第3話 騎士団の影と、神の名を語る者たち
前書き
前回、謎の騎士リオネルに保護されたクリス。
だが、彼の言動にはどこか裏があるようで……?
そして、王都には“不自然な神の信仰”が広がっていた――。
「……あなた、何者ですか?」
目の前の男、リオネルは、鉄のような瞳でこちらを見据えていた。
クリスは戸惑いを隠さず、彼の質問に答えるふりをしつつ、視線をそらす。
「ただの旅人だよ。記憶が曖昧でさ、気づいたら森で倒れてて……君に助けられたんだ。」
「ふむ……。嘘ではないようですが、真実も隠していますね。」
そう言って、リオネルは椅子から立ち上がった。
「まあいいでしょう。今は敵ではないと信じておきます。――ところで、君、“大聖堂”のことは知っていますか?」
「大聖堂?」
「あの建物こそが、この国の“神”を祀る中心地。だが、実際には……裏で不穏な動きがある。」
リオネルは声を潜め、窓の外に目をやった。
「最近、“神の奇跡”と呼ばれる現象が頻発している。病が治る、死者が目を開く、天啓が降る……しかし、その裏で、民が一人、また一人と“消えている”のです。」
“神の奇跡”と“失踪”――明らかに因果関係を疑うべきだ。
クリスはその瞬間、脳裏に何かが走った。
(――やはり、この世界にも”あれ”があるのか)
前世、現実世界で調べていた“ある陰謀論”。
カルト宗教が信者に奇跡を見せて忠誠を得る一方、裏で人体実験や儀式をしていた、という噂。
(やっぱり、同じ構造……いや、それ以上かもしれない)
「リオネル、僕もその“大聖堂”を見てみたい。」
「……危険ですよ?」
「構わない。むしろ、調べるべきだと思う。」
リオネルは静かに笑みを浮かべた。
「分かりました。では……今夜、共に潜入しましょう。」
夜。王都の灯りが静かに消えていく。
大聖堂の巨大な影が、月明かりの下に浮かび上がっていた。
◇あとがき
ご覧いただきありがとうございます!
今回は世界観が少し広がる回でした。
「神の奇跡」の裏に潜む不気味な雰囲気、伝わったでしょうか?
次回、ついに“潜入”開始です……!
続きをお楽しみに!