1 挑戦者、ベルトを取りにいく!
お久しぶりです。
もしくは、はじめまして。
新作です。
読んでいただけると嬉しいです。
この後2時に、もう1話投稿します。
8月に連載終了した「異世界に召喚された幼なじみの5人と巻き添えのオマケの俺、全員が役立たずと言われ、それぞれ自由に生きた」が、先日、15万アクセスを越えました。
ありがとうございます。
『さあ、いよいよ、この時が参りました!
WBA、フェザー級世界王者タイトルマッチが、今ここ両国国技館にて始まろうとしています。
観客席はもちろん、立ち見も足場のないくらい埋め尽くされ、国技館は観客の熱気にて暑いくらいです。
実況は、私、乾と、解説にライト級世界ランク三位の東條影虎選手に来てもらっております。
東條選手、今日の解説、よろしくお願いします』
『ええ、よろしくお願いします』
『早速ですが、王者ブフカ・エグゼアル選手と、挑戦者東雲雨竜選手の両選手を、どう思われますか?』
『そうですね……まず、俺……あ、いや、私より『あ、普段通りに話していただいて結構です』……そうですか?
階級が二つ上の俺より、2人は断然強い。
情けないが、ライト級ランク三位の俺も世界を狙える権利を持っているけど、階級が関係なくこの2人には勝てる気がしない。
まず、パンチ力……破壊力が2人はハンパない。
拳をバンテージやグローブで覆われているのに、直接並みに重いし痛い……そう痛いんだ。
雨竜は同じジムだし、王者ブフカとは、去年スパークリングの相手で呼ばれてヤった事あるけど、顔は骨や脳に直接くるし、ボディは内臓に重く響き、肉は繊維が千切れそうになる。
よく似たハードパンチの持ち主だな』
『なるほど!
お互い一発逆転があるという事もあるのですね?
これは、両選手と、我々観客も目が離せない、油断出来ない、試合になりそうです。
他の見所はどうでしょう?』
『うーん?
王者ブフカは……まず、あの身長ですね。
雨竜より頭2つ高い上、異様に長い手足。
それをどうやってくぐり抜け雨竜はパンチを打ち込むのか、でしょうか?』
『なるほど、なるほど!』
『王者の20センチも長い腕から繰り出す必殺パンチ……《ランス》《デスサイズ》《スウィングギロチン》とはよく言ったものだ。
軽い助走から長い腕を突き出す《ランス》。
爪先を軸に、腰の回転、逆の腕を後ろに振り抜く遠心力を使って、腰の回転、威力、速さを上げる王者独自のフック《デスサイズ》。
そして、そのデスサイズアッパー版の《スウィングギロチン》
どれもが必殺の攻撃となるのだから恐ろしい。
さらにこの3つのショートバージョンを繰り出し、相手を追い詰める技術も優れている』
『おお……では、挑戦者の東雲選手はいかがでしょう?』
『雨竜のボクシングは、あれも俺からしたら異様だな?』
『異様、ですか?』
『ああ……雨竜の亡くなった祖父か子供の頃に教えた古流空手。
その拳技と足さばき、ボクシングの技術が融合した雨竜の右構え、左構え関係ないスイッチスタイル。
リズムステップかと思えば、足腰をドシンと落とし、流れるような空手スタイル。
それらをまとめる冷静な判断力に、動体視力と反射神経。
動きが読めない、読ませないボクシングは、まさに《変幻自在》。
もちろんパンチ力も負けていないだろうし、パンチの種類も豊富。
雨竜ならリーチ差関係なく、打ち合う事が出来ると思っている』
『おお!
まさに聞いているだけで、興奮する分析結果!
見どころが、ますます楽しみになってきました!
と、ここで両選手、順に入場するようです』
カーン!
『ここで、6ラウンド終了!
ここまで、解説の東條選手が言った通りの展開、まさに一進一退。
点数も互角といったところでしょうか?
東條選手は、この後、どう見ますか?』
『……う~ん、確かに互角だけど、少し雨竜が不利になってきたか?』
『ええ?
どういったところで、そう思われたのでしょうか?』
『まずは、雨竜の汗の量……体力のある雨竜がここまで汗をかくとは思いもしなかった。
それだけ、王者ブフカの懐は深いのか?』
「大丈夫か?
雨竜……ほら、うがいして喉を潤おすんだ?
飲むなよ?」
ガラガラッ、ペッ。
「飲まないよ、会長。
まあ、大丈夫だ……やっと、いろいろ慣れてきたところだ」
「おう、そうか?
もうこれまで以上は喋るな。
深呼吸して息を整えろ。
体力を少しでも回復させるんだ」
その言葉に頷く雨竜。
(よし、冷静だな?)
会長は、雨竜の汗をぬぐいながら、そう判断する。
「よし、もう一度、うがいだ」
タイムアウト、セコンドはリングから降りてください。
「もう時間か?
行けるか、雨竜?」
マウスピースを咥えさせ、雨竜を送り出す。
雨竜は振り返る事なく、片手を軽く上げ、リング中央に向かった。
「ファイッ!」
両者構えるのを見て、レフェリーが両腕を交差する。
まずはブフカの速い連続ジャブ。
雨竜は右から左にスイッチしながら、後ろに下がる。
ブフカの最後のジャブを引き戻すのに合わせ、雨竜は再びスイッチして、懐に入り左右のショートストレート。
ブフカも長い後ろ足を一歩下げ、パンチをスウェー……仰け反ってパンチをやり過ごしながら左ショートフック。
雨竜はダック……ブフカの腰まで体勢を落とす……してボディに左フック。
「ぐっ?」
フックが被弾し、ブフカは腰を曲げ、数歩後退する。
雨竜は今度は前に進みながらのスイッチに合わせ、左ストレート。
ブフカは、それを予測していたのか、体勢を戻しながら左足を踏み込み、雨竜のストレートを首を傾げてかわし、合わせて大振りの右フックが雨竜のこめかみにカウンター気味でヒットした。
一瞬、目が白黒してふらつく足が、ブフカの踏み込んでいた足にかかり、さらに体勢を崩した。
そこを追いかけるように、左ストレートが雨竜の顔面に打ち込まれる。
雨竜は尻をリングにつき、尻もちをついた状態でダウン。
カウントを読みあげるレフェリー。
放心状態だった雨竜は、気を取り戻し、ふらつきながらも立ち上がりファイティングポーズを構えた。
ズギン……
「?」
ふらついた足を踏みしめた時、右足から痛みを感じた。
……どうやら、引っかかった際、足を挫いたようだ。
ブフカも、その事に気づき、レフェリーが再び両腕を交差したと同時にコーナーから、素早い助走から右ストレートをトドメとばかりに繰り出す。
だが、それはブフカにとって少し早計だった。
右構えの雨竜。
右腕で《ランス》を流すように受け過ごし、ブフカは体勢が前のめりになる。
そこに、ブフカのこめかみに左フック。
カウンターで入る。
続けて右のショートアッパー。
これも入り、ブフカが口を開き、入れていたマウスピースが見える。
ブフカの膝が崩れ、頭2つ分下がり、ちょうど、雨竜の顔と同じ位置にきた。
「ハアッ!」
雨竜は両足を肩幅より少し左右に開き、手のひらを上に向け拳を堅く握り、両腕を腰元に置き、身体の中心線……空手の正中線の構えをとり、裂帛の気合いを入れた。
そして、左右六連の正拳つるべ打ちを放った。
ドンドンドンドンドンドガン。
6発とも入ったと思われた瞬間、最後の右拳が当たる直前に雨竜の顎に左のアッパー《スウィングギロチン》が入った。
ブフカは雨竜が正中線の構えから気合いを入れたあたりから、左拳に力を込め、アッパーを繰り出していた。
弧をえがくアッパーと、速い六連の正拳突きでは、最後の右拳でしか合わせられず、ブフカは五連までまともにくらったが、最後に相討ちのダメージを与え、雨竜をとめた。
アッパーの威力で雨竜は膝が伸びきり、無防備となった。
ブフカは更に右拳に力を込め、右ストレート《ランス》を放つ。
雨竜はなんとか両腕をクロスして受けるが、威力で後ろに飛ばされ、ロープで跳ね返り、またも無防備になる。
そこにブフカ最大のパンチ右のフック《デスサイズ》を打ち放たれた。
雨竜は左腕で防御するが、ブフカは構わず全力で全身を使い、拳を振り切る。
雨竜は叩きつけられるように、リングへ倒れた。
……カウントナイン。
汗を滝のように流し、ふらつく足に力を込めて踏みしめ、ファイティングポーズを構える雨竜は死に体だ。
だが、目はまだ死んではいない
その雨竜の姿を見て、ブフカは首を振る。
その表情は複雑だ。
「……ファイッ!」
レフェリーは再び両腕を交差する。
雨竜はゆっくりとにじり寄る。
「ハァー……!」
ブフカは覚悟の息をはき、トドメと走り出し右ストレート《ランス》を、雨竜に打ち放つ。
一回目の雨竜のダウンの時と同じブフカの攻撃だが、今回は違う。
今の雨竜のダメージは、一回目とはケタが違う。
避けれるはずがない。
ブフカもすでに限界がきている。
だから、最速で最も威力のある《ランス》を打ち放つ。
ブフカはこれで決めるつもりだった。
そう……そのつもりだった。
「ああああああぁぁぁ……」
雨竜は動かない上半身を無理やり動かし避け、交差するようにフック気味の右ストレートを放った。
クロスカウンター。
お互い、前のめり的に打ち込んだ威力は相乗効果で、数十倍の威力となり、ブフカの顔面に拳がめり込む。
ブフカの口からマウスピースが外れ落ちる。
ブフカはそのまま前のめりで倒れる。
レフェリーが慌てて、ブフカを確認する為近寄る。
ブフカは白目を向け、完全に意識がない。
レフェリーが両腕をあげ何度も交差し腕を振る。
ゴングの音が何度も鳴り響く。
雨竜はブフカを倒した右拳を見て、空高く拳を突きあげた。
観客の歓声は両国国技館を揺らす。
ブフカは意識を取り戻し、辺りを見渡し、雨竜と目が合う。
自然とお互い笑顔になる。
雨竜が右手を差し出し、ブフカは掴み引っ張り上げられた。
「ナイスファイト……チャンピオン」
ブフカは掴んだ右手をそのまま持ち上げた。
「……サンキュー、マイフレンド」
雨竜は目を瞑り、心からの返事を返した。
その光景を見た観客は再び歓声を上げる。
ここに、新しいフェザー級の王者が誕生した。
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書いていて話の内容が難しく、また忙しくて2ヶ月以上もかけて10話もかけていません。
その後は不定期になります。
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