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エナジーヴァンパイアワールド  作者: あずきなこ


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2 

 結婚は彼が内定していた就職先に無事入社後、一年ほど経ってからだった。

 結婚してすぐに妊娠。翌年には男児が誕生し、バタバタと慌ただしく月日が流れ、五年後にはもう一人男児を授かった。


 どういうわけか、彼とはよく意見が合い、子供についても一人を授かることができたら少なくとも三年間はその子だけにすべてを集中したい(べったり愛情を注ぐ)ので二人目はそれ以降で自然に任せようと話していた。そのせいか、長男はまったくやきもちを焼くこともなく、それどころか弟をとても大切にかわいがった。まだ自分も幼いというのに世話をやきたがったり、私たちが長男にしてきたように隙あらば抱っこや頬へのチューなどもしていて私たちはそれを微笑ましく見ていた。


 彼は私が働きに出ても出なくても好きなようにすればいいと言う人で、私は家にいたかったのでそれに関してもまったく揉めることはなく、後に実は私が家にいたいと思う人でよかったとも語っていた。そういう経緯もあったが、子供たちの成長とともに働きに出るのも良いかもしれないとほんの少しだけ思い始めていた頃、ふいに開いた動画のサイトで気になるタイトルの動画をいくつか発見してしまった。


 まずは見てみなければと思い、気になったものはすべて視聴してみた。


 なんというか、心がざわざわとして落ち着かない感じになってしまい、思わずアッシュに呼びかけてしまった。彼女はすぐに応じ、今後はそういった動画はさらに増えていくと思うと自身の見解を述べた。


 私は二日ほど考え、それで出てきた答えを夫とアッシュにも話した。

 両者ともによいのではないかという反応だったこともあり、翌日から早速始めることにした。私はアッシュから教えてもらった膨大な情報を過去の私のように()()()()()()()()()()()()()人たちにも伝えたいと思い、その手段としてブログと動画の投稿を選んだのだ。


 まずはブログでアッシュとの出会いや日常、アッシュから得られた情報を毎日少しずつ掲載した。そしてある程度情報を掲載し終えた頃に動画投稿にも挑戦した。


 ブログの方は始めた当初はほぼ通り過ぎてゆくだけの人ばかりで、たまに珍しくコメントが入ったと思えば批判や罵倒ばかりであった。私は一切返信はしないという方針でいるため、一年ほどはそんなコメントばかりが目立っていたが、ある日まるで嵐の中、そっと開かれたドアの中からどうぞと手招きされ、暖かい部屋の中へと迎い入れてもらったかのようにたった一つ、批判でも罵倒でもないコメントが初めて入ったのだ。


 『これまでいろいろなブログや動画を探し、見てきましたが、こちらのブログのように「そうだったのか!」と何一つ疑問の残らない納得ができたのは初めてでした。とてもうれしかった。本当にありがとうございました』


 私はものすごくうれしいのにどうしても涙が溢れてきてしまい、私を包み込むようなアッシュからの温かく優しいエネルギーと、主人が買ってきてくれた好物のチーズケーキと子供たちからのママ大丈夫?の背中撫で撫でによりついに涙腺は崩壊した。


 どこかの芸人さんが多くの人に嫌がられてもたった一人が笑ってくれたらそれでいいと言っていたという話を聞いたことがあるが、それにちょっとだけ似ていて、たとえ一人でも私たちの情報に共感し、同じように軽いエネルギーの道を歩んでいきたいと思った人がいるのならば、それだけでもう最高に幸せではないかと思えたのだ。だって私はブログにも動画にもこうした方が良いとか、するべきだなどという話は一切していない。ただ私が知り得た情報を載せているだけだからだ。


 その情報をどう捉えるのかは見た、または読んだもの次第。

 完全スルーすることもそんなものはあり得ないと考えることも半信半疑になるのも自由である。すべては個人で判断し、腑に落ちるか、そうでないかの違いのみで、どちらが正しいわけでも間違いでもないのだ。


 要は自分の価値観に合った情報を選択するのみということである。


 私はその日以降も相変わらず批判や罵倒のコメントを受け入れながらも情報を掲載し続けていた。そんなある日、メールが届き、開いてみると以前私が気になって視聴したことがあった動画主からのものだった。

 

 動画のコラボを望んでいるようだったが、私は思わず首をかしげてしまった。

 それは動画の内容からすると、あちらの意図するところとこちらの意図するところがまったく違っていたからである。


 私はそのことを文章にして送り、そちらが望むようなコラボにはならないと思うと意見した。その後あちらからはすぐに返信があり、とりあえずは一度会って直接話をしてみたいという。私は少し考え、確かに直接話してみるのも面白いかもしれないとそれを了承した。


 互いの都合により、二週間後に街のカフェで待ち合わせをした。

 そこは天気が良ければ敷地内の中庭にもテーブル席が設けられる店で、そこでならばゆっくり話すことができるだろうということで決まった。


 その日までの間にメール上で互いの簡単な自己紹介等も行い、彼女もチャネラーであることはわかっている。そして私と同様、幼い頃から次元の違う存在たちを視たり声を聞いたりすることができたそうだ。


 同じチャネラーでもその可能範囲は人それぞれであり、私はこれまで自分と同じようなチャネラーにはまだ会ったことがなかった。大体幽霊がみえるだとか声が聞こえるとかで、アッシュのような無宙存在と話せるという人はいなかった。


 なので今回は恐らく初めて自分と似たような感じのチャネラーに会うことになる。私は久しぶりにほんのちょっとの緊張とワクワクとした期待を持って待ち合わせの場所へと向かっていた。



 



 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

続きは24日に投稿予定です。

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