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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者リリー・コールドの章
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第252話 「力の差」(バトル)

 地獄と繋がった道より現れた、序列の一と二の将。ジュゼッタ・ロゼとゾグラス。

 そしてニの将ゾグラスの移動と攻撃の速度は、リリーがこれまで対峙した敵とは大きく格が違っていた。


 距離もあり向かい合った状態のままで、ゾグラスは瞬時にリリーの眼前に移動した。

 魔力の気配はなく、単純に踏み込んだだけだった。が、そんな単純な動作でも格の違いを見せつけるには充分だった。

 序列の一ジュゼッタ以外は、その動きに気づくことすら出来なかったからだ。


 一瞬で踏み込んだゾグラスの拳が、リリーの腹部に深々と突き刺さる。

 下から突き上げる一撃。リリーの体は衝撃で浮き上がった。

 わずかに浮き上がった両足が再び地についたとき、リリーはここでようやく自分が攻撃を受けたことを理解した。

「ぐ、ぐぇへっ!がはぁっ!な、なに・・・が・・・」

「なんね。こがんとば食らいよる程度じゃ、おっの相手にはならんばい」


 腹部への激痛により、思わず前のめりになるリリー。そこを左の回し蹴りの追撃が狙う。

「ぐ、『ベスト・ラスカ』!」

 蹴りが腹に届く直前、リリーの加護が発動した。衝撃を吸収するベストで攻撃を受け止め、腹部を守った。

 リリーはゾグラスの速度に順応したのだ。


「わいたこら。おっの攻撃ば一回で見切ったっか。こがん(もん)は初めてばい。あんた、たいぎゃ強かね。ばってん、そがんとじゃ止められん・・・ばい!」

 ゾグラスは蹴りを受け止められながらも、強引に振り抜くために力を込める。

 再びリリーの身体が浮き上がった。

「ま、マジか、こいつ・・・!?私と同じ程度の体格で、足だけで持ち上げた?」

「こがん軽かなら、当然やろもん!」

 更に力を込め、ゾグラスが足を振り抜いた。

 いよいよリリーの身体が後方へと吹き飛ばされる。


「リリー、掴まれ!」

 飛ばされるリリーに向かい、翼を生やしたリシャクが飛翔、接近して手を差し伸べる。

「おう、あんがとよ!」

 リリーの手を掴み、引き寄せ地に下ろすと、リシャクはその横に並び立ちゾグラスを睨んだ。

「相変わらずの手の早さじゃな」

「はっはっは、すまんな。そこん女が戦いがじょっかごたったけんが、手が出てしもたったばい」

 不意打ちを一切悪びれることなく、豪快に笑い飛ばすゾグラス。この傍若無人な振る舞いに、リリーは自身と同類のものを感じていた。


「へっ、面白ぇ。きついのもらっちまったが、お陰で気が引き締まったぜ。一発で仕留めなかったこと、後悔させてやるぜ!」

 リリーは気合いを入れ直すと、加護を発動させた。

 右腕にパワーショベルのアーム。左腕に螺旋状のドリルを装着し、ディーゼルエンジンを背負った。

「どぉだぁ!加護をパワーに全振りした私のとっておきだ!骨の欠片も残らねぇぐらい粉々にしてやるぜ!」

 その気合いに呼応するように、ドリルが激しく回転した。


「ものものしいのう。ならば私も出しきらねばなるまい!」

 リシャクの姿が変貌した。

 両足が掴んだものを決して放さない『ヨコヅナカブト』の鉤爪、右手が死の猛毒をもつ『メイオウカツオノエボシ』の触手、左腕が鋼鉄製の殻をもつ『フルアーマースケーリーフット』の甲殻で作った盾。更に全身に生物由来の隠し武器を仕込んだ完全武装の形態となる。

「ヒャヒャ。消耗が激しい故、使いとうはなかったが、お主相手ではそうも言ってられぬでな」

 リシャクの口が斜め十字に四つに割れた。異形だが笑っているのが解る。


 完全武装のリリーとリシャクを前に、ゾグラスの顔が歓喜に歪む。

「おほぉ、よかねぇ、よかよか。喜ばせっくるったい。そがんならこっちも、楽しまんばねぇ!!!!」

 拳を握り、足を踏み込み、腰を落として気合いを入れる。ゾグラスの全身から津波のように魔力と闘気がほとばしった。大気が震動を始める。


「リリー、強身剤を使え。あれを使って、二人でかかって、ようやく互角と言うところじゃ。気を抜くなよ」

「勝てる。じゃなくて互角かよ・・・どんくれぇ強ぇえんだっつうの」

 強身剤を飲み干し空のアンプルを放り投げると、リリーは構えた。

 同じくリシャクも体内に蓄えていた強身剤の封を解き、身体中に行き渡らせる。血流、心拍が一気に上昇した。


「なんか。二人で薬ば飲んだけんがて、そがんとで互角にならるっわけが、なかろう・・・もん!!」

 ゾグラスが先に踏み込んで飛び出した。

 一瞬でリシャクの前に現れると、一瞬で前蹴りを素肌のみぞおちに差し込む。

「ぬすけが。こん程度の攻撃ば正面から食らっとってか、なんが互角か。ん?」


 ゾグラスの爪先に違和感があった。そこに肉の感触が無かったのだ。

「相変わらず正面からの一本調子じゃのう。来ると解っておる攻撃に対策せんわけがなかろう」

 笑うリシャク。そのみぞおちは、粘性の魔物『クッションスライム』に変貌し、攻撃を吸収していた。

「ほぅ、やりよんね。おっの蹴りが完全に殺されとった」

「当然じゃ。こいつは、お前の攻撃を無効化することのみを目的に、私が開発し育てた傑作じゃ。更にそれだけではないぞ。そらっ!」


 クッションスライムが大きく広がり、ゾグラスの拳と体を包んだ。

「お!なんかこら、気持ち悪かね!ヌルヌルしとるけんが好かん!ああっ・・・」

 スライムは口の中にまで滑り込み自由を奪う。

「どうじゃ、こいつの粘性は力ではどうにもならんぞ!リリー、かましてやれぇ!」

 クッションスライムに手こずるゾグラスの姿を好機と見たリシャクが、リリーをけしかける。


「よっしゃあ!こいつはさっきのお返しだぜ!ユンボ・エルグ!」

 右腕のパワーショベルを豪快に振り下ろし、リリーはゾグラスの頭部を全力で殴った。

 強固な岩石ですらバターのように滑らかに削り取る一撃。必殺とはいかないまでも効果的ではあるとリリーは信じていたが、その思いは脆くも打ち砕かれた。

 ゾグラスはリリーの渾身を技を受けてもその場に立ち続けていたのだ。


「な!?ま、マジか?効いてねぇ・・・」

「なんば言いよっか、ちゃんと痛かぞ。充分強かばい!」

「そりゃどうも。だがよ、こっちは殺すつもりでやってんだ。当たり前みてぇに立ってんじゃねぇよ!」

 右腕のショベルを引き、左のドリルを突き出すリリー。狙うのは腹部だ。


「内蔵まるごと掻き回してやるぜ!『ドリル・ガゥ』!」

「おう、来んか!」

 ドリルの先端が剥き出しの腹部に触れた。

 皮下脂肪の無い割れた腹筋が迎え撃つ。

「おおおらぁぁああああ!死ねやぁあああ!」

「せからしかぁああああ!!!!」

 気合いのドリルを、気合いの腹筋で受け止める。気合いと気合いがぶつかり合う。


 筋肉を硬直させるために大声を発するゾグラスの顔を、スライムが覆い包む。それによって腹筋がが緩んだ。

 ドリルの先端が皮膚を裂き、肉を抉りだした。

「ぐ、げぇ!ごぼ、がごごご・・・」

 喉が塞がれ、集中の乱れるゾグラス。そこにリリーはつけこむ。

「おらぁああ!このままつらぬいてやるぜぇえええ!」

 ゾグラスは、スライムに動きを鈍らせられながらも、その両手でドリルを掴んだ。

 回転力を超える握力で押さえ込もうとするが、スライムの粘性によって本来の力が発揮できずにいた。

「無駄なんだよぉおおお!」

 足を踏み込み、回転数と速度を上げて、食らいつく手を振り払うようにドリルを押し込む。

 ついにドリルは腹腔内に突入した。暴れまわるドリルが内蔵を掻き回す。


 手の腹をズタズタに荒らされ、内蔵を破壊されながらも、ゾグラスはリリーの攻撃に抗うことをやめない。

「があああああ!さすっかぁああああ!」

 腹部から血と肉を撒き散らしながら、両手に力を込めてドリルを押し戻そうとする。

 だが、抵抗むなしくリリーの目的は完遂された。

 ドリルの先端がゾグラスの背から飛び出した。貫通したのだ。


「よっしゃあああああ!やってやった!ぶち破ってやったぜ!」

 圧倒的格上と称された将を相手の大殊勲に、リリーは歓喜の咆哮を発した。

「なんと、ゾグラスを倒すとは・・・こいつの言うとおり、地上の連中は思った以上にすさまじいのぅ」

 リリーの戦闘力に驚きを隠せないリシャク。当のリリーは大口を開けて「はっはっは」と笑っていた。


 だがそれは、一時の喜びでしかなかった。







イメージイラスト(AI)※あくまでイメージなので、他のイラストと差異があったりしますがご容赦ください。


○蛮君 ゾグラス 2

挿絵(By みてみん)

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