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「‥‥‥す、すごい‥‥‥ディランさんの指、一体どうなってんですか?」
俺が以前、第一音楽室で弾いていた曲をもう一度聴きたいというダイヤのリクエストに応え、弾き終えたところ三人組の一人にこのような質問をされ返答に困っていた。
「確かにディランは技術的な面でも凄い。だけど本当に凄いのは奏でる音だ。耳ではなく、体内に浸透してくるような温泉みがある!マジ気持ちいい!」
「た、たしかに言われてみればそんな気も‥‥あー本当によかったです!部長!音楽クラブを作ってくださってありがとうございました!」
「は⁉‥‥ダイヤが作った?このクラブを?一体どういうことだ?」
俺は意外なことを聞きダイヤに視線を向けそう問うと、彼はなんてこともないような顔をしながら以前は第一音楽室が活動場所となっている軽音クラブに属していたが、いろいろあって独立したと答えた。その答えを聞いていた三人組の一人が「部長!それじゃー勘違いされます!短縮しすぎなんですよ、まったく‥‥」と突っ込みを入れた後丁寧に教えてくれた。
四人とも元は軽音クラブに入って活動していたが、そこではやはりクラッシックに興味を持つものは少なく、今流行りの曲を演奏したり聴いたりして盛り上がり、バンドの結成もあってそれに関する生徒同士のゴタゴタも始まってしまい退部するものが続出した。そんな中、ダイヤが別の音楽クラブを立ち上げることを決心し、誰も誘うことなくひっそり始めたが、空いている第三音楽室の使用に当たり部員が足りていないことを指摘され慌てて募集案内を出し今に至るということだった。
「そういうことだったのか‥‥で、この三人が最終的に残ったと。わかった。それじゃあちょうどいい機会だから三人に聞いておきたいことがあるんだがいいか?」
三人とも快く了承してくれたので俺は噂のことを話し、怖くないのかと尋ねた。
三人は正直最初は少し怖いと思っていたが、俺のピアノの話をダイヤから聞き、俺に会って以降はまったく怖いと思わなくなったと話してくれた。逆に噂で怖がっていた自分たちが恥ずかしく、今は猛省していると改めて頭を下げてくれた。
俺はうれしさと感動で胸が一杯になり言葉に詰まっていた。
だが横から何の脈絡もない「ディラン!今日開店するスイーツの専門店で生クリームとカスタードクリームが半分ずつ入った俺得シュークリームが販売されるみたいなんだ。だから売り切れる前に早く行こうぜ!」という声がかかり一気に冷静さを取り戻した。
俺も俺だと思うが普通に「まあ付き合ってやってもいいけど‥‥」と即答し、本当に二人で街の中にあるそのスイーツ店に向かったのである。
「ダイヤ、結局ついてきた俺が言うのもなんだが、お前何も俺じゃなくてあの三人とか他の誰かを誘ってきたほうがよかったんじゃないのか?」
「俺はいつでも誘いたいやつを誘う。それにディラン、お前も実はかなりの甘党だろう?だからこれからもよろしくな!」
なんでだ⁉どうしてバレている?俺は内心では驚愕していたものの、それを隠して「仕方ないからこれからもつきあってやる」と冷静に返した。そしてなんとなく尋ねてみようと思ったことを口にした。
「ダイヤの名前ってちょっと珍しいよな?何か特別な由来みたいなのがあるのか?」
「?そんなに珍しいか?でもまあ同じ名前のやつはそういないのかもしれないな。俺の爺ちゃんがつけた名前で爺ちゃんの爺ちゃんから受け継いだダイヤモンドの原石から思いついてつけたと言ってたな。要するにダイヤモンドのダイヤだ」
「なるほど。それにしてもダイヤモンドの原石を持ってるとか凄すぎるだろ‥‥」
「ていうか、俺の家は宝石商を営んでいるんだ。爺ちゃんの爺ちゃんが興した商いだけど二人とも石好きだったらしい。俺が幼い頃からよく石の話や面白い話をたくさん聞かされている。実は例のあの陰陽師の知識も爺ちゃんから教えられたんだ」
「なんだ、ダイヤは宝石商のお坊ちゃんだったのか。それにお爺さんが陰陽師の知識も持ってるとか一体何者なんだ?俺は祖先がそっち系の役職についていたことがあったらしくて親から聞いていたんだ。お前の家で代々受け継がれているダイヤモンドの原石なんて、なんかすごい格式のある家柄なんだろうな」
「いや、そうじゃない。ダイヤモンドの原石は爺ちゃんの爺ちゃんが俺らの知らない人から譲り受けたもので元は海外から運ばれてきたものなんだそうだ。何人もの人の手に渡ってこの国にたどり着き、そこからまたたくさんの人の手に渡り今はどういうわけか俺の家に。爺ちゃんは今のところ大切に飾って保管している。けど今後また他の誰かのところに行く可能性もある」
何気に尋ねたダイヤの名前のことから思いがけず興味深い話が聞けてしまった。
俺は陰陽師の知識があるという彼のお爺さんのことがものすごく気になりその後もいろいろと話を聞くことになった。そこからまさかの無宙話につながっていくなど知る由もなかった俺は、学園卒業後に自身も信じていなかった未来の上にダイヤと二人立っていることになるのだ。
ダイヤと出会ってから俺は世界が広がり他人は他人、自分は自分を常に意識した生活が送れるようになっていった。
俺はダイヤとの付き合いの中でまず彼の声の良さに気が付いた。
彼は自分でピアノを弾きながら歌うことが得意で俺は作曲が得意だった。
俺たちは二人とも音楽が好きでそれで稼げるならば本望だった。
俺たちは動画サイトを利用し、まずはピアノ演奏をアップしてみた。
そして徐々にピアノと歌もアップしていくと少しずつ見てくれる人の数も増えていった。
評価もコメントも気にせずただただ見てくれる人がいることに感謝しながら楽しい作業に夢中になっていた。
そしていつしか俺は自分のことをちゃんと好きになることもできていた。自分の容姿も性格も能力もすべてを肯定し、俺でいられることに感謝した。
俺の行く道は平穏で明るく楽しい暮らしが続いている。
だからそこには優しく温かい人たちが集い皆の笑顔で満ち溢れているのだ。
互いに尊重し合い、協力しあって生きることができる自分にとってのパラダイス、幸福の道だ。
真逆の緊張や恐怖、心配や怒りなどが続いている自分にとっては不幸の道でこれまでの過去の道からは離れる。競争や戦争も厭わず支配欲があり優越感に浸ることを好むことが幸せと感じるものたちにとってはパラダイスであり幸福の道である。
「ディラン、あの能力で頭の中をクリアにした後の結果でどう感じた?最初はすごくスッキリして気持ちが良かっただろ?でもそれは短い間だけですぐに疲労を感じなかったか?イライラしたり何か物足りなさを感じなかったか?」
これはまだ自身のことで悩んでいる頃にダイヤから問われた言葉だ。
確かに彼の言う通りであった。更に続けて人が噂話に夢中になるのもまったく同じことなのだと聞かされた時には俺は目が覚めるような思いだった。人は不満を抱えたりイライラしたりすると噂話に夢中になり誰かとその話をして盛り上がる。時にはネット等で悪口や批判、文句を書き込んだりもするだろう。そして短い間ではあるがとてもスッキリとした感覚を得て満足する。だがすぐにまた似たようなストレスを抱え同じことを繰り返すのだと。
この世界はそういった重いエネルギーを好む権力者と言われる支配者たちが私たちがストレスから永遠に解放されることがない社会システムを構築し、そのエネルギーを奪って力を得ているのだ。だから彼らと同じ道の上を歩んでいる限りエネルギー不足は死ぬまで続く。
エネルギーをヴァンパイアされる次元の世界で生きるキャラクターとして存在している私たちはまさしくゲームの真っ只中であり、プレイヤーとして覚醒したその時からが別次元へ進むチャンス到来となるのだ。
俺はすでにプレイヤーとして覚醒し、選択をして別次元へと移行中だ。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
続きは執筆中ですが、投稿は少し後になる予定です。
別の連載を始めようと思っていて、そちらを先に投稿するつもりでいます。
またお付き合いいただけますと大変光栄です。いつもありがとうございます。
そして削除予定の二月の活動報告ですが、六月になりましたら削除いたします。




