第七話
「えーと、東宮美結ちゃん。何をいきなり――」
「東宮美結じゃなくて、私はタロット戦士アルカナガール!」
あくまで言い張る東宮美結ちゃん。そういえば眼鏡がなくなっているが、それで変装したつもりだろうか。
「だから、東宮美結ちゃん、五月一日メーデー産まれ、身長148センチ、体重――」
「ザ・スター!」
東宮美結ちゃんがカードを一枚取り出し高くかざすと、星形のブーメランが空中に出現し私の顔面に直撃した。痛ッ! あっ、しかも鼻血!
「……なんで私、じゃなかった、東宮美結ちゃんのそんな詳しいデータを知ってんのよ!」
肩をわなわな震わせ、東宮美結ちゃんが鬼の形相で私を見つめる。怖い。
「検体の情報を仕入れるのは科学者として当然のこと」
ちなみに本当はこっそりクロウ君に報告してあげようと思って調べた。
「博士、今の攻撃! 美結ちゃんは噂のアルカナガールだったのちょき!」
興奮してリカがまくし立てる。
「噂の……はて、どんな噂だったかな?」
「不思議なタロットカードを使って中小規模の事件を解決して回っている正義の美少女ヒーローがいるって噂ちょき!」
ああ。その噂か。
「全ッ然知らん!」
「それは博士が研究所にひきこもって外の人と交流しないからちょき!」
「ごちゃごちゃうるさいわよ! ストレングス!」
東宮美結ちゃんのカードから爆発が巻き起こり、私は見事に部屋の反対側まで吹っ飛ばされた。まずい。このままじゃ最後まで身が持たん。早く来てくれ――クロウ君!
「あっ、クロウ君が第一ステージに到着したみたいちょき」
リカ、ピンチの私を無視してそっちに注目するのか。さみしいぞ。
「ったく、何なんだよ……」
ぼやきながら第一ステージに足を踏み入れたクロウ君。東宮美結ちゃんも攻撃をやめ映像を見つめる。よしっ、作戦成功。
「どうやら東宮美結ちゃんを助けるために何者かが侵入したらしいな――ややっ!」
私は画面から三歩ほど後ろに飛び退く。ちょっとオーバーだったかな。
「こいつは以前私の研究所から脱走したハシブトカラス怪人のクロウではないかっ! おのれ、奴め我々を裏切る気だな!」
「許せないちょき! ちょっきんちょっきんにしてやるちょき!」
「リカのハサミでちょっきんちょっきんにされたクロウ君はいたいけな中学生の少女には刺激が強すぎると思うぞ」
「な、何で私が中学生ってこと知ってんのよ!」
まだばれてないと思っているのか。私とは違う意味で奇跡の頭脳だ。