第五話 竜の咆哮と偽りの神
【前書き】
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「そこの君……」
壇上の神官の声が、礼拝堂に不気味に響き渡る。その指がクリスを指し示すと、信者たちの目が一斉にクリスに向けられた。それは理性のない、狂信的な光を宿しており、まるで操り人形のようだ。クリスは直感的に、これがただの宗教儀式ではないことを悟った。
（やばい、これ、“都市伝説”じゃない。カルトそのものだ）
クリスはすぐさま立ち上がると、金色の光を放つ目で神官を睨みつけた。
「神の選定……だと？ふざけるな」
彼の声は低く、そして怒りに満ちていた。それはもはや人間の声ではなく、太古の咆哮を思わせるものだった。
「裏で人々を消しておいて、よくそんなことが言えたものだ」
クリスの言葉に、神官は一瞬ひるんだが、すぐに嘲笑を浮かべる。
「愚か者め。これは選ばれた者だけが与えられる、栄光ある浄化なのだ。お前のような汚れた魂は、我らの神の糧となるがいい！」
神官が腕を振り上げると、信者たちが一斉にクリスに襲いかかってきた。しかし、彼らの動きはどこかぎこちなく、その目に宿る光は虚ろだった。クリスは彼らが、神官の能力によって心を操られていることに気づく。
（言葉で人の心に“偽りの記憶”を植え付け、操る力……司祭ゼオルドか）
このまま彼らを傷つけるわけにはいかない。そう判断したクリスは、ドラゴンの魔力をわずかに解放する。瞬間、彼の周囲に強い風が吹き荒れ、信者たちは吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。だが、彼らは傷つくことなく、ただ気絶しただけだった。
「貴様……一体何者だ！」
神官の顔から笑みが消え、警戒の色が浮かぶ。
その時、神殿の奥から金属音が響き、リオネルが駆け込んできた。
「クリス！地下に仲間が！……それに、こいつらのボスらしき司祭ゼオルドって奴が、礼拝堂に向かってるらしい」
リオネルは息を切らしながらクリスに告げる。クリスは頷き、再び神官に視線を戻した。
「もうお前たちの好きにはさせない。この世界を蝕む闇は、俺がすべて暴いてやる」
クリスの言葉と同時に、礼拝堂全体が激しい光に包まれる。それはクリスのドラゴンの力が解放され始めた証だった。神官は恐怖に顔を歪ませ、悲鳴を上げる。
「まさか……お前、古の存在なのか！？」
神官の言葉は、クリスの中に眠る古のドラゴンの記憶を呼び覚ます。そして、彼は静かに、だがはっきりと名乗った。
「俺の名は……アスヴェル＝ノクティア」
その瞬間、クリスの姿が巨大な影へと変化し、礼拝堂の天井を突き破って夜空に舞い上がった。それは、この世界に潜む闇を打ち払う、最強の存在の誕生だった。
【あとがき】
今回はついに主人公の正体が少しずつ明らかになってきました。次はいよいよ司祭ゼオルドとの直接対決になります！応援よろしくお願いします！
【あとがき】
今回はついに主人公の正体が少しずつ明らかになってきました。次はいよいよ司祭ゼオルドとの直接対決になります！応援よろしくお願いします！
