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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者リリー・コールドの章
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第246話 「乱れ舞え!麗しき戦士よ」(バトル)

 ミコの奇襲をきっかけに、三方から女傑たちが奈落の井戸に詰めかけた。

 リリーは大股で駆け、リシャクはノミの足で跳躍し、シズクヴィオレッタは歩幅は狭くとも急速な足取りで前進する。


「よっしゃあ!ぶちかますぜぇ!」

 最初に到着したのはリリーだった。

 到着と同時に大きく踏み込むと、右腕に装着したパイルを、首を飛ばされたラシュトンの胸に、全力で突き立てた。


 ラシュトンは身体に軽鎧を纏っている。そのため胸部は守られており、パイルは先端で受け止められてしまった。

「しゃらくせぇ!だったら鎧ごとぉ、ぶち抜いてやるぜぇ!」

 しかしリリーは構うことなくパイルドライバーを発動させ、金属製の杭を打ち込んだ。


 リリーの胆力、闘争心、戦意、戦闘力、加護。その全てが相成った渾身の一撃が放たれる。

「おおおおおらぁ!『パイル・コンディール』!」

 圧縮されたエネルギーが杭を音速以上の速度で打ち出し、ラシュトンの鎧を身体に杭もろともめり込ませた。

 首なしの身体が吹き飛ばされ、奈落の井戸の外側に坂に沿って転げ落ちた。


「あっ、ずるいぞリリー!そいつは私の獲物だと約束しただろ!」

 約束を反古し、抜け駆けしたリリーをミコは咎める。

「す、すまねぇ、思わずかぶちかましちまった。けどよ、外に落ちてったから、あとは好きにやってくれよ。な」

「むぅぅ・・・ふん!ばか」


 上目使いで平謝りするリリーを憮然とした顔で袖にすると、ミコはラシュトンを追って奈落の井戸の縁を駆けおりていった。

「なにしてんねん。ミコからおもちゃ取り上げたら、怒るに決まってるやろ」

 一連のやり取りを見ていたシズクヴィオレッタが冷ややかに言い放った。

「だからぁ、悪かったって!」

 リリーは肩をすくめて小さくなった。


 ◆


「ぐぁあああ!なんだぁ、なにをした!?とんでもない威力だ!」

 蹴り飛ばされた後、地面に転がったラシュトンの顔のスーラが叫ぶ。

 身体と顔は感覚を共有しており、リリーに胸部に打ち込まれたパイルの痛みで叫びを上げていた。


「痛いな・・・だが、これならすぐ回復できる。早く身体をこっちに呼ばなければ・・・」

 ラシュトンは身体を呼び寄せた。そのために、得意とする空間操作を発動させ、生じた空間の裂け目に首なしの身体を投じさせる。

 顔の傍に空間の裂け目が現れ、そこから身体が飛び出し着地する。


 痛み原因を確認するために、スーラの目が身体を見た。

「な、なんだこれは・・・」

 ラシュトンは目を疑った。

 地獄の将が身につける鎧は当然、地獄の中でもとりわけ上質のものに限られる。そんな将の鎧が砕けていたのだ。場所は、感じた痛みのとおり、胸部だった。

 リリーのパイルドライバーの威力は、地獄の将の鎧すら粉微塵に砕くものだった。


 ラシュトンは再生の能力で胸の傷を癒した。

鎧は戻らないが身体は無傷となった。

 回復した身体が頭を拾い上げ、首上に据えると位置が固定された。

 正面をアンリンが務める。


「やれやれ、しばらく地獄にいた間に、ずいぶん強いヤツが増えたもんだね。まさかあんな女の子に蹴りとばされるなんて・・・ねぇ、キミすごいね」

 ラシュトンが笑顔を向けた先には、その身体を追いかけて井戸から降りてきたミコがいた。

 聖具の篭手、獣撫(ししなで)の爪で顎の下の気持ちいいところを掻く。


 顎を掻く手を止めると、ミコはラシュトンを見た。

 ミコの目は大きく見開かれていた。「すごい」と褒められたことを喜んでいるのだ。

「そうだろう!ミコは強いだろう!だけどあれはまだ本気じゃないぞ。ミコのすごいところをいっぱい見せてやるぞ!」

 元気いっぱいに宣言すると、ミコは両手を大きく広げ爪を展開した。左右の手に三本ずつ。黒く大きな出刃包丁を並べたような、見事な爪だった。


 小柄ながら堂々たる構えのミコに、ラシュトンの闘争本能が呼応した。

 身体の中心に火が放たれたように熱気が漲り、その足はミコに向かって踏み出していた。

「オイオイオイ、身体が勝手に動いてやがるぜ!オメェに反応してんだ!面白ぇ、こんなこと将相手でも滅多にねぇぞ!」

 激の相、ラッドが狂喜する。戦を得意とし、戦場を駆けた人間の頃を思い返していた。


「そんじゃあ、おっぱじめようぜぇ!」

 歩を進めながら宣言すると、ラッドはレイピアを出現させ、右手で握った。


「んにゃ?」

 態度の大きな男の割に扱う武器が繊細。ミコの頭の中に違和感と疑問が生じた。

 もちろん深く考えてのことではなく、直感的なものだった。

「こいつ、嘘ついてるな・・・」

 ミコは己の勘を信じた。


 歩みを進めつつも、ミコとラシュトンにはまだ二十メートル以上の距離がある。

 そんな飛び道具や魔法を主力とするような距離で、ラシュトンはレイピアを振り上げた。

「にゃ?なんだそれ・・・!」

 ラシュトンの不可解な行動を訝しんで警戒を強めた瞬間、ミコの右首筋に悪寒が走り、そしてなにかが触れた。


「ぎにゃっ!」

 首に触れたなにかに、ミコは瞬時に反応した。

 右から触れてきたものの動きに沿うように、高速の左側転をくり出し、そのなにかを回避した。

 回避しつつ、ミコは首に触れたものを捕捉するために目を凝らした。

 そこにあったのは、ミコの首のあった位置を横に通過していく大きな(まさかり)だった。

 横に一回転したミコが静かに着地する。右の首筋からは一筋の血が垂れていた。


「はっはぁ!それを避けるかぁ!てめぇマジで人間かぁ?」

 ミコの反応速度に、ラシュトンは狂喜する。

 ラシュトンは空間を操作し、ミコの後方から鉞を出現させて、その首を狙った。

 手にしていた不似合いなレイピアは、ミコの意識を自身に引きつけるためのものだったのだ。


「今の攻撃、ミコ全く気づけなかったぞ。あれがリシャクが言ってた空間を操作するってヤツだな」

「ああそっかぁ、リシャクに僕の技を聞いてたんだね。それにしても、死角からの攻撃を触れてから避けるなんてすごいね、キミ、地獄だったら将になれるよ」

 アンリンが賛辞を送る。


「そんなこと言われたって、ミコは嬉しくないぞ。それよりも・・・」

「ん?」

「さっきのヤツ、面白かったからもっとやれ」

「は?」

「さっきの首のやつ、ミコ死ぬかと思った。それくらいゾクッとした。あんなの久しぶりだ。だから、もっとあれで遊びたいんだ」


 命の危機に瀕しておきながら、更なる攻撃を要求するミコ。アンリンは思わず顔をひきつらせた。

「ハハ・・・下手すりゃ一発で死ぬのに、まだ寄越せっていうのかい?狂ってるねぇ。・・・訂正するよ、キミみたいな命知らずは地獄でもお断りだ。お望み通り、ズタズタにしてあげるよ!」


 アンリンが闘志を剥き出しにした。同時に、ミコの周りの空間に四つの裂け目が生じ、そこから槍の穂先が飛び出してきた。

 先刻、リシャクを瀕死に追い込んだ攻撃だった。


 空間からの不意を突いた攻撃。ラシュトンはこの攻撃をもって地獄の将、序列の三にまで上り詰めた。

 それだけ巧妙な攻撃であり、高い成功率を誇る。その自慢の一手が、「遊び」、児戯と評された。

 それによって、ラシュトンの相が切り替わる。ここからは、最も戦いを得意とするラッドが表を務める。


 空間を割いて現れた穂先は、ミコの太腿、左胸、頸椎、喉を狙う。

 穂先の出現から攻撃までの時間は一秒に満たない。ラシュトンの攻撃は、不意打ちでありながら狙う箇所も的確だった。


「にゃ!」

 と、一声鳴いて、ミコは上半身を固定し、腰から下だけを跳躍させた。

 次の瞬間には、太腿を狙った穂先を足の指でつまむように立っていた。

 しかも、それだけでミコの動きは終わらない。

 今度は下半身を固定させると、上半身を竜巻のように回転させた。

 聖具・獣撫の怒涛の一撃よって、左胸、頸椎、喉に迫っていた穂先が切断され宙を舞った。

 数回宙で円を描いた後、穂先は揃って地面に落ちた。

 足場の槍を蹴り飛ばすと、ミコも着地した。


「やるじゃねぇか、人様の攻撃足場に利用するなんてよ!」

「攻撃するときにいちいち宣言するな、バカ!来るってわかったらミコに当たるわけないだろう」

 ラシュトンの攻撃は正確だった。それ故に、ミコは攻撃の筋を読みきったのだ。

「言ってくれんじゃねぇか!その言葉後悔するなよ!肉片にして形わからねぇようにしてやるよ!」


「だからいちいち言うな!面白くないだろう!シャーーーーーッ!」

 ラシュトンは猛り、ミコは怒った。尻尾と爪がそそり立った。

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