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エナジーヴァンパイアワールド  作者: あずきなこ


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  とある日の夜遅く。

  

 リビングには正月以来の家族五人全員が揃っている。

 ソファーの上には妻と長女、そして次女が座り、その下のラグマットの上にクッションを敷いて長男と私が座っている。


 「皆が揃ったので始めよう」


 私はまず今日の会議の趣旨について話し始めた。


 「突然だが今日は今後のこの家、家族の在り方について皆の意見を交えながらどうしていくかを決めていきたい。これまでずっと私は父親だから、トモミは母親だからとお前たち子供に対する責任という義務を果たしてきた。でもこれからは義務も責任も無しだ。互いに一人の人間として尊重し合い、感謝しながらここで協力関係で成り立つ生活をしていきたいと思う」


 私ははっきりゆっくり話したつもりであったが四人ともぽか~んとしている。

 だが間もなく長男が「なにそれ?家族離散の提案?」とつぶやいた。


 「そうじゃない。家族でも一人の人間の集まりなんだからそれをきちんと認識して互いに協力しながら生活していこうと言っている」


 「ちょっと待って!家族は家族でしょ?人間の集まりだなんてそんな他人扱いはどうなの?」


 すると今度は長女がそう口を開いた。


 「いや。はっきり言えば家族でも他人だ。血のつながりがあるだけで個別の意識を持つ人間なのだから」


 「だ!か!ら!その血のつながりのあるもの同士だからこそ家族なんでしょ?その時点で他人じゃないのよ!」


 次女がイラついた様子でそう返してきた。


 「お前は肉体面の話をしている。私は中身の話をしているんだ。いわゆる意識の話だ。いいか?意識はどこにあると思う?頭?違うよな?心臓?違うよな?医者が人体を切り刻んで調べたところでこの肉体のどこにも見つからない。肉体のどこにもないということだ。意識は体のどこにもないが確かに存在しているものだ。これでその意識は血のつながりなんてまったく関係ないことが理解できるだろう?」


 「あなたどうしたの?いきなり何を言い出すのかと思えば思想の話?もしかして変な宗教か何かの勧誘にでもあった?」


 妻がなぜか頭がおかしくなった設定をしてきた。


 「なぜそんな話に?単に一人の人間同士、家族という集まりで一緒に生活しているが、互いに尊重しあって協力していこうと提案しているだけだろう?」


 「じゃあおやじは父親をやめたいということか?それで他人同士のシェアハウスみたいにして暮らそうと言ってる?」


 「まあ簡単に言ってしまえばその通りだ。だが父親をやめるというより父親という定義、義務は放棄するという方がしっくりくるな。私はわたしで自分の望むようにやっていきたいし、皆も同様でいてほしい。その上でこれまで通りここで一緒に暮らしていくのならこれまでのピラミッドの上下関係ではなく、まるい協力関係を築いていく必要がある。だから皆で話し合いたかったんだ」


 そして私はこんな話をすると皆に対する愛情がないと思われることだけが心配だったが、これまでもこれからも皆を大切に思う心と愛情は決して変わらないと告げた。


 「それじゃあ今まで通りでいいじゃない!なんでそんな他人になろうとするのかわからないよ!」


 だが次女は納得いかないようで、やはりイラついたままだ。


 私は思い切って今の自身の正直な考えを皆に伝えてみることにした。


 まず、皆のことは愛しているが、それは皆の望みを叶えるために働き続けることではなく、見守って応援することだと思っている。そして自分が皆のために我慢を強いられるべきではないとも気が付いたと説明した。そうすることで誰のせいにすることなく、すべて自分のせいだと納得しながら生きていける。もし家族や誰かのためにと学び続けたり働き続けることを本心から望んでやっていくのならば構わないが、そうでないのなら地獄でしかない。皆も自分をそこに置き替え考えてみれば絶対に理解できるはずだと付け加えた。

 

 誰かのために学び続けたり働き続けることを本心からうれしい、楽しい、幸せだと思えるのならそれは我慢でも無理強いでもないのだから義務にならず協力関係と言えるかもしれない。だが私はこれまでうれしいとも楽しいとも幸せだとも思ったことはなく、父親なんだから仕方がないとか父親としての義務だと言い聞かせるようにしながらやってきた。

 

 それは言い換えればそんな自分の状況を家族のせいにしてどこかで憎みながら生き続けてしまうということでまさに地獄だ。そんな義務の地獄ループはどこかで断ち切らなければ永遠に続いてしまう。


 「要はもうママや私たち子供のためには働かないということね?それで一体どうやってこの家族で生活を維持していこうと思ってるの?」


 長女がいかにも呆れたといわんばかりの口調で尋ねてきた。


 「いや。私は今の仕事が嫌いなわけじゃなく、どちらかといえば自分に合っているとさえ思っている。だから辞めるつもりはないしこれまで通り()()通うつもりだ。だがこれまでのようにお前たちに当然のように稼ぎを期待されるのはもう御免だと言っている。あと自分軸は結構だが他人の都合を無視したソレはもう止めてもらいたい。あくまで協力関係なのだから皆が自分にできることを提供し合い、常に相手を尊重し、感謝し合って常に心が穏やかな状態の暮らしをしていこうと提案しているんだ」


 「もしかしてパパ、私が海外留学したいって言ったのが気に入らなかったの?そりゃ~お金はいろいろとかかるし負担は大きくなるかもしれないけど私の希望なんだから()()()()()なんじゃないの?さっきから尊重、尊重って何度も言ってるけどママや私たちのことを尊重する気がないのはパパの方でしょう?」


 どうも次女にはまったく話が通じていなかったようである。


 ここで私は皆にもっとわかりやすく説明できないかと考えた結果、次女の言った言葉をそのまま使わせてもらうことにした。

 

 


 


 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

続きは来週投稿予定です。

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