3 死んだ王者、神の世界に呼ばれる
本日も二話連続投稿。
一話目です。
「……なんだ、ここ?」
雨竜が目を覚まし、写った光景は真っ白だった。
「部屋で寝てたはず……だったよな?」
起きあがり、明日太がひいた布団ではなく、風景に合わせた真っ白な台座に座り、雨竜は考えた。
「……なんか、感じがラノベとかに出てくる神様がいる場所みたい、な?」
キョロキョロと見渡す一面の真っ白な場所で、思いつくのは暇な時に明日太がよく勧めるライト小説や漫画を思い出し首を傾げた。
「実は、その通りです」
突如聞こえた声に反応し、後ろを向くと顔を興奮で赤くし、もじもじと胸の前で両手を握りしめている女性が立っていた。
「えっと……君は?
ここ、どこかな?
って……さっき、なんて言ったっけ?
その通りです?
その通りって……え?
俺、なんて言ってたっけ?
……ああ、そうだ……神様が出てくるような……」
雨竜は、自分でも相当焦っているのが、わかるくらい動揺して、答えを導こうと考える。
「もしかして、俺、死んだのか?」
「……その通りです。
貴方は、ブフカ・エグゼアルと試合し、家に戻り眠った後、そのまま苦しむ事なく永遠の眠りとなりました。
原因は、ブフカ・エグゼアルとの試合、最後に受けたブフカフィニッシュブロー三連発で、脳挫傷、脛椎損傷など、致命的なダメージを受けました。
家に戻るまでは、興奮によるアドレナリンなどで意識はもっていたのですが」
「寝た事で……という事か?」
言葉を引き継ぐように答えを言った雨竜。
「はい、そうです」
「という事は、君、やっぱり神様……なのか?」
雨竜は改めて目の前の女性を見た。
神……女神はプラチナブロンドの腰まであるストレートヘアに、底が見えない湖のような深い蒼の瞳、スッととおった鼻、愛らしい唇をした可愛いらしいのと綺麗を重ね合わせた顔、透き通るような白い身体に、絵画の神達が着ている布の服を着ていた。
未だ頬を赤く染め、潤んだ瞳をしたまま、雨竜の元にきて膝をつき、両手を取り握りしめた。
そして、両手を前に差し出しているので、大きな胸が形を変え主張する。
雨竜は顔を赤くしながらも、その胸に目がいく。
「……感動、しました!」
「うわっ?」
うつむいていた顔を上げ、感極まる感じで大声を間近で上げられ、雨竜は驚いた。
感情が高まっているのか、雨竜の行動は女神には気づかれていないようだ。
女神はとうとう涙を流す。
「貴方の人生、ボクサーとしての苦悩と努力。
そして、最後のブフカ・エグゼアルとの試合。
すべてが私達を魅了し惹き付け、感動を与えていただきました!」
「え?
あ、うん……ありがとう?
ん?
私、達?」
「そうです!
あらゆる世界、星々、次元を管理を行う私達は至る世界の人物達の人生をも見続ける中、偶然にも、貴方を知り、その人生に感動いたしました!
特に平和な世界で己の存在を主張した戦いを挑み勝った最後の勝負はまさに素晴らしかった。
故に、死後の転生の輪廻から呼び出し、貴方が望む世界で、望む能力や加護を限りはありますが与え、新たな人生を謳歌して貰おうと、私達はこの場に貴方を呼び出しました」
女神は立ち上がり、雨竜を呼び出した理由を両手を広げ説明した。
「……ああ、うん……そういう事か。
いろいろと突っ込みどころ、あるけども、だ?」
神って暇なんだなー、と思いつつ思った事を告げる事にした。
「本当にあるんだな、こういう事?」
思い出すのは、ラノベや漫画の内容だ。
「いえ、本当はないです。
ただ、貴方が思った通り、生前に読んだ小説に、こういう内容があるのを知り、特別に実行してみました」
人差し指をたてウィンクする女神。
「……特別、ね?
じゃあ、いろいろ質問するけど、いいか?」
「どうぞ」
女神は頷く。
「まずは……魔法ある?」
「もちろん、ありますよ。
ラノベによくある世界……剣と魔法のファンタジーの世界もあれば、宇宙で活動する世界や、機械王国という世界もあります」
「マジで?
もし、どこかの世界に行ったとして、俺はなにをすればいい?」
「なにも……貴方が望むままに。
強いて正直に言うならば……ある作者が話を書いた後、次も面白い話を書いてほしい……そんな気持ちですかね?」
「……じゃあ、なんだ?
つまり、もらった能力でなにかをして、神様を楽しませろって事か?」
若干、言われた内容が引っ掛かり、口調に謙が入る。
「……いえいえ、そういう意味では。
あっ、すみません……私達が貴方の生前を見て感動したと言った事が原因ですね?
貴方が怒るのも当たり前です。
知らず自分の事を見られ知られるのは、貴方の世界ではストーカーでいうのでしたね。
私が貴方の人生を見つけたのは、本当に偶然だったのです。
そして単に、感動した礼に次の人生を楽しんでほしいと思って……」
慌てた女神は言葉を継ぐほど、言い訳となる事に気づき、語尾がだんだんと弱くなっていく。
「いや……悪い。
俺の言い方も悪かった。
神達にすれば、俺達、人間が漫画や小説を読んでその登場人物を追いかけているのと同じ事か?
登場人物に人格や意識があって、俺が登場人物に感動したと言ったら……うん、登場人物は俺みたいに嫌悪するだろうな?」
フフ、と雨竜は笑う。
「神様達もどこか俺達と変わらないな?
いいよ。
俺の次の人生、見るのは勝手だ。
ただ、送る時、この部分……神様達が見ているというところの会話は記憶を消すか、ぼやかすかしてもらえたら嬉しいかな?
気になるし……出来るか?」
「出来ます。
だから気にせず、次の人生も謳歌してください」
「よしっ!
じゃあ、それで頼むわ。
んで、要望、聞いてもらえるか?
出来れば、行きたい場所は……さっき、言ってた剣と魔法のファンタジーな世界かな。
もちろん魔法以外にも、他にも変わった能力があれば嬉しいな……例えば、気……闘気とか覇気?
念動力とかテレパシーとかの、超能力とか?」
「ふふ、ありますよ」
「マジか?
じゃあ、どうしようかな?
あまり、チート過ぎるのはつまらないし……その世界の人々って、普通どんな感じなんだ?」
「そうですね。
……まず固有スキルは1つ。
あとは、誰もが覚えられる各種魔法やスキルはレベルが上がって貯まるポイントで交換して覚えればいくらでも……その人次第ですけどね」
顎に手を当て、考える女神。
「なるほど……んじゃ、目立たないように、その枠内で考えるか。
そうだ!
錬金術や、鍛冶は固有になるのか?」
「う~ん、どちらともいえないですね」
「それじゃあ、雨竜はわからねぇだろ?」
「うわっ?」
突然、後ろから聞こえた低い声に驚き、雨竜は慌てて振り返る。
いつの間にか、2メートルほどの筋肉隆々のスキンヘッドの男が腕を組んで立っていた。
「おう、驚かせてしまったな?
俺は、貴様が尋ねた鍛冶の神だ。
そのあたりの説明は俺がしよう」
ニヤッと笑い、雨竜の肩をバンバンと叩き、自己紹介する鍛冶神。
当然ながら痛がる雨竜の肩に真っ赤な紅葉が出来ていた。
鍛冶神は気づいていない様子だ。
おそらく雨竜に会えて嬉しいんだろう。
「でだ。
スキルには固有、取得、加護があるんだ。
固有は、そのスキルにかんする全ての能力を、レベルが上がる事で得る。
次に取得だが、これはさっき言ったポイントで得るか、その技術をポイントを使わず、自力でやり続ける事でいつか会得する。
また、これには相性があるからスキルを得ても人より劣る場合もある。
最後に加護だが、そのスキルの神がいて、気に入られた奴は、そのスキルを取得以外、全部得るか1つだけかは、その者次第で得る事が出来る。
努力と相性が合えばだがな」
「へえ……」
雨竜は話を聞いて、なにかを考えている。
「ちなみに、雨竜さんの事を見ていた神は、私を含め数多くいましたので、与えられるポイントは500ありますよ?
神一柱10ポイントとして50柱分ですね。
あと加護は五柱分とします。
与え過ぎたら世界のバランスが崩れてしまいますので」
話の進行役を取り返した女神は、新たな情報とともに決まった話をきいた。
「500ポイントねぇ……加護はなにがあるんだ?」
女神に言われた通りにステータスクリエイトと呟くと、下の方に加護の部分が半透明に書かれていた。
「結構多いな……おっ?
いいの発見!
これは欲しいな……うん、これもいい」
雨竜は慎重に考え、イメージし、構築していく。
1時間後。
「……こんな感じかな?」
思い悩んだ雨竜は深いため息をはく。
「出来ましたか?」
「ああ、とりあえずってところ」
「では、さっそく新しい世界に向かわれますか?」
「……う~ん、あのさ?
俺がいた世界に、夢枕ってあるだろ?」
「ええ、知ってますよ」
女神は微笑む。
「3人ほど、話したい奴らがいるんだけどさ。
……駄目かな?」
「構いませんが……どなたに?」
「それは……」
2人はジムで世話になった会長と明日太。
後は……
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