第五話
「ここか」
ちょうどいいポリバケツが転がっていたのでその中に隠れ、私とリカは東宮美結ちゃん宅前で張り込み中。
「博士、網がはみ出てるちょきー」
リカに指摘された。確かに伸縮自在スタンガン機能付き虫取り網の先端がだいぶはみ出している。網部分だけでなく柄部分にも伸縮機能を付けるべきだったか……。
「あっ、出てきたぞ!」
木製の扉が開く。父親はすでに仕事に出かけた後なので、泥棒でも入っていない限り彼女に間違いないだろう。案の定、中から漆黒の長髪をなびかせた美女が登場した。
イメージとちょっと違うというのが正直な感想だ。怪我したクロウ君を手当てした少女というからほんわかしたおっとり系の子を想像していたが、彼女は教育ママ眼鏡がその釣り目をより一層際立たせる、そう、いわゆる学級委員タイプだ。クロウ君を助けたのも、「可哀そうだから」というより「それが人として正しいから」という意識のほうが強いのだろう。物理的な結果としては同じだが、男というのは好きな女の子からちょっとでも同情してもらいたいもの。クロウ君、哀れ。
腰にちょうどトレーディングカードゲームを収納するようなケースを提げているが、学校で流行っているのか。
「あれっ?」
こんなところにポリバケツがあったかという明らかな不信の目をして、こっちに近寄ってくるターゲット、東宮美結ちゃん。そうだ、こんなところにポリバケツがあるわけない。君の反応は予想通りだ。そして近寄ってきたところをすかさず網でゲーット!
「きゃっ……!?」
あまり騒がれると困るので、素早く電流を流して気絶させ、ポリバケツに入れて担いで持ち替える。途中、なぜかゴミ収集の人と間違われて「ご苦労様です」と挨拶された。変装などはしていないのだが、超天才科学者の私もネームバリューの観点で言ったらまだまだということか。