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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者リリー・コールドの章
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第262話 「忍刀蛮伐(にんとうばんばつ)/魔炎争舞(まえんそうぶ)・前編」(バトル)

「サイガ、悪いけど黒い服の方、相手してもらえる?」

「どういうことだ?二人でやるんじゃないのか?」

「そうしたいのはやまやまなんだけどさ、そいつよりヤバイのがいるのよ」

 メイは顔を上げて上方を見る。その先には骨の御輿があった。

「な、なんだ、あの悪趣味な乗り物は?」

 御輿を見たサイガは思わず声をあげた。感想は他の者たちと同じだった。


 メイが御輿の上のジュゼッタを指した。

「あんたは魔力がないからわかんないでしょうけど、あの緑髪の女、あいつとんでもない魔力量。多分、私以上よ」

「お前以上の魔力だと?そんなものがいるのか?」

 サイガは驚愕する。天地を焼き尽くすほどの炎を扱うメイ。これまで何度もその威力を見てきただけに、衝撃は強かった。

「驚くでしょう、私もはじめて会うわ。私も充分化け物の自覚はあるけど、それを越えてきてるんだもの。正直震えてる・・・」

 メイは冷や汗を浮かべ拳を握る。そこには未知なる敵への恐怖と期待も含まれていた。


 倒れていたゾグラスが首跳ね起きで立ち上がった。

 失った顔の前半分を再生させている。

「話はわかった。メイ、行け。こいつの相手は任せておけ」

「ありがと。じゃ、よろしくね」

 日輪を輝かせてメイはジュゼッタに向けて飛翔した。


 ゾグラスの再生が進む。目と頭部の前に口が形成され、喋り出した。

「やってくるんね。顔は再生ん遅かけんが、戻すとがきつかっば・・・げぺっ!」

 言い終わる前に、サイガが飛び込みの蹴りを再生中の脳漿に叩き込んだ。足裏のスパイクが突き刺さる。

 蹴りの圧迫で、ゾグラスの脳は四方に飛び散り、身体は前のめりに倒れた。


 サイガの追撃は終わらない。

 跳び上がり、落下する勢いで後頭部を踏みつけると、再生中の顔を地面に押し付ける。

 続いてクナイを手の甲、足裏に突き立てると、手足を地面に固定した。


 自由を失った背に、忍者刀が深く突き刺さる。場所は心臓。熟練の忍であるサイガは一切の狂いなくその場所を貫いた。

 ショックでゾグラスの身体が、捌かれる魚のように跳ねた。


 容赦の無いサイガの追撃。通常の魔物や人間なら絶命しただろうが、地獄の将、序列の二、ゾグラスは当たり前のように動き出した。

 固定された手を手首で引きちぎり、そこから再生させると、地面に手をついて状態を起こす。

「おおおおおお!やってくるんね。鮮やかで躊躇んなか。見事ばい!ばってん、そがんとじゃおっは死なんばい!」

「やはりメイを追い詰めるだけあって、脳を潰されて心臓を貫くぐらいでは死なんか!」

 あまりに強力なゾグラスの生命力に、サイガは命への観念が狂った言葉を口にする。


 ゾグラスが地についた両腕と背筋に力を込める。筋肉が大きく隆起し、血管が浮き上がり、大きな動きを予感させる。

「ぬぅおおおおおお・・・おらぁああああ!」

 右手で拳を作り全力で地面を殴った。上半身が反動で回転した。

 腰椎が捻られ、へし曲がる音が響く。ゾグラスは起き上がるのではなく、上半身だけを反転させて拘束から脱した。


 さらに回転の勢いを利用して、ゾグラスはサイガに掴みかかってきた。

 心臓を忍者刀で貫いた都合上、サイガはゾグラスの真上にいた。その事が最短距離での攻撃を許したのだ。

「油断すんなよ、ぬすけが!」

 再生させた両手でサイガの腰に飛び付くと、上半身だけで瞬く間に胸を這い上がり、肩を掴んで正面に現れた。


「そん面ばズタズタに噛み砕いてやるばい」

 ニヤリと笑い、ゾグラスは再生の終わった口を大きく開いた。

 大きな犬歯を光らせ、ゾグラスの口が迫る。吐息と湿気、獣のような口臭が鼻をつく。


 だが、サイガは超至近距離まで詰められながらも、冷静さを欠かずに対抗した。

 左右の手に逆手に握った、クナイを両のこめかみに突き立てたのだ。

「あぐっ!あがっ・・・ぎっ、ぎ・・・」

 脳の損傷により、サイガの肩を掴んだまま、ゾグラスの身体がのけ反った。感電したように激しく痙攣する。


「この攻撃でも手の力が抜けないだと!?」

 ゾグラスの両手は力強く肩を握り続けていた。そしてその力は徐々に増してきていた。

「無駄ばい。そん攻撃はもう慣れたけん、耐えらるっとばい・・・なぁっ!」


 のけ反った姿勢から、ゾグラスは一気に口を再接近させた。

 サイガは間一髪で右の籠手を噛ませて難を逃れた。

「こ、籠手が・・・歪む・・・なんて咬合力だ・・・」

 犬歯が食い込み、籠手にヒビが入る。

「ぐぅおおおおおお!」

「ふぁ、ふぁよ、ふぁきらめんはぁああああ!(はよ、あきらめんかぁああああ!)」


 噛み締めるゾグラスの額に左手を押し当て、サイガも懸命に抗う。

 その間に、切り離した下半身を再生させるゾグラス。ふくらはぎまで再生させたところで、がら空きの胴を両足で挟み込んで身体を固定した。


「ぬぉおおおおお!」

「ぐがががががぁ!」

 押し合い、せめぎあうサイガとゾグラス。力と力。

 二人は互角に見えた。だが、僅かにゾグラスに分があった。両足を絡めている分、サイガの懐に入り、さらに力が込めやすかったのだ。

 籠手にさらに深いヒビが入る。


「駄目だ、もたない!」

 籠手の状態で、サイガは耐久の限界を悟った。直後、ゾグラスの犬歯が籠手を砕いた。

 挟まれれば切断必至の蛮君の牙を、サイガは寸でのところで腕を引いてなんとか逃れた。


 拮抗した戦士と戦士の戦いは、一瞬一瞬で戦況は急転する。

 籠手を砕いたゾグラスの牙は、動きを止めることなく追撃を行った。

 両腕で自らをサイガに引き寄せると、右の首筋に噛みついたのだ。

 ゾグラスの凶悪な歯が強化繊維の忍装束に食い込んだ。


「ぐぅううおおおおお!ふぉもまま、くひばかみひってはっほ!(このまま、首も噛み切ってやっぞ)」

 犬歯の先端が肉に食い込む。さらに両手は背と後頭部に回され、忍装束と後ろ髪を掴み固定する。

 もはや首を噛みちぎられるのは時間の問題だった

 しかしサイガは、何を思ったのか両手を広げるとゾグラスの身体を抱え込んだ。


「ふぁ、なんふぁ、ひぬはへにほんなはほひはっは!(はっ、なんか、死ぬ前に女が欲しかっか?)」

「笑わせるなよ!お前のような猪女、誰が抱くか!」

 サイガがゾグラスの脛椎と腰椎に親指を押し込んだ。親指を起点に、ゾグラスの背骨に電流が走る。

「ぐぁっ!」


 ゾグラスが口を放し叫びを上げた。これは当人にとって意外なことだった。

 激しい戦闘を好む性格上、痛みへの耐性が高いことは自負しており、絶対の自信があった。しかし今、親指の鈍い刺激で、みっともないほどの声をあげたからだ。

「な、なんかこら?知らん痛みばい!」

「背骨周辺の神経を直接刺激した。生物なら、これには抗えん」


 刺激によって大きくのけ反るゾグラスの身体。さらにそこに初めての体験が起こる。

 両の手足を大の字に大きく広げてサイガを拘束から解放してしまったのだ。

「な、なんか・・・こら・・・」

 意思に反した動きをする肉体に、ゾグラスは困惑の顔を見せる。

「これも生物なら当然の反応だ。手足を開くよう、神経を刺激した」

「こ、こしゃっかぁああああ!」

「なんとでも言え」

 サイガは冷たく言い放った。


 大きく開かれた手足。それによってゾグラスの身体は落下を始める。

「はは、こらまずかね・・・」

 身体を開く。それは無抵抗の証。そして正面には忍者刀を握るサイガ。ゾグラスはあまりの苦境に思わず笑ってしまった。


 忍者刀が銀色の尾を引いて閃いた。

 開かれた手足が、肩と膝から切り離される。

「かぁ、やっぱ速かな」

 あらためて体感するサイガの速度に、感心したゾグラスは、敵ながら称賛を口にした。

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