ある少女の失恋
これもある企画から始まりました。
当初のお題は
・最初が「最悪だ……」
・文末が「空を見上げれば何でも(自由)」
・文字数は500字
企画が終わって500字だとやっぱり勿体ないなと思い、少し付け足した完成版がこちらになります笑
それではどうぞ!
「——最悪だ……」
金網に額を押しつけた瞬間、冷たい鉄の感触がじん……と広がった。
悔しさも、情けなさも、みんなまとめて叩き落としたくて、私は勢いよく頭をぶつけた。
つい数分前まで、ここには私とあの人がいた。
一緒に立っていたはずの屋上は、今は私一人だけが残っている。
* * *
朝の占いは恋愛運1位。
友達は背中を押して「いけるって!」と笑った。
その全部が私を少しだけ強くした。
震える指先でメッセージを送り、彼を屋上へ呼び出した。
階段を登る私の心臓はもう破裂しそうで、逃げ出したいのに足は勝手に前へ前へと向かった。
——来てくれなかったらどうしよう。
約束の時間より少し早く、屋上の重々しい金属扉が軋む音を立てた瞬間、その不安はかき消えた。
彼は、本当に来てくれた。
私はその時点で、もう『成功』した気でいた。
今思えば本当に……馬鹿みたいだ。
深呼吸をひとつ。
告白は、シンプルで、まっすぐで、飾り気のない言葉だった。
そして——祈るように彼の顔を見る。
彼は困ったように、そしてどこか照れているように頬を掻きながら視線を彷徨わせた。
固く一文字に結ばれた口元に、私の焦がれた優しい笑みが浮かぶ事のないまま、やがて私をしっかり見つめた。
黒曜石みたいに澄んだ瞳に、かすかに涙が溜まっていた。
その瞳が私を映した瞬間、胸の奥が痛くて、彼の口が開くのが怖かった。
まだどちらか分からない、でも……期待は捨てきれない。
自然と両手を胸の前で祈る様に握り締める。
「……ごめん。その想いには応えられない」
その後にも私を気遣うように優しい言葉が続けられたが、まるで耳に入らなかった。
『想いに応えられない』
この言葉だけは、やけに鮮明に……本当は優しい口調であったはずなのに、冷たく吐き捨てるように言われたように頭の中で反芻される。
——その後の私は、最悪だった。
彼の前だというのに、涙は勝手に溢れ、声も抑えられず、自分でも引くほどみっともなく泣いた。
夕方の冷たい風が髪を乱して頬を叩く。
気付けばもう彼はいなくて、屋上には私だけ。
泣き腫らした目で空を見る。
夕暮れの雲が、皮肉みたいにふわりとハートを描いていた。
さっきフラれたばかりの私を、まるで空だけが励ましてくれているようで——
余計に惨めで、また涙がこぼれた。
「……ごめん。やっぱり……諦められない。大好きだよ……」
声は風に溶けて消えていく。
でも胸の奥に残った想いだけは、まだ消えてくれそうにない。
私はもう一度だけ、黄昏に染まる空を見上げた。




