、結晶を喰う前より明らかに筋力があがってる……。クレイモアが、めちゃくちゃ軽い……!)
そして俺はそれを力いっぱい振り下ろしてみた。
ザスッ……。
クレイモアは地面に深くめり込んだ。
(す、すげえ……、力任せに振っただけに過ぎないが、クレイモアが余裕で振れるようになってる…‥)
(結晶って、喰うとこんなに筋力が変わるのか……)
現在のステータス
愛称:皮剥のピギー
種族:人間
同伴者:マトイ(忌み子)
所持金:金貨3枚、銀貨48枚
所持品:クレイモア、ブロードソード、バタフライナイフ、
ハングリーウルフの結晶8個
ゴブリンの結晶2個
大蜘蛛の結晶1個
※読んでくれた方へ
少しでも、
「面白い」
「続きが読みたい」
「楽しい」
と感じるものがありましたら、広告下の「☆☆☆☆☆」から評価をお願いします!!
ブクマ、評価があると物凄くモチベーションがあがります!
どうか、どうか、ご協力下さい! m(_ _)m




