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僕の結末  作者: 鷹村紅士
16/23

16.

 太陽が中天にあるにも関わらず、城へと続く大通りには人が溢れていた。

 いつもなら昼食をとるために皆が食堂や屋台に集まるのに、今日はどこもガラガラだ。というか、無人だ。

 お客さんどころか、店主すらいない。

 皆、城からのお触れを聞きに行ったんだろう。


「お腹減ったなぁ」


 家の中に食材が無かった。

 買い置きしてあったものは食べてしまったか、腐って食べられなくなってしまった。保存食はそこまで数がなかったし。

 お金を持って出てきたけど、これじゃあご飯が食べられないなぁ。

 どうしよう。

 食堂から良い匂いがするし、露店には作りたての食べ物がいっぱい並んでいる。

 周りを見ると、皆、城の方へ一目散に走っていく。

 ……僕も、行った方がいいのかな?

 でも、お腹減ったなぁ。

 周りに誰もいない。

 お腹すいた。


「これ、もらいます」


 無人の露店にお金を置いて、スープを木のコップに掬わせてもらう。

 一口、すする。


「おいしい」


 あっという間に飲みきっちゃった。

 ……駄目だ。まだ足りない。


『親愛なる王都の民たちよ!』


 お金はまだある。もう一杯。


『今、我々の住まう都に脅威が迫っている!』


 おいしい。


『脅威の名は黒竜! その翼で天を自在に舞い、その鋭い爪で獲物を襲い、強靭な牙であらゆるものを噛み砕く、大空の捕食者だ!』


 お腹の中に熱いスープが流れ込んでいくのが分かる。喉も、胸も、お腹も熱い。でも、嫌じゃない。まるでお風呂に入った時のように気分がいい。


『そんな!』

『もうおしまいだぁ!』

『大丈夫だよね?』

『騎士がいるさ!』

『王国軍は何をしてるんだ!』


 スープを飲みきったけど、もうちょっと何か食べたいなぁ。

 右隣の露店には豚肉の串焼き。

 左隣の露店には揚げ野菜。

 う~ん、ちょっと脂っこいなぁ。


『静粛に! 静粛に!』


 本格的なものは料理店に入らないとならないし、食材を買おうにも店はちょっと遠いし、作る気もおきないし。


『安心するのだ、親愛なる王都の民たちよ!』


 お肉、もらいます。お金は置いておきます。


『黒竜がいかに危険であろうとも、案ずることはないのだ!』


 すごい弾力。噛むのがすごい大変だ。

 もうちょっと柔らかいのにしとけば良かった。


『以前にも、黒竜と戦っている!』

『本当か!?』

『じゃあ今度も安心だな!』

『良かったぁ』


 一本だけで、串焼きはいいや。

 なんだか前と比べて食べるのに時間がかかった気がする。顎が疲れちゃった。


『数年前、我が国の騎士と魔導師が、奴と戦っている!』

『おおっ!』

『王国騎士万歳!』

『魔導師万歳!』


 揚げ野菜もらいます。えっと、ニンジンと、ダイコンと、イモ。

 あ、外はパリパリで中はホクホクだ。

 柔らかくておいしい。食べやすい。


『王国騎士クラッド・ヴィシテン! 宮廷魔導師ナッキ・ヴィシテン! この両名だ!』


 父さんと母さんの名前が聞こえた。


『この二人が数年前、東方の山岳地帯にいた黒竜と戦っているのだ!』

『そうだったのか!』

『じゃあその人らに任せればいいな!』

『王国万歳!』


 一気に、食欲が失せた。

 逆に、酸っぱいものが込み上げてくる。

 【拡声】の魔導術なんて使わないでよ。


『残念ながら、彼らはその戦いで命を落とした!』

『そんなぁ……!』

『やっぱりダメじゃないか……!』


 路地裏に駆け込む。


『竜は倒したのか!?』

『そうよ! ちゃんと殺したの!?』

『すまない! 私は死体を確認していない! だが』

『じゃあ、あの竜がその時の奴か!?』

『そんな! 復讐にきたってのか!?』

『そのなんとかっていう奴を探してるのか!?』

『どうするんだよ!』

『静粛に!』


 気持ち悪い。


『俺イヤだぜ! そいつらのせいで死ぬなんて!』

『そうよ! そいつらが悪いのよ! 私たちは無関係よ! 責任とってよ!』

『そうだそうだ!』

『静粛に! 静粛に!』

『あのガキ差し出せ! そうすりゃ満足すんだろ!』


 全身が、強張る。


『なんだそりゃ!?』

『子供!? 子供がいるの!?』

『竜は鼻が利く! そいつの匂いを嗅ぎ付けられたら大変だ!』

『王都に来るのか! 竜が!』

『嫌だ! 死にたくない! 食われて死ぬのは嫌だ!』

『食べられる!? いや! いやぁーっ!』


 寒い。

 汗が、止まらない。


『俺ぁ知ってるぜ! ヴィシテンさんには男のガキがいるんだ! 能無しのクソッタレがな!』

『ああ、クレッグ・ヴィシテンか!』


 なんで、僕の名前が出てくるんだ……!


『知ってるの!?』

『学園の劣等生だ!』

『拾われっ子の恩知らずだ!』

『クソ生意気なガキだ!』

『血も涙もないクズだ!』

『王子にも王女にも逆らってるって聞いたぞ!』

『なんだって!?』

『王族に逆らうって、反逆者じゃないか!』


 反逆者……。

 そうか。反逆者かぁ。

 ははっ、確かに。言うこと聞かないもんね。


『おい、反逆者なら、罪人だよな!』

『あ、ああそうだ!』

『そのガキ追い出せ!』

『そうよ! 王都から追い出しましょう!』

『竜に食わせろ!』

『そうだ!』

『俺ら助かるぞ!』

『どこだ!』

『探せ!』

『捕まえろ!』

『竜に差し出せ!』


 はは、夢だ。

 これは、悪い夢だ。

 そうだよ。夢なんだ。

 夢……だよね?


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