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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者ワーレン・エッダランドの章
333/340

第323話 「もてあます力」(バトル)

 宿場町の北側に激しい爆音が鳴り響き、黒煙が巻き起こり、突風が吹き荒れる。そしてそれが幾度となく繰り返される。

 脱獄囚、見えない爆弾魔のセジーマが放った技『爆殺の波』が、ジョンブルジョンを防御の上から消耗させていく。


「あははははぁ!どうだこの威力!ボクの操る爆発に壊せないもの、殺せないものはないんだよ!ははははぁ!」

 爆発音に引けを取らないほどの大声でセジーマが笑う。

 約二十回。爆発が、防御に徹するジョンブルジョンを通過した。

 ここで一旦、セジーマは結果を見るために攻撃の手を止める。


 黒煙が晴れた。

 そこには守りの円柱を破壊され、両腕を失った状態のジョンブルジョンが息を荒らして立っていた。

「八・・・ハァッハァッ、ハァッ・・・!ま、まさか・・・私の守りを、両腕を破壊するとは・・・なんという威力・・・」


 疲労一色に染まった顔に、乱れる呼吸。わずかの時間で窮地に追い込まれたジョンブルジョンの姿が爆殺の波の威力を物語っていた。

「へぇぇ、腕だけで済んだんだ。なかなか頑丈だね。普通なら跡形もなくなるんだけどなぁ」

 半笑いの顔に気安い口調。瀕死のジョンブルジョンをからかうように語りかけるセジーマ。

 それでも油断することはなく、無駄に距離を詰めてこない。


「ど、どういうことだ・・・」

「なにがだい?」

 荒い息をなんとか落ち着かせ、ジョンブルジョンが問いかけてきた。

 勝者の余裕に満たされるセジーマはそれに答えてやることにした。

「この爆発の威力・・・上級以上。特級のそれだ。さらにそれを連続で使用するとは、貴様のような犯罪者がどうやってこんな力を・・・」


 当然の疑問だった。優れた逸脱した力があればその名、武名は一介の犯罪者にとどまることはなく必ず知れる。

 セジーマが武名でなく悪名が勝るということは、元来そのような力を持ち合わせていることは考えにくいのだ。

「あ、知りたい?ふふ、良いよ暇潰しに教えてあげる」


 セジーマは近くの台に腰を下ろした。両腕を失い虫の息のジョンブルジョンを脅威でないと判断したのだ。

「確かに、ボクたちカルカリの囚人は冒険者のような戦闘力を持ち合わせていない。だけど、皮肉なことにカルカリ監獄に入れられたことによって新たな力に目覚めたんだ」

「新たな力だと?」

「そう。カルカリに投獄されたボクたちは、その罪状の重さゆえに独房に閉じ込められ、あとは死を待つだけの時間を過ごしていた。暗い静かなだけの時間が過ぎるだけ。そう思っていた」

 半笑いのままセジーマは語り、ジョンブルジョンは黙って聞く。


「だけどある日気づいたんだ。ボクの身体の中に暗くて心地よい力が流れ込んできていることに。そしてそれはボクだけじゃなかった。カルカリに投獄されていた凶悪な死刑囚たちの殆どがその力を受け取り、自分の罪にちなんだ能力に目覚めていたんだ」

「それが、貴様でいうところのさっきの爆発か。ならば、今ここを襲撃している連中も能力を有するのだな」

「察しがいいね、その通りだよ。どんな能力かは言えないけどね。ヒヒッ」

「となれば、あまり悠長に情報収集というわけにはいかないな。早々に決着をつけねば・・・」

 静かにポツリとジョンブルジョンが呟いた。目には野心的な光が宿っている。


「なんだと?・・・まさかお前」

 セジーマが警戒心を強める。しかし遅かった。

「どんな強い力を得ようが、戦いの最中に自慢話に陶酔する貴様はやはり素人だ!」

 ジョンブルジョンはセジーマから情報を引き出しつつ反撃の隙をうかがっていて、それを実行に移したのだ。


 右義足の爪先が射出された。

「な、なんだって、足も義足か!?」

 セジーマが驚きの声をあげた。両腕の機能に意識を奪われて両足の可能性を見落としていたのだ。

 不意の攻撃に対し、気を抜いていたセジーマの動きは大きく遅れた。投げつけられた言葉通り、素人丸出しの対応だった。


「く、爆殺・・・」

「遅いぞ!弾けろ『トゥショット』!」

 爆発で応戦しようとするセジーマの目前で、射出された爪先が爆発した。水魔法によって中に蓄えられていた水が飛び散り、全身を濡らす。

「水?」

「これで爆発を起こせまい!」

「な、なめるなよ。こんな小細工でボクの爆発は止まらないぞ。爆殺の波!」

 一瞬怯んだが、セジーマは爆発を起こすために腕を振る動作に入る。


「遅いと言っている!」

 行動を予測して、既にジョンブルジョンが跳躍し、眼前下方に接近していた。

 右義足の足刀部からウォータージェットを噴出させると、扇を描く低空の後ろ回し蹴りを放ち、攻撃のために前に出ていたセジーマの両腕を切断した。


「あああああ!う、腕がぁあ!」

「こんな致命的な攻撃を、トドメもささずに許すから素人だというのだ!」

 腕を切り落とした右足が地面に着く瞬間、踵をジェット噴出口に変化、噴出させると右足の軌道を前蹴りへと切り替え腹に蹴りを叩き込んだ。

「げほぉ!」

 圧迫された腹から空気が押し出され、鳴き声のような音を響かせながらセジーマは後方に転がる。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・一発でおしまいか?どうやら、経験も耐久も素人だったな」

 仰向けに倒れるセジーマに近づき、ジョンブルジョンは声をかける。

「く、くそ、くそぉ・・・なんだよその動き・・・義足じゃないのかよ・・・器用すぎるだろ・・・」

「ふ、解っていないな。義足だからこそだ。貴様は私が義足であることを気付かなかった。それだけ私は自然に振る舞えるよう、血の滲む努力で一体化を成していたのだ」

「それが、生身以上のあの動きってことかよ・・・」


「さぁトドメをさしてやろう。私はお前のように油断はしないぞ」

 ジョンブルジョンが決着をつけるために、右の足首から先を爆弾へと変化させた。

「大好きな爆弾で葬ってやる。本望だろう」

 右足を上げ、発射の準備に入る。しかしその時、セジーマが身体を揺らして笑った。


「ふ、ふふ、ふふふふふ・・・そうだねぇ、あんた、確かに油断してないよ。だけどさ、運は悪いよね」

「なんだと、運?」

「そう。腹を蹴って、わざわざボクの奥の手を取り出すのに協力してくれるんだからね」

 不敵に笑い続けるセジーマの口から、何かが覗いていた。黒い粒だった。事前に呑み込んでいたものだ。


「な、なんだこれは・・・」

 ジョンブルジョンは絶句した。セジーマの口から出ていた黒い粒は一つや二つではなかったからだ。

 セジーマは七百ml程度の瓶一杯の粒を呑み込んでいたのだ。

「こ、これは動いている・・・まさか・・・虫か!?」

「そうだよ『薬炸脳虫(やくさくのうちゅう)』。生物の脳にとりついて爆弾に作り替える寄生生物さ。これを解き放つ!」

「ふざけるなよ!そんな真似をさせるとでも・・・」

「出来るさ。なにせ、こいつ自体も爆弾だからね!」


 セジーマが語り終わると、腹部が大きく膨らんだ。

「く、まさか、自爆するのか!?」

「ぞ、ぞうだ・・・よ、ボクの爆発で・・・虫をバラ撒くんだ・・・おごっ!」

 膨張が顔まで及び形を失うと、セジーマの身体が間をおかず弾け飛んだ。

 ジョンブルジョンは対応は不可能と判断し、命を守ることを優先させた。義足の底をローラーに変化させて緊急退避をした。


「くそっ!なんてことを・・・ふざけるな、貴様の思いようには絶対させんからな!」

 両腕を失っているため、爆発によって空中に放たれた『薬炸脳虫』を見送る形となったジョンブルジョン。

 その顔は臍を噛む思いと怒りで歪んでいた。

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