表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/324

第59話 「決戦・中編」(バトル)

 規格外の外皮と戦闘力を誇るギドンを前に、クロスト防衛の士達は一時撤退を余儀なくされた。

 対策案を練るため警備隊本部に総員約五十人程度が集合していた。

「セナ、大丈夫か?」

 リンに救出され運ばれてきたセナに、サイガが駆け寄ってきた。

「なんだい、サイガ。そんな心配する必要ないよ。あれぐらいなら、ほらポーションで回復したよ」

 空いたポーションの瓶を見せながら、セナは笑って応えた。

「残念ながら、武器は回収できませんでしたわ」

「ありがとうございますリン様。だけど、あの戦鎚なら重すぎてあいつ等じゃ使えないだろうから、あとで回収します。気にしないでください」


「死者がいないのは何よりだが、あのギドンの顔をした巨大なアント。あいつは一体なんだ?このままでは、あいつ一匹にクロストは蹂躙されてしまう」

 警備隊本部の屋上から三百メートル南、今だ霧中八辺の幻惑の中で無差別に暴れまわるギドンを見ながら、ライオネスは歯噛みした。

「リンはあのアントの親玉、ギドンの成れの果てとみるか?」

「そうですわね、冒険者の連中がアントになっていたことを鑑みるに、同じ理由でアントと化したと考えてよいでしょう。故意か過失かは解りかねますけど」

 サイガの問いにリンが答える。サイガは少し考え込んだ。そして一計を案じた。

「ライオネス殿。たしかギドンは次期市長の座と権力に固執してる。そのため、現市長を敵視している。そうでしたね?」

「ええ、そうです。それがどうしました?」

「でしたら、私に案があります。そのためには市長の協力が必要なので、ライオネス殿、ご協力願えますか?」

「というと?」

「ライオネス殿に、市長を説得していただきたい」

「説得?まさか・・・」

「はい、市長を囮にギドンを罠にはめます」

 サイガの提案に、全員からどよめきが起こった。

「それは・・・どのような策ですか?非戦闘員を巻き込むなど、とてもではないが、そんな案、応じるわけには参りません。だが・・・」

 ライオネスは否定したかったが、ギドンの戦力を目の当たりにした直後では、その意思も揺らぐ。それだけ今は危機的状況であり、藁をも掴む心境だったのだ。

「安心してください、市長には指一本触れさせません。その内容ですが・・・」

 サイガは全員に案を伝えた。

「たしかに、それなら一応は安全か・・・」

「隊長さん、そろそろ私の魔法が切れる、迷ってる暇はないわ」

「そうです。我々も全力を尽くして作戦成功に勤めます。ここはこの策に賭けましょう」

 しぶるライオネスを、上級冒険者の魔道士フィーリアと剣士ブルーノの二人の言葉が決心させた。

「わかりました。お二人もそうおっしゃるなら。ここで眺めるより希望に賭けましょう。みんな覚悟はいいか!」

 顔を上げたライオネスからは迷いが消えていた。全員の前に立つと作戦の決行を宣言する。混成部隊の全員が拳を上げて応え、作戦が実行に移された。



 ギドン討伐作戦が開始され、各員が行動を開始した。

 ライオネスは市長を迎えるために避難所へ向かう。歩兵騎兵は南北道のギドンの北側に配置。エィカを含む弓兵、魔道士は建物の屋上で援護の配置。サイガとリン、セナ、リュウカンの四人は作戦の最後の一手のために身を潜めた。

「こちらライオネス。市長の身柄を確保、現在作戦位置へ向かっている。始めてくれ」

 ライオネスの通信を受けて、弓魔法部隊の指揮を執るフィーリアがギドン視界を遮っていた魔法を解除をする。


 霧中八辺が徐々に薄れ、散るように消えた。

 数十分ぶりに視界を取り戻したギドンが再び侵攻を開始した。足元には討伐され尽くされ、最後の十匹ほどとなったアントが護衛を勤める。

「よし、来たぞ。仕掛けろ!」

 フィーリアの掛け声を受け、弓と魔法がアント達に飛来した。数匹のアントが倒れ、状況を理解したギドンがいきり立った。

「突撃!雑魚を一掃しろ!」

 遠距離からの攻撃が終わると、次は剣士ブルーノが率いる歩兵隊が警備隊の騎馬兵と共に路地から奇襲をかけた。

 隙を突かれた護衛のアントたちは瞬く間に刃と槍に倒れる。

 アントたちは全滅した。残すのは親玉であるギドンのみとなった。

「よし、あとはこいつを北に導け!」

 兵たちは南北道を北に向かって走り出し、配下の全てを失ったギドンが怒りの表情でそれを追いかけた。

 兵士達はひたすらに北へ向かって疾走した。ギドンも必死にそれを追いかける。

 巨体誇るギドンと武具を身にまとう歩兵達。その一歩は同じ一歩での大きく差があった。徐々にギドンが距離を詰めてきていたのだ。次の一歩で歩兵を踏み潰せる距離まで足が迫っていた。

「間に合った。散れ!」

 歩兵たちは中央の十字路に到達すると、ブルーノは指示を出し、北へ向かっていた足を東西に向けさせて二手に分けた。


 ギドンは足を止めて左右に首を向けた。分かれた兵のどちらを追うか考えたのだ。

「おい!こっちだ!」

 ライオネスの声が聞こえた。声の方向、北側にギドンが顔を向ける。そこで見たものに、目を釘付けにされた。

 ライオネスの隣には馬にまたがる、市長ラウロの姿があったのだ。

「ラ、ラウロォオオオオオ!」

 市長の姿を見つけるや否や、ギドンは北に向かって走り出した。四本の足が、地中に打ち込まれる杭のように激しく地を鳴らす。

「市長、逃げて!」

 ギドンの突進を確認して、ライオネスは市長を促した。

 ライオネスが導き、市長が続いて駆け出す。

読んでいただいてありがとうございます。

よろしければ、ブックマーク・評価・感想・下記ランキングサイトへの投票(クリック)をいただければありがたいです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ