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第91話 「乱戦必至」(ストーリー)

 礼拝当日、日曜。

 学園都市ワイトシェルの警備隊本部には、早朝からサルデス討滅作戦の段取りのために、今作戦の主力となる面々が顔をそろえていた。

 サイガ、メイ、ナル、リン、セナ、エィカ、タイラー。そして警備隊長。それぞれが席に着く。

「あれ?ティエリア先生は?」

「彼女は本人の希望もあって、後方支援の方に回ってもらっておる。ここに居るのは作戦実行の主力だけじゃ」

「そうですわね。彼女の魔法、便利とはいえ、戦闘向きではありませんでしたから」

 メイに対しタイラーが答えた。リンも腑に落ちたといった様子だ。


「それでは本題に入りましょう。ご覧ください、これが集合墓地の全体図です」

 話に区切りをつけ、警備隊長が机の上に地図を広げた。

 中央に大きな四角。北と東には市街につながる門。西から南には曲線でワイトシェルの防壁が描かれていた。当然だが、地図の大部分は墓が占める。

「隊長殿、この中央の大きな四角は?」

 地図の中央を指差し、サイガが尋ねる。

「そこはかつて葬儀の際の斎場跡地になります。現在は屋根も外壁も朽ちて無くなっていますが、サルデス再臨のための儀式礼拝は十中八九そこで行われるでしょう。実際、部下が先日下見したところ、明らかに整頓されて、大人数の収容に耐えられる様になっていたそうです」

 解説と同時に、隊長の手によって地図に現状が加筆された。


「して、配置はどうするつもりじゃ?」

 タイラーが髭を手で撫でながらが質問した。

「六姫聖の三名とサイガ殿には儀式が行われるであろう斎場を担当していただきます。ここには教団側の主戦力も集うと考えられますので、遠近共に対応可能な状況を作ります」

 隊長が地図の上に人員を表す駒を置いて解説を始めた。

「一番の目的は儀式の阻止とサルデスの討滅。そしてシアン教団の教主の逮捕になります。現段階で教主の正体は不明ですので、儀式の流れを観察し確定したところでの確保の動きとなります」

 六姫聖の三人とサイガを表す駒が動く。


「まず、ナル様は遠距離からの後方支援と狙撃をかねて防壁の上で待機していただきます。そして、メイ様は斎場跡、入り口付近で待機していただきます。状況に応じて、独自の判断で動いていただきます。最後に、サイガ殿とリン様。お二人は斎場裏に潜み、近接戦闘及び教主の確保に動いていただきます」

 隊長の説明を各々が飲み込む。

「教主の生死は問わないのか?」

「背後関係を洗いたいので、出来るなら生け捕りが理想です。ですが、逃げられるぐらいなら討ち取っていただきます」

 ナルの質問に隊長が答えた。

「教徒たちはどうするの?先週の広場の連中みたいに自我が崩壊していたら、とてもじゃないど助けられないわ」

「心までサルデスに囚われておるとなれば、払うしかなかろう。遺憾であるがの」

 メイの質問にはタイラーが答えた。隊長もその答えに賛同した。

「教徒の動きを封じるだけなら、いざとなれば私とリンの魔法が効果を発揮するだろう。最後まで希望を捨てる必要は無い」

「そうですわ。無力化するだけで助けられるなら、尽力いたしましょう」

 ナルとリンの申し出に、隊長を始め全員が信頼のまなざしを向ける。皆はそこに六姫聖の矜持を見ていた。


「斎場側は以上です。そして墓地の北口にはタイラー学園長。東口にはセナ殿とエィカ殿に着いていただきます。なお、お二人には、ご要望でしたら隊員を数名お付けいたします」

「うむ、蟻一匹侵入を許さんぞ」

 タイラーは自信満々に腕組みをする。

「私達の方は心配は無用だよ隊長さん。隊員さんは別のところに振り分けてやっておくれよ。な、エィカ」

「そうですね。私達二人がいれば、誰にも負けません!」

 先日の廃墟での戦闘以来、セナとエィカは戦いにおいて大きく自信をつけた。それは意気込みに強く出ていた。

 主戦力全員の配置の確認が終了し、皆は警備隊本部を後にした。その顔には、終結に向かう決意が満ち満ちていた。




 シアン教団及び邪神サルデス討滅作戦実行の約三十分ほど前。

 レイセント学園の地下、要塞跡の名残である地下牢の独房の中では、南の森でサイガに撃破されタイラーに捕獲された国王側近である四凶の一人、『とどまることを知らないジョンブルジョン』は両の義手義足を失った状態で、冷たい石畳の上で寝転がっていた。

「く・・・むなしい。思えば一週間以上この状態ではないか。一体、救援はいつ来るのだ?私は四凶、王の側近だぞ。これではただの恥さらしではないか!くそっ!」

 のた打ち回るように、怒りに任せて体を動かすジョンブルジョン。その誇りは正に地に落ち、崩壊寸前だった。


「おやおや、四凶ともあろう方が情けないですね。そんなことでは国王陛下に顔向けできませんよ」

 暗く冷たい地下牢に冷徹な声が響く。

 ジョンブルジョンが声の方向に顔を向けると、そこには鉄格子越しに赤いスーツが見える。王国諜報員のギネーヴだ。

「ギネーヴ、貴様、ようやく来たか!遅いぞ、私が捕まってから何日過ぎたと思っている」

「約二週間、ですね。地下では日の流れが読めずに、感覚が狂いますか?」

「ああそうだ。おかげで感覚より先に気が狂いそうだ!一体なにをしていた?」

 激情型のジョンブルジョンは怒りが顔と声に出る。ギネーヴを強く問いただした。

「あの老獪の学園長殿、かなり厄介な御仁でしてね。この独房の真上に学園長室があるのですが、そこで陣取って居る間は、警戒の気の範囲内になっておりまして、手出しが出来なかったのですよ。やはり『魁の虎』は老いても虎のようでしてね」

「ということは、今は不在ということか?」

「ええ、私の案件絡みの方で出ているようです。おかげでここに潜入できたのですから、私には感謝こそすれ、文句を言ってもらっては困りますな」

「む、それはすまん。貴公の働きに感謝する」

 ジョンブルジョンは素直に謝罪し、礼を口にした。直情的な反面、実直でもあるのだ。


「ですが、ずいぶん時間が空き救助が遅れたのは事実。その分、しっかりと役割を果たしますよ」

 そう言うギネーヴの足元には一つのアタッシュケースがあった。

 ギネーヴはアタッシュケースをジョンブルジョンに向け開く。そこには新たな義手、義足が納められていた。

「おお、それは・・・」

 ジョンブルジョンの目が輝く。

「ドクターウィルより預かってまいりました試作品です。魔法珠の付け替えは出来ませんが、収納魔法と構築魔法を併用することにより、ほぼ無尽蔵に武器を作成しながら発射することが可能となる、完全なる兵器です」

「す、素晴らしい。速く取り付けてくれ」

 石畳をはいずりながら鉄格子まで体を近づけ、ジョンブルジョンは腕を差し出す。ギネーヴはそこに義手を取り付けた。

「足のほうですが、こっちは戦闘よりも隠遁用の機能が充実しているとのことです。ドクターウィルはゴキブリと呼んでらっしゃいましたね」

「ゴキブリだと?気分の良い名前ではないが、贅沢は言っていられんか」

 ジョンブルジョンは名前に抵抗を覚えながらもしぶしぶ手足を取り付けた。立ち上がると、接合部の具合を確かめる。


「ふむ、なかなか良いな。足はよくなじんでいる。では続いて、腕の性能を試すとするか」

 ジョンブルジョンは右腕を鉄格子に向けた。魔法珠が輝き、魔法が発動する。

 収納魔法で収められた金属が義手の指関節部からあふれ出し、構築魔法で形を変える。ジョンブルジョンの右腕は鉄よりも硬質な金属のチェーンソーとなった。

「ギネーヴ離れろ。火花が散るぞ!」

 回転するチェーンが鉄格子に触れた。途端に激しい雨のような火花が宙を舞い、鉄を焼き、削る臭いが地下牢に立ち込める。


 鉄格子を一周し円を描いたところで、チェーンソーが動きを止めた。

 円の内の部分を蹴り飛ばし大きな穴を作ると、ジョンブルジョンは悠々とそこから外へ出た。現状を実感するように大きく体を伸ばす。

「助かったぞギネーヴよ。ところで貴公も任務の最中ではないのか?」

「ええそうです。ですが、何の因果か貴方と私の任務の対象が、今日は同じところに会する大変記念すべき日なのです」

「ほぅ、その話、詳しく聞かせてくれるか?」

 ギネーヴの口から出たのは、学園都市側のシアン教団討滅作戦と、錬金術科教師にして教団の信徒シュミットからの新型ホムンクルスの売り込みの件。そして、その二つが都市南東の墓地で会するという事態だった。

「なるほど、では、そこに行けば・・・」

「我々二人の任務がまとめて片付くでしょうな」

「面白い、ならば復讐がてら任務の遂行と参ろうか!」

 ギネーヴとジョンブルジョン。王国の裏の顔である二人は、邪悪な笑みと共に歩みだした。

読んでいただいてありがとうございます。

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