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計算




 翌日、宿のなかで持ち帰った品の整頓を行った。


 マトイと一緒に、死体から手に入れた武器を床に並べていく。

 未鑑定の剣が3本、それから、小型のナイフが1本、計4本の武器が床に並んだ。

 

 (まずはこれらの武器がいくらになるかだな……)

 (確かブロードソードが銀貨3枚で売れたから、それ以上になってくれれば良いが……)

 (エイラさんのもとに売りに行く前に、“修理”を掛けておくか……)


 剣は1本が大剣、残りの2本が直剣だった。

 (こっちの小型のナイフは、柄の部分の装飾が綺麗なんだよな……)

 小型のナイフは修理してみると、ほかのものより高そうに見えた。

 (良い値段が付くと良いんだが……)



 それから、床に大きな布を広げて、そこに魔物の部位を並べていった。

 ハングリーウルフの皮が18枚。そしてウルフの牙が72本。それから、ゴブリンの牙が14本に、尻尾が7本、耳が14本もある。

 あとは大蜘蛛の肝がひとつ。

 これらをひとつひとつ丁寧に重ね合わせ、その横にさらに積み上げていく。


 (うーむ。さすがにものすごい光景だな……)


 「……なんか、危ない闇商人の店みたい」

 一緒に作業していたマトイが思わずそう呟く。

 「俺も同じことを思ってた。やっぱり、魔物の部位を並べていくと、すごい光景になるな」

 宿の部屋の真ん中が魔物の部位でいっぱいになっているのだ。

 さすがにおどろおどろしいというか、不気味なのには違いなかった。

 (冒険している間は気にならなかったが、悪臭もすごいな……)

 汚物を煮込んだような匂いが、部屋中に満ちている。

 (なんか、くらくらしてくるな……)


 「あとは、結晶か……」

 冒険で手に入れた魔物たちの結晶を、並べた部位の隣に積み上げていく。


 (えーと、まずはハングリーウルフの結晶からだな……)


 ウルフの結晶が18個ある。それから、ゴブリンの結晶が7つ。

 あとは大蜘蛛の結晶がひとつ。


 (やっぱり、大蜘蛛の結晶が一番大きいな。効果に違いがあるのかな……)

 (それと、これか……)


 それは冒険の途中で手に入れた、色の違うウルフの結晶だった。

 これだけほかの結晶とは違い、赤みを帯びているのだ。

 

 (うーん。これだけ違う効果があるのかな……)

 (まあ、エイラさんに鑑定してもらうとするか……)


 「それじゃあ、これを持って、エイラさんの店に行こっか」

 「うん」

 マトイも楽しみにしているようで、うきうきした顔で頷いていた。


 

 ……



 「よう、ピギー。待っていたよ」

 エイラさんの店に着くと、笑顔でそう声を掛けてもらえた。

 どうやらすっかり馴染みの客として扱ってもらえているらしい。

 「ずいぶん大きい荷物だな。さては、大量だったな、ピギー? 」

 エイラさんはからかうような口ぶりで俺に言った。

 「ええ、まあ」

 と俺も思わず微笑み返す。

 「じゃあ、見せてくれ」

 そう言われて、俺は担いできたリュックを紐解いた。



 「ちょ、ちょ、待ってくれよ。どんだけあるんだよ? 」

 リュックの中身をカウンターに置いている途中で、エイラさんがそう叫ぶ。

 「どれくらいって、まだまだありますけど……」

 「待てよ。まさかそのリュックのなか、全部魔物の部位なのか? 」

 「そうですけど……」

 「そんなの、カウンターに乗り切るわけないだろ! ……いいよ。こっちに来い」

 そう言うと、エイラさんはカウンターの奥のドアに入っていった。


 そこは店の倉庫らしく、店と同じくらいのスペースにたくさんの物が並んでいる。

 「ここなら床に並べて良いからさ。ほら、続けてくれよ」

 そう言われて、俺は再び床に手に入れた素材を置いていった。

 「おいおい、嘘だろう。ほんとにどんだけあるんだよ……? 」

 呆れた声を漏らすエイラさんを尻目に、俺は次々と魔物の部位を積み重ねていく。


 「宿で数えたら、魔物の部位だけで126個あります。結晶は別にして」

 「ひゃ、ひゃくにじゅう、ろっこ……? 」

 再び、エイラさんが驚嘆の声を漏らす。

 「もしかして、こんなに多いと、買い取って貰えないですか……? 」

 不安になってそう聞くと、

 「いや、買取には支障はないよ。むしろ俺にとってはありがたいくらいさ。……だけど、このあいだまで魔物も殺せなかったお前がいったいどうやって……。ピギー、やっぱりお前、普通じゃないよ」

 そう言うエイラさんはどこか嬉しそうでもあった。

 それを見ると、俺も嬉しくなる。と言っても、俺は自分のことをひたすら「普通」としか思えないが……。


 

 エイラさんはウルフの皮をひとつひとつ点検し、その品質を確かめていった。

 「う~ん。相変わらず、すごい綺麗さだ……。専門の皮剥士でもこんなに綺麗に剥げないぞ」

 エイラさんがそう独り言を零す声が聞こえた。

 「む。こっちのウルフの牙も形が綺麗だ。すごいな、傷一つないじゃないか……」

 「これがゴブリンの耳か……。嘘だろう、これ……? とても身体から剥いだものに見えない。もともとこの形状だったんじゃないか……?」

 「これ、大蜘蛛の肝か……? うわ、初めて見た……! 」

 「こっちは剣3本と、ナイフか……。毎度思うが、これ新品じゃないのか……??? 」


 俺とマトイは部屋の隅に立ち、ぶつぶつ言うエイラさんを見ながら顔を見合わせて笑った。

 

 「じゃあ計126個の魔物の部位と、4つの武器の買取額を言うよ」

 鑑定し終えたエイラさんがそう言って顔を上げた。その内訳はこんなふうだった。


 ウルフの皮が銀貨5枚の買取で、それが18本。計銀貨90枚。

 ウルフの牙が銀貨2枚の買取で、それが72本。計銀貨144枚。

 ゴブリンの牙が銀貨2枚の買取でそれが14本。計銀貨28枚。

 ゴブリンの尻尾が銀貨3枚の買取で、それが7本。計銀貨21枚。

 ゴブリンの耳が銀貨4枚の買取で、それが14枚。計銀貨56枚。

大蜘蛛の肝が銀貨15枚の買取で、それがひとつ。

魔物の部位だけで、合計、銀貨354枚の買取となった。


 それに合わせて、拾ってきた武器が4本ある。

 クレイモア、これが銀貨11枚の買取。

 ロングソード、これが銀貨4枚。

 ショートソード、これが銀貨3枚。

 そしてナイフはサバイバルナイフだった。これが銀貨6枚の買取。

 

 エイラさんは買取額を出すと、武器についてこんな提案をしてきた。

 「武器も全部買い取っても良いんだが、ピギー、君が欲しいものがあるなら、このなかから新しく装備を選んだらどうだ? 」

 

 (そうか……。今使っているのがブロードソードだから、こっちの武器に変えても良いのか……)


 そう言われて、俺は4本の武器を眺めた。

 ロングソード、ショートソードは攻撃力がブロードソードより劣るから論外として、クレイモアは選択肢に入れて良い。

 それからナイフは今後も皮剥をすると思うと、サバイバルナイフに変えたほうが良いだろう。

 (だけど、クレイモアか……。クレイモアは、一応、大剣の部類に入るんだよな……)

 (俺の筋力で大剣が振れるかな……。ブロードソードでさえ扱うのがやっとなのに……)

 そう悩んでいると、

 「迷うなら今決めなくても良いんじゃないか? 気になるのだけ持ち帰ったらどうだ? 」

 「そうか、そうですね」

 そう頷くと、隣でマトイも「そうそう」と言うように頷いていた。

 「じゃあ、サバイバルナイフとクレイモアは持ち帰ります」

 「わかった。じゃあ、合計金額は、その分を差し引いて、銀貨361枚。銀貨100枚で金貨になるから、計金貨3枚と、銀貨61枚を渡すよ」

 そう言うと、エイラさんは奥の金庫から金貨3枚と銀貨61枚を持ってきた。


 目の前に積み上げられた金貨と銀貨を見て、俺はマトイと顔を合わせた。

 正直に言って、飛び上がるほど嬉しかった。

 身体の異変に気がついて手を見つめると、自分の手が微かに震えているのがわかった。

 それほどに嬉しかった。


 「よ、良かった……」

 思わず、そう声が漏れていた。

 エイラさんは小刻みに頷いている。まるで子どもの成長を見守る親のような笑みを浮かべていた。

 (やった……、本当に、本当に嬉しい……)

 (これで少なくとも死体から武器を探す生活から出られる……。宿も、一番安い宿から出られる……)

 俺は自分が追いやられた深い暗闇に、ちいさな明かりが灯るのを感じた。

 わけもわからないまま異世界に飛ばされてきて、わけのわからないうちに「醜い」、「才能なし」と迫害されてきたのだ。

 それが、やっと自分たちだけの力でこれだけの金を稼ぎ、明らかに生計が立てられるようになったのだ。

 (ヤバい、抑えていないと、走り回っちゃうくらい、嬉しい……)

 身体の奥が発光するように、とめどなく嬉しさがこみ上げてきていた。


 「ピギー、……やったね」

 マトイが俺の隣で、そう呟く。マトイもほのかにではあるが嬉しそうに微笑んでいる。

 「あ、ああ。……うん」

 (マトイとふたりなら、もっと強く、もっと上まで行ける気がする……)

 隣にいるマトイを見ると、マトイも同じことを感じてくれているのか、喜びを噛み締めているのがわかった。

「マトイ。ふたりでもっと強くなって、早く呪いを解いて、もっと上に行こう……! 」

 俺がそう言うと、力強い目でマトイが頷く。

 「……うん、そうだね……。私も、頑張る」


 それを見ていたエイラさんが微笑みながら言った。

 「どうやらピギーにマトイを預けたのは正解だったみたいだな」

 それから、こう続けた。


 「じゃあ、あとは結晶の鑑定だな」

 するとエイラさんは奥から水晶を持ってきて、魔物の結晶を見つめ始めた。














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