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第二話

「さて、このあたりか。地図上じゃいまいち距離感がつかめなかったが、案外近かったな」


 人通りの少ない通りに立って、私はつぶやいた。かつては商店街だったようだが、ここ数年の不況で店が次々と閉店してしまったようだな。


「博士の行動範囲を数メートルしか外れてないちょきね」


「それは私の行動範囲が狭いといいたいのかね?」


 ああ、でもそんなさりげない毒舌も狂おしいぐらいに愛している。


「それで、ターゲットさんの巣はどこちょきー?」


「うーん、レーダーの反応によるとこの近くなんだがな」


 レーダーというのはこういうとき、実に効率が悪い。XY平面の映像でしか対象物の位置を確認できないので、Z軸方向はるか上方の物体を探すのには適さないのだ。いずれ立体レーダーを開発する必要があるなと私が思案に暮れていると。


「あったちょきー」


 リカが先に巣を見つけたようだ。


「どれどれ?」


 リカが指さした方向を見上げる。確かに街路樹のてっぺんに鳥の巣らしきものがあるようだ。しかし……。


「これを登るのか?」


 私は街路樹を見上げた。横のビルと高さを目測で比較する。二階の天井ぐらいまであるとみていいだろう。


「私は頭脳派なのだがな」


 が、これも悩めるカラス君のためだ。私は意を決して街路樹をよじ登る。が、十分間ほどの努力の末一階の天井ぐらいまで登ったところで、突風にあおられバランスを崩し、地面にしこたま背中を打った。私の宇宙一優秀な頭脳が無事だったのは不幸中の幸いというところだろう。


「そんな丈の長い白衣をきるからちょき」


「何を言うか君は。丈の長い白衣を風になびかせ高笑いとともにさっそうと登場してこそのマッドサイエンティストだろう! 本当は怪しい色つきゴーグルでもかけたいところだが、視界が悪くなるから事故を警戒して普通の眼鏡で済ませているというのに」


「もう、博士は本当にしょうがないちょき。ここはわたしにまかせるちょき」


 リカの手が蛍光ピンクの光の輪に包まれる。数秒後、リカの手首の先には先ほどまでの人間のものと大差ない手ではなく、細かい突起の付いた鮮やかな朱色のハサミだった。大きさは彼女の顔ほど。


「博士はさがってるちょき」


 リカのハサミはありとあらゆるもの――とまではいかないものの、日常的に目にする物質は大体切り裂く能力を持っている。何に使おうというわけじゃないのだが、怪人に特殊能力を持たせるのは男のロマンだろう。もちろん、刀じゃなくてハサミだからどう頑張っても刃渡りより長い物を一発で切ったり、対象に穴をあけたりすることはできないんだがな。っと、言ってる場合じゃなかったな。私は彼女から距離をとる。街路樹はハサミにより音もなく切り倒され、私たちが居る方向と反対側に倒れ――かけたが突風にあおられ私の方に倒れてきた。


「……グハッ!」


「ごめんちょきっ!」


 あわてて私の両脇で木を裁断し、転がして私の上の木だけをどける。一瞬花畑が見えたぞ。


「なにはともあれ問題の巣は……」


 ぼろっ。拾い上げた瞬間粉々に崩れ去った。


「あーあちょき……」


 その時。カーカーと怒りの声をあげながら、巣の主が帰還した。


「うおっと」


 すかさずポケットから取り出した超強力催眠ガススプレーを噴射。カラス君はしばらく暴れた後、ぽたっと地面に落下した。


「襲われて私の脳細胞に傷でも付いたらかなわんからな」


「そっちの方が博士はまともになったかもしれないちょき」


「何か言ったかな?」


「何も言ってないちょき」


 カラス君を抱え込み、研究室の方向へ急ぐ。怪人とはいえ服とか着せないと全裸だし、さすがに人前で怪人化薬を使うわけにはいかない。



っと、今作のサブヒーロー登場です。

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