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僕の結末  作者: 鷹村紅士
15/23

15.

 ────────!


 どこからか、大きな声がする。

 目が覚めて、右の頬が冷たい。


「えふっ」


 埃っぽいのにむせる。

 起き上がると、自分が床に寝ていたのに気がつく。

 あれ? 僕は一体……?


「うわ……!」


 自分がなんでこんな場所で寝ていたのか、思い出そうとしたら、家が揺れた。

 家自体が振動している。ガタガタと家具が揺れる音がする。開けっ放しのドアがギイギイと動いて埃が盛大に舞う。

 咳き込んだ僕は慌てて窓を開ける。


 ────────!


 耳が壊れてしまいそうな大音量が聞こえてくる。

 これは……何?

 窓から見える街並みには、特に変化は見えない。

 いや、住宅街だから目に見えて変化があったら困るん──。


 ごう、と風が吹いた。


 な、あれは、なに?

 黒い、大きな影が空を飛んでいく。

 鳥? 違う。あんなに大きな鳥は見たことない。大きすぎる。翼を広げた状態で家五軒分よりある。それに尻尾。長い尻尾がある。まるで蛇みたいだ。


「……竜?」


 父さんから聞いたことがある。

 大きな体に長い尻尾。大きな翼で空を飛ぶ凶悪な魔物。火を吹き、空から襲いかかってくる捕食者。

 天の覇者とも言われる、竜。

 そして、父さんと母さんが、命を懸けて倒した奴。


「なんで……王都に?」


 竜は山の方にいて、滅多に人里には来ないって。

 父さんと母さんが死んだ、魔物の氾濫。あれは山岳地帯で麓には広い森がある場所で起こったとファティーン伯爵が教えてくれた。

 氾濫の原因は山岳地帯にいた竜が麓の森で暴れたことで、森にいた魔物が一斉に逃げ出したのだとも。でも、なんで竜が暴れたのかは分からなかったって。

 氾濫を終息させて、一息ついた時に暴れ竜が現れて、父さんと母さんが討伐して……二人とも死んでしまった。


「うお~、ようやく行ったかぁ~」


 呆然と、竜? が飛び去っていった空を見つめていたら、聞きなれた男の人の声が聞こえてきた。

 隣に住むトラッシュさんが庭に出てきていた。


「トラッシュさん、あれは竜ですか!?」

「あ? ああ、いたのかお前。は? 竜に決まってんだろ? 見て分かるだろお前?」

「いえ……」

「はぁ~、これだから最近のガキは……。いいか、ありゃあ竜だ。しかも黒いやつだ。この前から王都に飛んできて、騒ぎになってたろうが。頭がイカれたか? 気がつかなかったとか言わねえよな?」


 この前……から?

 しかも、黒い竜? 

 え? ちょっとまって。

 そんな大変な事が起きているなんて、記憶にないぞ。


「つーかお前、よくもまぁそこに住んでられるなぁ!」

「え? いや、だって、ここは……」

「姉貴追い出してまでそこに住みてぇか? ハッ、だろうな。お前そこ追い出されたら行くところねぇもんな」


 え? なんで僕がここを追い出されないと……?


「ヴィシテンさんも泣いてるよなぁ! 拾ってやったガキが自分の子供追い出して、家乗っ取ったんだからよぉ!」


 拾って、やった?

 家を、乗っ取った?

 え? 何で? 僕が?


 ──ズクン。


 頭が、痛い。

 なんだこれ? 痛い。痛い。痛い。


「お前、外出たら覚悟しとけよ? 人気者の姉貴を苛めて追い出したクソ野郎だからな! 袋叩きにあっちまうぞー?」


 なんで? なんで? なんで?


「うるさいよクソ亭主! ブツクサほざいてる暇があったら何でもいいから食材買ってきな!」

「ご、御免よ~」

「さっさと働けクソ亭主!」


 うるさい。頭が痛い。痛い。なんで? どうして? う、うう、ううううう。





 気がついた時、僕は床に寝ていた。

 頭は妙にスッキリしている。

 そして、何もかも、思い出した。

 そうだ。姉さんが出ていった。それで、殿下に殴られて、クラリアさんに叩きのめされて、ハリタさんに打ちのめされて、姫様や皆に嫌われきって……。


「は、はは」


 笑いが出てくる。

 こんなにも苦しいのに。こんなにも寂しいのに。こんなにも泣きたいのに。


「はは、あはははは」


 僕は笑っている。


「おい、城からお触れがでるみたいだぞ!」


 そんな声が、開けっ放しの窓の向こうから聞こえてきた。


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