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エナジーヴァンパイアワールド  作者: あずきなこ


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election

 ブッ!と鼻と口から噴き出たコーヒーを慌ててティッシュで拭っていると、妻が寄ってきてタオルを手渡してくれた。


 「一体今度は何を見て吹いちゃったわけ?」


 妻は呆れながらもそう問いかけ、後ろのベッドに腰を下ろした。


 「ん?あ~いや、ネットニュースのタイトルがあまりにも面白過ぎて?」


 「ニュースのタイトル?そんなもんで吹き出すほど面白いとかある?」


 そうなのだ。

 とあるサイトに限っては、信じられないくらいにそういった現象が起きてしまう。まあ吹き出して笑える場合とあまりの言葉遣いや文章のおかしさにため息が出てしまう場合があるのだが、ここ最近では前者の笑えるタイトルの方が多いような気はしている。


 「じゃあ今からそのタイトルを読んでみるから聞いてくれ。‥‥シタカ首相、スパイ防止法案の検討に着手か?‥‥フッ、ムフ、アハハハハハハハ!」


 ダメだ。

 声に出して読んでみたらさらに受けてしまう。

 

 妻はそんな爆笑している俺のことを呆れながら見ていたが、なぜそうなっているのかということは理解できているようで一言「まあそれはねえ?」とつぶやいた。


 だって()()()()()である。

 しかも着手の後にはご丁寧にしっかり?マークまでついているのだ。


 検討とはあくまで物事について考えたり調べたりすることで、その時点では実行とは無関係である。さらに冷静に考えてみれば検討に着手という文章自体も非常におかしいということがわかるだろう。考えることに手を付けるかどうかなどと俺たち(サンライズ王国人)は言わないし使わない。物事に関してどうするのかという判断をして決断のために検討するのであって、いわば検討自体も着手の一部であるのだからこの文章を載せた人物はサンライズ王国人ではない外国人か、もしくは読者のミスリードを狙った故意の行いかのどちらかであると言えよう。


 本来であるならスパイ防止法案()()の検討に入った、またはスパイ防止法案制定に向けて着手といったような表現が妥当であると思われるが、そうなるとその情報に誤りが生じた場合の対応が面倒くさくなってしまう。


 よって一見読者のニーズに応えるかのような情報を掲載しつつ、誤報を免れるための策として結果、おかしな文章を載せることになってしまうのだろう。


 今回はスパイ防止法というこの国で長年に渡り国民から求められ続けている法案の制定にようやく着手してくれる王国議員が現れたというミスリードを狙ったに違いない。だが実際は検討することに対しての着手か?ということであり、あくまで単に考えてみる、もしくは調べてみるというだけである。しかも語尾に?がつけられているので考えることも調べることすらもしない可能性さえあるということなのだ。要はその法案について何かしら進めようとはしているわけではまったくなく、とりあえず公約に掲げている以上は忘れていませんよ、頑張ってますよという国民向けのアピールであり、単なる時間稼ぎである。


 それにしてもなかなかにトリッキーなワードを並べてきた成果とでもいおうか、コメント欄は絶賛の嵐である。もう彼らの頭の中ではシタカ首相により彼らが理想とするスパイ防止法案が脳内制定され、これでこの国は変わる!ようやく平穏で豊かな暮らしを取り戻せる!などと興奮しているに違いないのだ。


 「それにしても昔から政治に興味がない私でさえもとっくにこの国の異常さには気が付いていて、その原因が王国議員たちにあるっていうこともわかるのに、なんでそうやってニュースにコメントを載せるくらい政治に興味のありそうな人たちがいつまでもわからずにいるわけ?」


 妻はベッド上に雑に置いてあった俺のパジャマをたたみながらそう言った。


 「興味があるからこそ、感覚無視になりがちなんじゃないのか?こういう人たちは必死になっていろいろと調べるだろうし、だからこそいろいろな情報を拾ってきてはそれを頭の中で整理する。そうやっていくうちに左脳重視の思考になるからそりゃ~中身はどうあれまずは言葉や文章かすべての判断基準になってしまうだろうな」


 「でも、その言葉を言う人も文章を載せる人も人間だよ?それが本心かどうかなんて誰にもわからないじゃない?それなのにこの王国議員の言うことは信用できるだとか、あの王国議員の話は信用できないとかさ、もうまったく意味がわからない。これまでこの国で王国議員と呼ばれた人たちの中で一人でいいから真にこの国の人のためになることを成し遂げた議員の名をあげてみてほしいわ。まあいるならの話だけど?」


 妻はなかなかに厳しいことを言う‥‥‥

 だが彼女の言うことは尤もである。


 俺も大人になってしばらくするまでずっと王族や元貴族、王国議員という政治家たちに対して何も疑問など持ったことはなかった。それどころか特に王族に対しては尊敬の念まで持ち、敬愛していた。元貴族に関しても王族に近い思いがあったし、王国議員に対しても頼りにするような敬意を払う姿勢でいたことは確かである。


 だがある時、本当に急に何かがおかしいと思い始め、段々その思いは強くなっていき、とうとう自ら行動に出ることになった。


 最初はネットでこの国がおかしいとか、王国議員が怪しいなどと入力してみてはそこにあがってきたものを見にいったりそこからさらに出てきた本や動画などを見て自分と同じ感覚を持って戸惑っている人たちがいることを知った。そしてすべてを鵜呑みにすることなく、すべて自分の感覚でハートを頼りに受け取るかスルーするのかをその都度判断して情報の取捨選択を行った。


 実は妻と出会ったのもその頃で、とある本屋で偶然同じ本を買おうとしていてそのことが気になった俺の方から声をかけて一緒にコーヒーを飲みに行き、そのことが切欠となり付き合い始め、後に結婚した。


 こういっては何だが自分で疑問に思ったことの解消のために行動を起こしてからというもの、自分にとってはよいことばかりが起きていると思えるのだ。うまく言えないのがもどかしいが、自分の道をきちんと歩めているという感覚があり、自信をもって生活できているというような感じだ。


 それまでもなんとなく自分の道を歩んでいるつもりではあったはずだが、現在(いま)の感覚とはまったく違う。だから恐らく以前は自身で選択した道を歩んでいるかのような錯覚を起こしていただけなのかもしれないとも思っている。


 とにかく、今の自分はいろいろな意味でとても満ち足りている。

 同じ価値観を持つ妻が傍にいて、二人で協力しながら互いに楽しく生きていくための術を日々模索しながらあれこれチャレンジし、当たり前なことなど何一つないすべてが貴重な経験なのだと感謝しながら暮らしているのだ。


 「ねえ、そういえば()()選挙があるみたいよ?」


 「あ~そういえばそんなニュースのタイトルも見た気もするな」


 俺たちはほぼニュースは見ていない。

 というよりテレビは見ないし、新聞も雑誌も読んでいないので世の中の出来事に関してまったくと言ってよいほど無知な状態にあるといえよう。だから自分たちのこと以外に関する会話は常にこのような感じになっている。


 「なんか毎度のごとく飽きもせず、選挙に行こう!尊き一票を!って()()()()必死だけど、言ってることは同じなのにその中身は真逆っていうのがホント面白いわよね」


 「だな。王国議員サイドとしてはこれだけの人数の国民が政治に関心を持って投票し、自分たちに任せるとその意思を表明してくれたのだから、どんなろくでもない法案を通そうがどんなろくでもない税金の使い方をしようがあなたたちが私たちを選んだのだろうと堂々と胸を張って主張し、そのまま悪事を働き続けられるからで、国民サイドとしては投票して意思表示をしなければこの国はいつまでも変わらない!と本気で政治が正しく機能すものだと思い込んでいるし、その政治を執り行う王国議員の誰かが自分たちのために行動してくれると本気で信じているからだな」


 俺たちも根本を知ろうとしなかったために長い間期待という無意味な感情を持ち続けていたが、ようやく無駄な感情であるということを理解し、今は夫婦そろって完全にスルーである。


 だいたい選挙などという制度自体がまったく必要のない無駄イベントであるということにさえも気づくことができずにいる人間ばかりだ。なぜ自分たちが生きていく上で自分たちの自由を奪い、支配する政治家などという彼らの好き勝手を許す存在が必要だと思っているのか、まずは その辺りからよく考えてみるべきであろう。


 この国は特にわかりやすいが、世界中が侵略者たちの支配下に置かれている。この国はべいくにとなかくにという両国が所有権を争っているだけの奴隷状態にある国民からできるだけ税金を吸い上げ、ストレスまみれにして重いエネルギーを吸い上げるための国なのだ。


 今の現首相のようにべいくにのスパイが活躍している(政権を握っている)時はべいくにの指示通りに動き、その前やいつかの大地震当時のなかくにのスパイが活躍している時はなかくにの指示通りに動いているだけである。


 こんなにわかりやすい独立国家を装った侵略国家なのにも関わらず、奴隷状態である国民はいつまでも政治家たち(侵略者たち)の誰かが自分たち奴隷のための国づくりをしてくれると信じたまま。


  俺と妻はそんなことより夜空の美しく輝く星々を眺めながらホットワインでも飲もうとパソコンを閉じ、電気を消して部屋を後にした。


 

 

 

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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