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第十四話

 ゴォ……ッ!




 突然激しい光がアルカナガールの手元で爆ぜる。私たちのもとまで爆発は直接届かなかったが、爆風で工場の壁に巨大な亀裂が走った。


アルカナガールは右手のカードを手放し、ほかのカードに持ち変える。


「三枚目! ザ・フール!」


 次の瞬間アルカナガールの姿は私たちの前から消えていた。前と同じ効果ではないだろうから、スピードの上昇ではない。となるとテレポートで逃げたか。


「この工場、もうすぐ崩れるちょきっ」


 本当か!?


「とりあえず、中ボスをやってもらった三人が心配だな。特に腹痛を起こしているリオネちゃん。助けに行くか」


 私は第三ステージに向かう扉をあける。と、その衝撃も手伝ってか壁やら天井やらが傾斜し、ギシギシ嫌な音をたてる。


「あっ、リオネちゃんちょき」


 リカが腹を押さえてうずくまるリオネちゃんに駆け寄った。なんだかリバースしそうな雰囲気だったので、私は第二ステージに続く扉を開けるふりして目線をそらす。


「よし、リカ、リオネちゃんを頼んだ。私とクロウ君はアルちゃんとはむたんを」


 私がリオネちゃんを助けるほうに回っても人間一人分プラスおにぎり五十個分の重さを相手には足手まといにしかならないが、子供であるはむたんならなんとかなる。クロウ君はおそらく疲れてるだろうから一人で逃げられそうなアルちゃんの救助に向かってもらおう。


「わかったちょき」


 その時、二度目の崩落が起きてドアの奥に瓦礫が積もる。耐震工事がしっかりなされているらしく、意外に長時間持ってくれているが、安心はできないようだ。


「このスペースじゃ人を担いで通るのは無理だな。リカは壁を壊してリオネちゃんを連れて先に脱出してくれ」


「ちょきっ」


 そこら辺に転がっている炊飯器を壁に投げつけると、ひび割れていた壁には存外簡単に穴が開いた。ちょうど鉄骨と鉄骨の間だったようだ。


「さあ、クロウ君、私たちは先に行くぞ」


「おう!」


 私たちが第二ステージへとカニ歩きで侵入すると、図ったかのようなタイミングでくぐってきた扉が完全につぶれた。


「後戻りはできないってか」


「何を言っているのかね、クロウ君。そもそも男に後戻りしていい時などないのだよ」


「その歳でニートの人に言われると説得力あるな」


「む、マイマザーに聞いたか」


 こんな時に職の話をしている場合ではないと思いつつあたりを見回すが、はむたんの姿が見えない。とはいえ、ここで二人で探していては、その間に第一ステージに向かう扉がつぶれかねない。


「私はこの部屋ではむたんを探すから、一回クロウ君は先に行ってくれ」


「わかった。気をつけろよ!」


 クロウ君は第一ステージへ向かった。


「さてと、はむたんは……」


 怖くてどこかに隠れているのかと思い、ぐるりと辺りを見回すと、排水溝の金網が外れていることに気がついた。かがみこんでさらに詳しく様子を確認する。どうやらつい最近外されたようだ。そうか、はむたんはここから逃げたか。さすが愛玩動物とはいえネズミ科。地震が起きる前に真っ先に逃げ出すという野生の勘は衰えていないらしい。


「やれやれ、心配しただけ損だったか。じゃあ私はクロウ君のほうに合流……」


 立ち上がろうとした瞬間。滑車が固定されていた壁がこちらに向けて倒れてきて。




 ガシャン!


「あっ」




 ちょうど檻のように滑車が私に覆いかぶさった。


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