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水がなくなると、人間は脱水症状を起こし、生命の危機に瀕します。体内の水分が不足すると、体温調節機能が低下し、熱中症や循環不全などの健康障害を引き起こす可能性があります。また、農業や工業などの社会活動にも深刻な影響を及ぼし、食料不足や経済活動の停滞につながります。
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目が覚めると、私は水のない世界にいた。蛇口を捻っても何も出ない。ウォーターサーバーなんてものも無くなってしまったようだ。友人に聞いてみると、どうやら夜の間に世界中が乾燥して水が無くなってしまったそうだ。勿論、こんな未曾有の事態は誰も予想しておらず、皆慌てふためいていた。とりあえず、スーパーに行ったら水が売っているから買いに行こう。私は着替えて家を出た。
外に出ると、一気に熱風が私の全身を包んだ。乾いた空気、じわじわくる暑さ。まるで砂漠にいるようだった。私は、スーパーに向かった。私の家からスーパーまでは徒歩5分圏内にあるが、スーパーにたどり着くまで半日くらいかかった気がした。
飲物の場所に行くと、沢山の人が集まっていた。まるで甘いものに群がる蟻のようだった。それらの人々は皆、飲物をぎっちりカゴに詰めていた。
暫く人が居なくなるのを待った後、私も飲物を買おうとした。が、1本も残っていなかった。仕方なく私は何も買わないまま家を出た。
ーーーーそれから約4日後…
だめだ…。のどが渇いて死んでしまう。風呂にも入って居ないから私の部屋は異臭が漂っている。そして何より、暑い。私の街は水力発電が主であり、その資源となる水が全く無いため、電気があまり供給されてこないのだ。
それにしてものどが渇いた。友人に頼んでみるか…?否、絶対に断られるだろう。水がなくなってからというもの、どうも人々の様子がおかしくなっている。ニュースではとうとう死者が出たらしい。このままでは私も干からびて死んでしまうだろう。どこかに水は無いものか…。私は外に探しに行くことにした。相変わらず暑く、乾いている外は地獄と化していた。隣の家からは叫び声が聞こえる。どうやら精神が参ってしまったようだ。そんなことはどうでも良い。早く水を探さなければ…。
「す、すみません。水を恵んでくれませんか…?」
後ろから急に声をかけられた。驚いて振り向くと、そこには人らしき何かが立っていた。目の下には隈ができ、唇は青白く、皮が向けている。僅かに残っている皮には赤黒い血の塊がついている。そして体中に痣。顔にも腕にも、そこら中に痣、痣。一瞬で見えなかったが、爪の隙間に赤黒い何かが挟まっていた気がする。
「すみません。やっぱりなんでもないです。」私が自分と同じく水を探しているとわかったのか、そう言って去ってしまった。
ーーーそういえば道の端に何人か人が横たわっている。水を恵んでもらうために外に居たのだろうか。肌は浅黒くなって、骨が浮かび上がっている。口の端からは泡が出ている。そして肉が腐ったようなきつい臭い。どうやらこの人々は死んでいるようだ。
私は急に恐ろしくなってきた。もし、今水を探しに出たとして、この人たちのようになるのではないか。道端で醜く生涯を終えるのではないか。結局、私は家のある方向へと向かった。
家に入ろうとすると、隣の家の住人が勢いよくドアを開け、外に飛び出してきた。髪を振り乱し、おぼつかない足取りだった。そして、彼女の手には、
包丁が握られていた。
私含め、外にいる人々が唖然としていると、急に彼女が叫びだした。
「もうこんな生活は耐えられないわ!!!何で水が無いのよぉ…!!!」
そして、その場にがくんと座り込み、しくしく泣き出した。
「あの…大丈夫です…」
彼女の近くに居た男性がそう言いかけた刹那、彼女の手に握られていた包丁が勢いよく男性に向かって振り下ろされた。
「ぎゃあああああぁぁああ!!!!!」まるで獣のような叫び声が街中に響いた。男性の背中には包丁が突き立てられていた。男性の白いスーツがどんどん赤黒く染まっていく。狂っている。
そして、彼女は男性に突き刺さっている包丁を抜き、自分の喉元にぐさっと刺した。プシャと彼女の喉元から赤い鮮血が出た。ひゅうひゅうと彼女の口から聞こえてくる。全身がガクガク震え、そのまま倒れ込んだ。そして包丁を抜き、更に血が流れ出てくる。
私は一気に吐き気を催した。なんでこんな事になったのか。まるで地獄絵図を見ているようだった。
それよりも
水が、欲しい