1:狂った日常 表
冬、今年は何十年ぶりかの雪がこの街にも降り、僕は自分史上最高の重装備で公園に向かった。僕と彼女(とは言っても付き合っているわけではない。)は 冬休みに入ってから毎日様々な場所に出かけていたので最近は彼女が金欠と言って安上がりで済む公園で会うことが日課になりつつあった。僕が公園に付くと既に彼女は小学校低学年くらいの子達と雪合戦をしていた。僕は手を上げて『お待たせ』と言うと彼女は僕の顔目掛けて雪玉を投げて来た。『遅いよ煌時。女の子を待たせるものでは無いと思うよ。』『三分前に電話が来ていきなり呼び出しておいて遅いは無いだろ』『3分も待たせたんだよ。カップラーメンなら既に出来てるし3分クッキングも終わる時間だよ』『これでも急いで来たのだ、普通に歩けば五分はかかるこの公園に3分はすごいと思うぞ。それに3分クッキングの放送時間は約10分だ』『え~、こんな適当に書いてる自作小説でテレビ番組に物申すの?』『僕が物申すのはお前の発言だ。3分クッキングが放送時間10分は周知の事実だ。何も間違ってない。あれは手早く出来ますよって事を例えているらしい。』『まあ、そんな事どうでもいいや。さあ、遊ぼ!』彼女は僕の手を取り幼げな笑みを浮かべた。僕は彼女に引っ張られる形で雪合戦に参加した。結果は僕の事を全力で盾にした彼女が完勝した。完勝した後、僕らはブランコに座り話した。いつもしている特に意味も無い雑談を。そんな中、ふと彼女ははこんな事を呟いた。『私、ユキ嫌いなんだ。』『なんで、僕は好きだよ。雪。』『それ、私に言ってるの?』『雪だよ雪、由喜じゃ無い。空から降る雪、英語でスノー。そっち。』『そこまで否定しなくていいと思うけど。私だって泣いちゃうよ。』『いや、でも。その…』『私は好きだよ。』突然の出来事でまさに豆鉄砲を食らった鳩の様になった僕はこれまで12年間の人生が走馬灯の様に駆け巡った。
結局、返答出来ないまま帰ることになった。『煌時がここまでチキンだとは。女の子に恥をかかせる物では無いよ。でも、こうなるのは分かってたんだけど。』そう言った彼女は少し淋しそうな顔をした。
沈黙
『僕も由喜が好きだ』それが僕が絞り出した精一杯の言葉だった。由喜は泣いて『嬉しい』と言い、その後に小声で『間に合って』と。彼女は僕の事を突き飛ばした。
ありがとう ごめんさようなら
突如車が彼女に突っ込んで行き彼女は車のフロントと民家の塀の間に挟まれて真っ赤に染まった。白い雪は血に染まり赤が世界を包み込む。僕は彼女の元へと駆け寄る。涙を流しながら彼女を名を叫びながら。世界は眩んで行った。
気が付くと僕は真っ暗な部屋にいた。背後には赤黒いボクがいた。『彼女を救いたいか?人間。貴様に救う権利を与える。救う方法は極めて簡単。貴様が死ねばいいのだ。目には目を歯には歯を死には死をってね。理屈はそう言うことだ。貴様が選べば貴様の代わりに椎名由喜は生き返る。選ぶか選ぶかは貴様次第だ。』ベラベラと1人で話すボクの言っていることは理解出来た。僕は僕は姿をしたボクの手を取った。




