【第6話】偽りの奇跡と司祭の正体
【前書き】
いつもありがとうございます。いよいよ司祭ゼオルドとの直接対決となります。感想や評価をいただけると、執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします！
アスヴェル＝ノクティアの名を告げた瞬間、クリスの姿は巨大な影となり、礼拝堂の天井を突き破って夜空に舞い上がった。それは、この世界に潜む闇を打ち払う、最強の存在の誕生だった。
司祭ゼオルドは、その光景に恐怖で顔を歪めていた。
「バカな…！ 古のドラゴンだと？ まさか、この時代にまだ存在していたとは！」
ゼオルドはそう叫びながら、慌てて祭壇の奥へと逃げ込もうとする。だが、その行く手を阻むように、クリスが人間の姿に戻って立ちはだかった。
「逃がさない。お前がこの街の人々に植え付けた“偽りの記憶”と、消えた人々の魂を、今すぐ解放しろ」
クリスの声は静かだったが、その中に宿る怒りは凄まじいものだった。ゼオルドは震えながらも、なおも抵抗を試みる。
「この力は、我らが神から与えられたものだ！ お前のような不純な存在に、我らの神聖な儀式を邪魔させるものか！」
ゼオルドが叫ぶと、彼の背後にある祭壇から、異様な魔力が噴き出した。それは、この世界にいる“古き存在”を信仰し、人々の魂を供物として集めるカルト組織の力だ。ゼオルドは言葉で人の心に“偽りの記憶”を植え付け操る能力を持っていた。
「“神の奇跡”など、まやかしだ。お前がやっていることは、ただの人体実験に過ぎない」
クリスは冷静にそう告げ、ゼオルドの能力を無効化するために、周囲の魔力の流れを読み始めた。
その時、地下から駆け上がってきたリオネルが叫んだ。
「クリス！ こいつは…！ 司祭ゼオルドは、俺たちが追いかけていた、人体実験を繰り返していた研究者だ！ 奇跡なんて嘘だ！」
リオネルはそう叫びながら、ゼオルドに向かって剣を突きつける。ゼオルドは動揺し、祭壇の魔力をさらに強く発動させた。
「やめろ！ 我らの神が、この世の浄化を望んでいるのだ！」
ゼオルドの叫びと共に、礼拝堂の空間が歪み始める。その中心には、人々の魂を凝縮したかのような、黒く淀んだ球体が浮かび上がっていた。それは、この街で消えていった人々の、最後の残滓だった。
クリスは目を閉じ、ドラゴンの魔力を最大限に高める。そして、ゆっくりと目を開くと、その瞳は金色の光を放っていた。
「……貴様が信仰する神とやらが、この世界を蝕む闇なら、俺がこの手で、その存在ごと消してやる」
クリスはそう宣言すると、大きく息を吸い込み、雷鳴のような咆哮を放った。それは、この世界に潜む闇を打ち払い、真実の光を灯す、最強のドラゴンの力だった。
【あとがき】
今回でいよいよ司祭ゼオルドとの対決に決着がつきます。次回からは新たな展開が待っていますので、どうぞお楽しみに！
