表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

昼 その2

 ほぼ習慣となった、おやつの時間にひとりテラスまで出る私に、新人君は半ばあきれたように

「行ってらっしゃい」と声をかける。


 空はどんよりとしている。雨の多い季節になるのが、いつもより少し早いのかもしれない。


 私は小皿に、アーモンドの欠片だけきれいに取り除いた煮干しを載せて、テラスの端に立つ。


 だいぶたってから、


 「ムぎゃあ」


 確かに、声が聴こえた。


 あわてて見回す。「ミーコ、いるの?」


 丈の長い草のあいだから、灰色の固まりがのっそりと姿を現した。


 ミーコだ。三毛でもないし毛があるのか尻尾を振っているのかも判らないし、第一それが猫なのかどうかも判別できなかったのだが、とにかく、大きさ的にはまったくミーコと変わりない。それに、歩き方も。うん、これは歩いている、んだよね?


 思わず周りをきょろきょろしてしまうが、幸いにも誰もこちらを見ている者はいない。

 私はゆったりと寄って来たミーコ(暫定)を抱え込むように隠しながら、小皿を置いた。


 かりぽり、かり


 いつものように、食べている。やっぱりこれは、ミーコにちがいない。


「よかった」


 そっと頭かと思われるあたりに手を置くと、いつものようにふわんとしていて、あたたかかった。


「ほんとおまえは、おやつが好きなんだね」


―― おやつじゃなくて、おやつのじかんが、すきなんですよ


 どこかでそんな声がしたようだった。


 足もとからなぜかふわりと、夜明けの甘い風が香った。




(了)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ