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忌み子



 エイラさんは俺を武器屋の外に連れ出した。

 その後ろを付いていくと、エイラさんは街の外れまでやってきた。

 (どこまで行くんだろう……。街のこっち側には、来たこと無いな……)

 エイラさんは小さな家のなかに入っていくと、その小屋の地下に続く梯子を降りていった。

 「ピギー、こっちに来てくれ」

 そう言われて、俺も下に降りていく。

 

 地下室は薄暗く狭い一室だった。

 梯子を降り切ると、そこにフードを被った子どもがひとり立っていた。

 「誰ですか、これ」

 「“忌み子”だ」

 「忌み子……? 」

 「そう。この子は呪いを受けている」

 「呪い、ですか」

 「この娘が茂みに隠れているところを見つけて、匿ったんだ」

 「呪いって、見た目は普通に見えますけど……」

 「……見てごらん」

 そう言うとエイラさんはその子のフードをめくった。


 そこに現れたのは美しい顔をした少女だった。

 ……ただし、その顔にはおぞましい痣があった。

 二匹の蛇が食い合うような、おどろおどろしい、黒黒とした痣。

 それが顔中、――いや、首の下にまで続いているのだ。

 

 「呪いを受けた子どもを“忌み子”というんだ」

 エイラさんが言った。

 「呪いって、いったい誰から? 」

 「さあ。それがわからないんだ。呪いを受けているから、この娘もその経緯については話せない」

 「呪いを受けるとどうなるんですか」

 「魔術が制限される。……この娘はもともと魔術の才能があって大魔道士の適正を持っていたんだが、呪いを受けて、わずかにしか魔術が使えなくなった」

 「そして呪いについても話せない? 」

 「そうだ。誰かが呪いを解いてくれれば良いんだが……。だが、この国には呪いを解けるような人材がいない」

 「それで、この娘を俺にどうしろと? 」

 「この娘を預かってくれないか」

 「なんで、俺なんですか? 」

 正直にそう問うた。

 戦闘スキルも持っていなければ、醜いと蔑まれている俺なのだ。俺に預けたところで、心配しかないはずだ。


 「君が普通じゃないからだよ」

 エイラさんが言った。

 「いや、俺なんて、普通そのものですよ」

 「どうかな。魔物の臓器を修復出来たり、剣を新品みたいに修復出来るスキルなんて俺は聞いたことがないよ。長年この国で武器屋をやって、他国とも物品のやり取りをすることがあるが、そんな噂も聞いたことがない」

 「だけど、国王には無能スキルと言われましたよ」

 「それは戦闘職じゃないからだろう? 国は転生者に戦いしか求めていないからね、だから戦闘職以外のスキルは無能スキル扱いするんだ」 

 エイラさんは続けた。

 「魔物の身体から結晶を取り出せるなんて、どう考えてもおかしい。俺にはピギーにはなにかあるとしか思えないんだ」

 「そうですかね……」

 正直に言って、実感がなかった。

 今までも、――そして転生する前もずっと無能扱いされてきたのだ。

 「とにかく、この娘はピギーに任せたいんだ。駄目かな。頼むよ」

 正直に言って、困ってしまった。

 エイラさんには世話になっているという気持ちはあるが、ただでさえ戦闘に苦労しているのだ。

 魔術の使えない呪われた忌み子を引き受けても、俺の手には余るとしか思えない。

 「申し訳ないですけど……」

 と断ろうとすると、 

「この娘がもう魔術は使えないと思っているだろう? 」

 とエイラさんが遮って言った。

 「違うんですか? 」

 「たったひとつだけ今も使えるんだよ」

 「それは、なんの魔術ですか? 」 

 「“麻痺(パラライ)”の魔術だ」

 「麻痺、か……」

 魔物相手もナイフで殺せることは前回の戦いでわかっている。

 敵を麻痺で足止めさえしてくれれば、俺にも戦闘が可能なのではないか、と思ったのだ。

 (あり、かもしれない……)

 腕を組んでそう思索する俺を見て、エイラさんは嬉しそうにほくそ笑んでいた。



 ……



 結局、半ばエイラさんに強引に押し付けられる形で、忌み子を引き受けてしまった。

 ふたりで宿に戻ると、忌み子は部屋の隅でうずくまった。

 「君、名前は? 」

 と聞くと、

 「……マトイ」

 とだけ小声で答えた。

 あとは煤けたローブのなかでじっと黙っている。

 (今は話すつもりもない、という感じか……)


 俺は諦めて、テーブルのうえに今日採った魔物の結晶を置いた。

 ……改めて見ると、いかにも魔物の核っぽい不気味な色をしている。

 良く見ると、結晶のなかで赤い粒子が動いている。

 (これを食うのか……。強化されるって、本当かな……)

 マトイが見ていたら怖がられるかなと思って振り返るが、マトイは猫のように眠っている。

 (じゃあ、食べてみるか……)


 上を向き、口を大きく開けて、結晶を口に入れてみた。

 そして思い切って、噛み砕いてみる。


 (ああ、なんだろうな、この気分……)

 不思議な快楽が身体を抜けていった。

 高級なフルーツジュースを飲んでいる感じというか、甘いお酒に似た味がする。

 (今まさに魔物の生命を飲み込んでいるんだな……)

 そう思うと、この行為がとても残酷な気がした。

 すべて噛み砕いて飲み込むと、身体がすっきりとした。

 

 (なにか、変わったのかな。今のところわからないが……)

 

 試しに宿の外に出て中ぐらいの岩を持ち上げてみた。

 (……結構簡単に持ち上がった……)

 以前は非力で重いものなど持てなかったのだ。

 だが、明らかに筋力が増加していた。

 

 (これなら、ブロードソードぐらいなら俺にも振れるんじゃないか……? )



 その翌日、俺はセイラさんの武器屋に行って初めてブロードソードを購入した。

 ブロードソードは銀貨五枚で買えた。

 試しに素振りしてみる。



 ブンッ。


 (普通に、振れる……)

(これなら、魔物ともある程度戦えそうだ……)




 現在のステータス


 愛称:ピギー

 種族:人間

 同伴者:マトイ(忌み子)

 所持品:小型のナイフ、ブロードソード

 所持金:銀貨7枚


 



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