二極化の実感
「アスカさ~ん!」
私は年甲斐もなく幼子のように彼女に飛びついた。
「あら?どうされたのですか?タカコさん?」
そんな私を面白がりながらも公衆の面前であろうがしっかりと抱き留めてくれた彼女は私の友人であるが、実のところ直接会ったのは今日が二度目である。
生まれも育ちもサンライズ王国の私ではあるが、縁あって外国人が伴侶となったため、現在は外国暮らしをしている。そして何年かに一度は一時帰国をしていて、今回もその一時帰国で彼女と待ち合わせをしていた。
「また撃沈してしまった‥‥まあここではなんだから、どこかでおいしいものでも食べながら話しましょうか?」
アスカさんは今日のために待ち合わせ場所近くの店を調べてくれていたらしく、国産食材にこだわった定食のお店があるからそこでどうかと提案され、私は「ぜひそこで!」と即答し、二人並んで楽しく会話をしながらその店へと向かった。
お店に到着すると、ちょうどお昼時ということもあって満席であったが、私たちは席が空くのを大人しく待っていた。平日ということもあり、皆忙しいのか回転は速く、あっという間に順番が回ってきた。
「なんかどれもおいしそうで迷うね?でも私としてはやっぱりここは煮込み魚定食かな?」
「タカコさんは普段なかなか魚料理は食べられなさそうですもんね?」
確かに普段は肉食がメインの国で暮らしているので魚は売られてはいるものの、なんとなく信用し難い面もあり、購入には腰が引けてしまう。そんな私とは対照的に彼女はハンバーグ定食に決め、テーブルに届けられるまでの間も話をしていた。
「それじゃあまず、タカコさんの撃沈話でもお聞きしましょうか?」
私はそこでその撃沈当時を思い出し、気分が重くなりかけていたところで彼女から「タカコさん!どよ~んってなってます!重いです!ヘビーですよ?」とおちゃらけた感じで声を掛けられた。
そこでおっと!と、気を取り直し、どよ~んからぽよ~んへと切り替えた。
「あっちでの話なんだけどね、私はあちらに住んでいる同じサンライズ王国人のお友達が何人かいるのだけど、そのうちの一人とちょうど今回の一時帰国直前に会ってご飯に行っているの。彼女とはもうかれこれ十年以上の付き合いで、よくランチとかお茶にも行って、何でも話せる良き友人だと思っていたのだけれど、今までにはなかったことが起こってもう本当に驚いちゃって‥‥‥」
私はそこから更に詳しい話をし始めた。
その友人からはここ数年、体調がずっと良くないと聞いていたので今はどうかと尋ねてみたところ、相変わらず良くはないと返ってきたのでその原因についての心当たりを聞いてみたのだ。するともう年だから仕方がないと言い、完全に医者頼りであることが伝えられた。そして今度は同じ年である私の体調を尋ねてきたのだ。
なので私は素直に数年前に世界中で起きたウイルス性の病のワクチン接種以降、風邪をひきやすくなった上にものすごく長引いてなかなか治らなくなってしまったことと、接種した腕の筋肉がずっと痛いということを話した。
そしてその時ふと、二極化のことが頭をよぎり、ここで少し彼女の反応を見てみようと思ったのだ。当時接種には違和感しかなく、拒否する気持ちが強かったものの、その国の方針で接種しなければ公共機関の利用が不可となってしまうため、本当にイヤイヤやむを得ず接種したが、やはりどうしてもいろいろ納得がいかなかったため、ネット等で調べ尽くしてようやく納得のいく答えが見つけられたことを伝えた。
すでにその時点で彼女の様子が、というよりエネルギーが重くなっていたので嫌な予感はしていたが、私は世間でいうところの陰謀論的な話をしたのだ。
すると途端にこれまで一度も見たことのない迷惑そうな顔になって「私、そういうのはちょっと‥‥‥」と、はっきりとした拒絶反応が返ってきた。しかもそこで終わらず私に対し、「あなたは以前とはすごく変わった。現実的でそういう話はしたことなかったのに陰謀論者になったんだね。私はそういう方向の話は一切受けつけない。ネットとかでもそういうのは一切見ないし聞かないから今後はもう止めて」と、お願いというよりもあなたは間違っている、おかしいという支配コントロール的なものすごい重いエネルギーをぶつけられてしまったのだ。
その後はもちろんまったく違うガーデニングの話などに切り替えたが、やはり私の中ではそのことが胸のあたりでしばらく燻っていた。
「なるほどね‥‥今年、来年と、ますます二極化がはっきりしてくるって言われているけれど、まさにその兆候を目の当たりにしてしまったという感じね?」
「うん、そうなの。だってあんな顔の彼女は本当に初めて見たし、さらに口調?なんかもあんな攻撃的な感じは今まで一度もなかったから‥‥」
「その友人とは十年以上の付き合いなのに、それまでは一度も合わないとか何か違うみたいなことはなかったんだね?それはそれですごいと思うけれど、だからこそ余計にビックリしたんだろうね?」
確かにどちらかと言えば合うような気がしていたからよく会っていたわけだし、これといって驚くようなこともなかった。だが、まさか互いの体調の話から選ぶ道がはっきりするとは本当に驚きである。
彼女は私たちが体調が良くないのは老化のせいだと考えていて、それ以外の原因はどうしても認められないようだった。私が肉体的な老いは確かで、それによっていろいろと衰えてくるというのは理解できるが、それまでまったくといっていいほど風邪など引いたことも他の病気にもなったことがなく、ましてや腕が接種後から何年間も痛いままというこのおかしさを伝えたのだが、やはり頑なに老いが原因だと言い、接種に関しては単に後遺症だから仕方ないと言い切った。
本当にビックリである。
その後遺症がある時点でかなりおかしいのであるが、後遺症は正当で仕方がない個人差が当然の症状なのだと本気でそう思っているのである。
「でもアスカさんと知り合って、というか巡り合えてほんと~に、ほんと~によかった!同じ価値観で感覚重視の人の存在の大きさと大切さをものすごく実感できたし、今回ばかりはネットという物理的に遠く離れた場所でも知り合えるツールに心から感謝したわ!それでね、実はあっちで撃沈したのは二度目で今回のことで真剣に帰国を考えているの。どんなに大切に思う相手であっても考えの違いだけはどうにもならない。特に二極化がはっきりしてくるのだから余計に。それにこれまでも一時帰国するたびに戻りたくないな~って思っていたんだけど、どうしても家族のことがあるからまあそのまま住んでいたのよね。でも、あちらにいる同じ国の人たちって基本、あちらの国での生活が合っていて、こうなんというかその場所と波長が合ってくるみたいであまりサンライズ王国の人っぽくなくなってくるのよ。でも私は何年いてもサンライズ王国の方が合うし好きなまま。だから今回のことで尚更帰国した方がいいと思った。だからあっちに戻ったらまず家族会議だね」
その後とてもおいしい定食を頂き、ますます帰国したい気持ちが強くなったことは言うまでもない。
そしてアスカさんもテレビやネットの動画を見ていて二極化がはっきりしてきているのを感じると言っていた。それは私も同様で、出演者の人たちの話からもコメント欄に書き込んでいる人たちのコメントからもそれはよく伝わってくる。
そのまま今のピラミッド社会の道を進み続ける人、もしくは気づいているのに反対側の道も選べずモヤモヤしたまま流され巻き込まれるようにしてその道を進んでいく人たちばかりである。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




