26 VSテッド②
本日、2話目です。
1話目は、0時に投稿してます。
テッドは様子見とゆっくり構える。
ディランは上半身を前後左右に振り、ステップを踏む。
「おいおい……なんだ?
踊っているのか、お前?」
テッドは、ディランを見て笑う。
「そう見える?」
ディランも笑う。
「……あれは」
離れて見ているケイトは、ディランの動きを見て呟く。
「ケイト、ディランの動きを知ってるのか?」
シオンは、ディランから目を離さず問う。
「え……ええ、そう……ですね?
レオン達は、ディラン様が、毎朝早くから目を覚まされるという事を知っておられますか?」
「ん?
ああ……いつも早く起きてるのは知っているけど、いつ起きてるかは知らないな」
言われて考え答えるレオン。
「そうだな、朝食に遅れた事はないな」
シオンも頷く。
「……4時半です」
ケイトが見届けるディランは、テッドの様々な攻撃に対し、素早くしゃがんだり、上体をそらしたりして避けながら、さきほどのステップを踏み、テッドの死角へと素早く移動している。
「5時になる前に軽く身体をほぐした後、走り込みを30分、あのステップのもとになる縄跳びを30分、見た事のない格闘技の型を繰り出す訓練を20分、腕立て伏せ、腹筋、私にはなぜか理由はわかりませんが……農具の鍬を使っての振り下ろし、最後にしっかりとした柔軟を各10分……計2時間、ほぼ休み無しで鍛えてらっしゃいます」
「そんな朝早くにか……それに縄跳びってなんだ?」
シオンは問う。
「縄跳びは、縄の両端をそれぞれ持ち、少し地面にたるんだ縄の中央を後ろから前に振り回し、足元に来た縄を軽く跳んで越えるのを続ける運動と言えばいいんでしょうか……ディラン様は跳ぶ際、両足だったり、片足に変えたり、時には細かく場所を動きながら跳ばれたりしてます。
今、ああしてステップを刻むようにです」
「……ああ、なるほど。
なにかしら意味あって、訓練しているんだろうね。
ディランらしい」
ケイトが示したディランの動きを見て、レオンは頷いた。
「そうだな。
という事は、他の訓練も理論があるって事だよな?
……なあ、ケイト」
「はい、なんでしょうか?」
シオンの呼びかけに、ケイトはチラリと見て返事する。
「ディランは毎朝5時から訓練しているんでよな?」
「ええ、そうです」
「いや、そうか……俺も出てみるか」
シオンは呟き、頷く。
「ふふ、シオン。
僕も気になるし、つきあうよ。
それより……そろそろ、ディランのほうから攻撃をしかけるようだよ?」
シオンの呟きを捉え、レオンはディラン達に指をさす。
「……ちょこまかと動きやがって!」
軽く肩で呼吸をしながら、いまいましそうにディランを睨むテッド。
「悪いね?
ひさびさの実戦だから、感覚を取り戻すのにちょうどよかったんだ。
でも、いい感じだから……そろそろ、こっちからもいくよ」
ディランはさらに上体を細かく動かしながら、テッドへと近寄って行く。
「へっ……よくわかんねぇけど、そうかよ!」
テッドは向かってくる、ディランに大振りの右を放つ。
「……甘い!」
ディランはさきほどまでと変わり、拳をかいくぐり、左足を半歩踏み込みカウンターの右を、ディランの顔の位置と変わらない場所にある、テッドのみぞおちに渾身の右拳を打ち込んだ。
「っぐほ……」
150センチ以上あるテッドに対し、ディランは70センチに満たさない身長差の為、どうしても上から下と前のめりになり、攻撃が前方に体重がかかるテッドに、ディランの足腰のバネを効かせた右ストレートの威力は、5歳のパンチとは思えない威力となり、身体を九の字に曲げ、口から大量の息と唾液がはき出される。
さらに追い込むように、ディランは左足に重心をかけ、右手を引き戻す動きにあわせ、腰をまわし左フックを脇腹へと打ち込んだ。
「かはっ……」
テッドは2発のパンチに地面に倒れた。
「カウント」
あまりの攻撃の内容に唖然としている2人の審判は、ディランの言葉にハッと意識を取り戻し、数字を読みあげる。
ディランは少し離れた場所から、テッドを油断なく見下ろしている。
「「……4」」
審判が読みあげる数字のなか、テッドは叫びながら立ち上がる。
「……まだだ!
まだ、終わっちゃいねぇ!」
激昂しているが、テッドの足は震えている。
「だろうね!」
見届けたディランは、再びテッドに向かう。
ボクシングのルールに近寄らせた内容にはしているが、この勝負に前世のような審判の判断はなく、また、テンカウントか、降参しか勝負の判定しかないルールに、相手の意思が勝負の再開の合図になる。
それをよくわかっているディランは容赦なく、攻撃を放っては、ステップで素早く離れる。
ボクシングの技術で、ヒットアンドウェイという戦法だ。
足を使って移動し、威力は軽いが確実にテッドの防御の隙間……脇腹や下腹、さらに膝上の太ももにパンチを打ち当てていく。
テッドの足はいまだに震え踏み込みが甘く、ディランの動きについていけない。
「……クソッ」
そして、焦れたテッドがとった行動は……両腕を前方に固め、拳を両頬にもっていき、両足を地面に踏ん張るように肩幅より少し広めに広げ、。
「ん?」
ディランはその構えを見て攻撃をしかけるのを止め、テッドのまわりをゆっくりとステップで移動し様子を見る。
(クソッ、こんなチビにここまで手こずるとは思わなかったぜ。
足のダメージはなかなか抜けないし、腹が重たい……あのチビ、あの年齢で闘い慣れてやがる。
どこで身につけたってんだ?
まずは、せめて息を調えなくては)
テッドは深く息をはき、ゆっくりと呼吸を調える。
「ふむ?」
ディランは再び攻撃をしかける事にした。
まずは背後にまわった辺りで、脇腹の後ろにパンチを当てていく。
テッドは数発のパンチが当たるのは気にせず、その場を中心に、ディランに向きを合わせる。
ディランか動けば、対峙するようにテッドも合わせる。
テッドを中心に円を描くようにまわるディランに、その場でディランに向き合うようにテッドは動く。
「……なるほど、面白い!」
テッドの考えに気づいた、ディランは口角をあげ笑い、ステップを止め、両腕は少し拳を前に出す構え……ボクシングスタイルから、空手スタイルに変え、左足を前に摺り足で距離を縮める。
そうすると、まず攻撃をしかけるのは、腕の長さでテッドがパンチを放つ。
キックはバランスを崩し、避けられれば隙がうまれるので放てない。
「……シッ!」
ディランは左拳を内から外に動かす……まわし受けで、テッドのパンチを受け払う。
構わず左右、もしくは片手の連続するパンチをテッドは放っていく。
ディランもじわりじわりと摺り足を続け近寄りながら、両腕で払い続ける。
テッドは連続して攻撃を重ねた為、少しずつ両腕で固めた防御が甘くなり、再び腹に隙がうまれた。
そして、ディランはそれを見逃さない。
「はっ!」
間合いに入った瞬間、払い終えた右腕の流れ、腰の回転、膝や足の動きを一瞬の一連で右ストレートを、テッドの腹に打つ。
「がはっ」
渾身のパンチが、テッドに突き刺さる。
大きくよろけつつテッドは、ディランの肩から下……上腕を左手で掴んだ。
「……ようやく捕まえられたぜ!
ここから反撃だ!」
試合が始まって、初めてディランを捉えたテッドは、目をギラつかせて掴んだ手に力を入れる。
「それはどうかな?」
そう言ったディランは素早く右手を下から、テッドの左腕を巻き込むように身体ごと動かし、握っているテッドの手を捻り外し、右腕を解放した。




