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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者ワーレン・エッダランドの章
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第329話 「元異界人特務部隊」(バトル)

 チャールソンの死。それに関する事柄は爆発だけではなかった。

 催眠下にあった野盗連中が一斉に暴走し始めたのだ。チャールソンの能力は死して尚、その効果を発揮するのだ。


 変質した周囲の空気を、元特務部隊の三人は敏感に察知した。揃ってスキル発動の準備を整える。

「アラシロ、なにか視えるか?」

「そこら辺りの連中がゾンビみたいに立ち上がる!敵味方関係ない、見境なく襲ってくるよ!」

 アラシロの予言通り、シュドーの車両に轢かれて虫の息だった野盗がゾンビのように立ち上がる。

 それと同時に、夜空に黒い大きな物体が飛来してきた。セジーマが死に際に放った薬炸脳虫(やくさくのうちゅう)の群れだ。


「おい、空からもなにか来やがったぞ。ありゃなんだ?」

 シュドーが空を指して叫ぶ。

 アラシロがスキルを発動させて挙動を予見する。

「あれは・・・!まずい、逃げろ!みんな死ぬよ!」

 未来を視たアラシロが避難を促した。

「で、何が視えたんだ?」

「あれは全部虫だよ。しかも一匹一匹がさっきの爆発と同じ威力の爆弾だ!」

「爆弾虫だと?冗談じゃねぇぞ。だから、なんなのかは先に言え!こんな確認してる場合じゃねぇじゃねぇか!」

 アラシロの段取りの悪さにシュドーが声をあらげる。


 空で波のようにうねっていた虫の群が動きを変えて効果を始めた。明らかにシュドーたちを狙う動きだった。


 空からは爆弾虫、地上はゾンビのように自我を失った野盗の集団。思いがけない状況に、三人に戦慄が走る。

「シュドー、なにか武器を出して、早く!」

 三人の中でもっとも戦闘能力の低いクジャクが武器を求める。有するスキルと敵との相性を考えれば当然の要望だった。


 シュドーがスキル『無限武具精製(ラグナロクファクトリー)』で武器を作る。

 小さな金属板を金槌で叩くと、板が形を変え一丁のグレネードランチャーとなった。

「そらよ、これを使え!」

 シュドーが、ランチャーを放り投げて渡してきた。

「これ大丈夫なの?下手に刺激したら爆発するんじゃない?」

「安心しろ、そいつが撃ち出すのは弾じゃない、殺虫剤だ。遠慮なくかましてやれ!」

「殺虫剤・・・わ、わかったわ」


 渡された武器の正体にクジャクは一瞬戸惑ったが、銃口を空の虫の群に向けて引き金を引いた。

 銃口から弾が飛び出ると、直後に霧のように殺虫剤が広がった。

 三人に向かってきていた虫の群が殺虫剤の中に飛び込むと、即座にその効果が発揮された。

 虫たちは一瞬で命を落とし、真下に落下をする。

 

 無数の虫の死骸が、雨のようにクジャクに降り注ぐ。

「きゃああ、最悪!やっぱりこうなったじゃない!」

 悲鳴をあげるクジャク。それを尻目に、アラシロは既にかなり距離をとった場所に避難していた。

「あ、逃げるよ。さすが虫、危機感は強いみたいだね」

 安全圏から空を指し、遠方に飛び去る薬炸脳虫を見送るアラシロと元特務部隊の一同。

 虫たちは風に流される羽衣のような動きで町の南方へと消えていった。


「行っちゃったね。どうする?監獄から来たヤツも死んじゃったし、一旦隊長と合流した方がいいんじゃない?」

「そうだな、早いとこ監獄に行かねぇと、レディムが来ちまう。合流してさっさと終わらせるぞ。おい、お前ら、こっちだついてきな!」

 アラシロの提案を受け、シュドー、クジャクと三人が走り出した。

 シュドーに挑発されたゾンビのような緩慢な動きの野盗が、追うようにそれに続いた。


 ◆


 町の中央。忍者であるドウマと、邪神の庇護を受けて奇怪な動きを可能とするラミーラミーとの戦いは、さながら猫の喧嘩のように絶え間なく攻守の入り乱れる激戦となっていた。


 サイガのライバルを自負するだけあり、ドウマの体術はそれに匹敵する。

 機動性、跳躍力、攻撃速度、機転、技巧などは、現在宿場町で戦闘を行っている全ての戦士のなかで最強と言ってもいいほどだ。


 対してラミーラミーも他の脱獄囚と違う、神より授かった力をもってドウマに比肩するほどの戦闘力を見せていた。

 その動きに実体は無く、全身を霧のように散らすことと戻ることを繰り返し、攻撃、防御、回避の動作をたちどころに入れ替えた戦法を用いる。

 両手に漲らせた黒い力を熊の手のような形にすると大きく振りかぶる動作で警戒を誘い、黒く散って真逆の股下に潜り込む。

 そこから槍のように変形させた腕で貫通を狙う。


 狙いの箇所を変幻自在に入れ替える虚実の入り交じった戦法。一般的な冒険者程度の相手ならこれで決着だろうが、ドウマにとっては対応に窮するものではなかった。

 振りかぶりの動作が誘いであることを見抜くと、あえて大袈裟な防御の動作を見せ、本命の攻撃を引き出す。


 足下から突き出した槍の刺突ような攻撃を、ドウマは忍者刀の切っ先を用い、点と点で受け止めた。

 同時に両足で地面を蹴り、身を翻させ舞い上がる。

「無駄だよ。キミの動きはトリッキーだけど精神がおいてけぼりだ。見え見えのフェイントに力みすぎた攻撃、そんな素人丸出しの動きなんかには絶対やられない」

 ラミーラミーの一瞬の動きに、ドウマは一瞬で神業で対応し、さらに解説する余裕綽々ぶりだった。


「そら、『忍法 羅々(ららばい)』!」

 攻撃を躱しつつ、ドウマはチートスキルの『超忍者(ゴエモン)』を発動させて反撃に転じた。

 有刺鉄線で編んだ目の小さな網を被せて動きを封じる『羅々(ららばい)』を実体を表したラミーラミーに被せ動きを封じる。


 しかしラミーラミーは動じない。

 邪神の崇拝者は授かった力の特性を熟知しており、羅々這に用いられた網の目が霧散できる程度の大きさであると瞬時に判断したのだ。

 全身に黒い力を漲らせて霧のように散ろうとする。

「おっとやらせない『忍法 雷咬(らいこう)』」

 ラミーラミーの動きを察知したドウマは、雷の蛇を発生させて噛みつかせた。

「ぎゃあ!」

 牙の痛みと雷の痺れによって、ケダモノのような叫びをあげる。

 耐久を超えた電撃によって、ラミーラミーは失神した。


 落ちた瞬間をドウマは見逃がさない。

 目、口、両手、両足を縛り上げ自由を奪うと『忍法 暗惑(くらまどい)』で上下左右の感覚を狂わせた状態を施した。

「はい、おしまい。これで目を覚まして状態が確認できないから、無闇に散らばることもできないよね。さて・・・」

 一仕事を終えたドウマが避難所に目をやる。

 ちょうど、ラミーラミーに襲われた住人たちの応急処置を終わらせたリンたちと目があった。


「やあ、お疲れ様。そっちはどうだった?」

 戦いの後とは思えないぐらい爽やかに声をかけるドウマ。サイガとは対称的な振るまいが、ライバルと言うことの説得力をもたせる。

「おかげさまで、犠牲者を出さずにすみましたわ。なんとか歩けそうですので、ジョンブルジョンに付き添ってもらって別のところに避難してもらいますわ」

 リンの後ろから、負傷した住人の親子たちが数組出てきた。ジョンブルジョンが「あとは任せておけ」と、無言で頷く。

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