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第198話 「蘇る蛇」(ストーリー)

 止まらないメイの悲鳴を尻目に、一角楼の焼け跡の各所では事後処理が行われていた。

 勢ぞろいした四凶は、回復の終わったシズクヴィオレッタを交え、これからの行動を話し合う。

 特務部隊は隊長であるドウマを除いた面子で、戦力の確認を行い、そこでハルルとマミカがムクのチートスキルをもってしても復活できない、真の死を迎えたと知る。

 各々が今の事態を再認識し、次への方針を定めようとしていた。


 ◆


「サイガ、少しいいか?」

 六姫聖の拷問ごっこを遠目に見届けていたサイガに、ドウマが声をかけた。その目に敵対の意識はなかった。

「なんだ?」

 敵意を感じさせない顔と口調に、サイガは受諾の態度を見せる。


「お前は、元の世界に帰りたいか?」

 ドウマが切り出した。

「さあな。今はこの世界で目的がある。それ次第だ」

「未練はないのか?」

「任務の途中ではあったが、おれがいなくても遂行できる。おれ一人に依存する、惰弱な連中じゃない」

「目の前のことに集中するのは変わらんか。なら、その目の前の問題、一緒に解決しないか?」

「なんだと、どういうことだ?」

 サイガはドウマの真意を図りかねた。

 

「今回の我らの一角楼の襲撃。それは、もとはといえば、王派と姫派の対立の延長から来るものだ」

 異界人特務部隊が属する異界人監理局は、局長オーリン・ハークの管理下にある。そして監理局は王の命のもとに設立された組織。そこからの指令は王の指令なのだ。


 しかし今回の任務で特務部隊に支給された超化翠の存在が、ドウマに疑問を抱かせた。

 使用することにより、精神と肉体を侵食される超化翠は、部下のマミカとハルルの二人を結果的に死に導いた。

 ドウマはそんな超化翠を与えたオーリンにどうしても疑問と怒りを抱かずにはいられなかったのだ。


「謀られたうえに、可愛い部下を二人もこんなかたちで亡くしては、納得がいかん。俺はオーリンから離反する。どうせ、このまま王都に戻ることもかなわないだろうからな」

「離反してどうするつもりだ?」

「敵の敵は味方。というわけではないが、結果としては姫派の勝利のために動くことになるな」


 現在オーリンは、謀反のために国内のあらゆる勢力に根回しを行っている。

 ドウマはその各勢力を討つというのだ。

「オーリンの息のかかった連中を討ち、弱体化を狙えば、最終的にはオーリンを追い詰められる。その暁には、首をもらう」

 その顔は決意を噛み締めていた。


「何かあてはあるのか?」

「噂程度だが、オーリンの息がかかっているといわれている連中がいる。まずはそこに探りを入れてみる」

「誰だ?」

「お前は知らんだろうが、レディム・ルーグストンという、特級冒険者が最有力だな」


「特級冒険者か。どんな人物だ?」

 特級冒険者という、この世界で初めて耳にする存在に、サイガは興味が湧いた。

「多数の私兵を抱える、北方の有力者だ。特級になるだけあって中央との繋がりも太く、オーリンとは懇意だ」


「ふ、むせ返りそうなほど、臭いな」

 中央との繋がりというレディムの紹介の一言に、サイガは思わず吹き出してしまった。

 まるで時代劇の悪代官のようだと連想してしまったのだ。それは忍ならではの発想だった。


 ◆


「それは聞き捨てならねぇなぁ」

「誰だ!?」

 何処かから声が聞こえ、サイガとドウマが瞬時に戦闘体勢に入った。


「・・・この声、もしや」

 声に、サイガは聞き覚えがあった。

 数日前、死闘を繰り広げた男の声。忘れもしない、セナを襲った陰湿な男。

「ゲイルか!?」

 思い当たる名を、サイガは叫び呼んだ。

 衆目が集まる。


 地面が揺れた。

 二度、三度、四度と、地下から叩くような大きな衝撃と共に振動する。

「下から来るぞ、気を付けろ!」

 サイガが警告を発すると同時に、弾けるように足元がめくれて跳ねた。

 すかさず、サイガとドウマは飛び退いて距離をとる。


 二人がいた場所に大穴が空いた。

 一拍おいて、またしても無数の触手が一斉に飛び出してきた。

 その中の数本が、地を這い、なにかを引き上げるような動きをすると、穴の中央から徐々に人影が姿を表した。

 ゲイルだった。


 ゲイルは笑っていた。数日前よりも、更に下卑た笑顔だ。

「貴様、なんだその姿は?」

 怨敵を前に、サイガは真っ先にその容姿を問う。

 無理もなかった。ゲイルの姿は異形と化していたのだ。


 先日の戦いの際、サイガの攻撃によって、ゲイルは四肢と片目を失っていたはずだった。

 だが今は、無くなったはずの両手両足は重鎧のような、ものものしい形状で復活しており、本来あった部位の数倍の大きさがある。

 そして色は、触手と同じ、くすんだ白だった。


「へへへ、見事なもんだろう?薄気味悪い人形みてぇな奴らを取り込んで作った手足よ。あいつら、ゾンビみてぇにたかってきやがって、俺を食おうとしやがったんだがな、逆に俺が噛みついて取り込んでやったのさ」

 饒舌にゲイルは語った。

 巨大で異形な手を何度も握り、開いて、その姿を見せつける。


「ムクのスキルで生まれてしまった劣化コピーとはいえ、一応生物だぞ。それを取り込んだだと?」

 信じがたいゲイルの行為を、ドウマはにわかに受け入れきれずにいた。


「あのゲイルという男は、下賎だが、邪悪さの純度や意思は強い。お前の言う劣化コピーとやらに人格がないのなら、調伏しを支配下におくのも納得できない話ではないな」

 ドウマに反し、サイガは冷静に現状を受け入れる反応を見せる。

「お前は納得できるのか?ただの人間が、食って他者を取り込むなど・・・」

「ドウマ、忘れたのか?」

「?」

「ここは異世界だぞ。これまでの常識に囚われるな。視野が狭いぞ先輩」

 皮肉を含みつつ、あっさりと言ってのけるサイガに、ドウマは思わず吹き出した。

「まさかお前に諭されるとはな」

 そう言うと、ドウマは構えた。忍法の構えだ。

 同じくサイガも構える。手には忍者刀が握られていた。


 ◆


「な、また敵か?」

 騒動に気付いたナルが振り向いた。ゲイルを視認すると、テンタに指示を出してメイの拘束を解かせる。

 半死の状態のメイが地面に転がった。

 「ぐぇ」と蛙のような声を漏らす。


 ◆


「う、嘘、あれってまさか、ハルル?」

 ゲイルの異形の右腕を目にした瞬間、ペティは衝撃を受け、両手で口を覆った。

 その巨大な右腕には、女の顔が浮かんでいた。それは、ペティの言葉通りハルルのものだった。

 ゲイルが取り込んだのは、ハルルとマミカの劣化コピーの最初の一体目で、その分その二体には面影が色濃く出ていたのだ。


 仲間の悲惨な末路を目の当たりにして、ペティは正気を失った。

 剣を手に取ると「殺してやる!」と怒号を発しながらゲイルに向かって駆け出した。


 ◆


「なんだぁ、あの女?」

 鬼気迫るペティにゲイルが目を向ける。

「死ねぇえええ!」

 ペティは剣を振りかぶって斬りかかった。怒りでシズクヴィオレッタの教えを失念していた。


「待て、ペティ!」

 ドウマが声を張り上げた。

 しかしペティは止まらない。

「バカが」

 ゲイルが吐き捨てた。直後、地中から槍のように尖った触手が飛び出し、ペティの腹部を貫いた。

「ぐぁあ!」


 飛び出した触手によってペティは串刺しにされ、宙に掲げるように持ち上げられた。

 衝撃で剣から手を放したペティは、触手を掴み必死に抵抗する。

「あが、ぐ・・・ああああああ」

 苦しみに悶えるペティが、低くうめく。


「おいおいおい、なめてくれてんじゃねぇぞ。こちとらよぉ、火が消えるまで一時間以上あったんだ、黙って待ってるわけねぇだろ。しっかり張り巡らせてあるぜ、触手の群れをな!」

 スナップ。ゲイルが指を鳴らすと、地面を突き破り、戦士達を囲むように再び触手が現れた。

 数は五。色は真紅。巨人の腕のように太い。中央部には人の顔。その顔は先日サイガによって手足を斬りおとされたゲイルの部下の冒険者達だった。

「こいつは、俺の部下を取り込んで作った触手だ。そいつが五つ。サイガ、これから何が起こるかわかるよなぁ!全員まとめて地獄に送ってやるぜ『五芒血界陣』!」


 部下達を人柱へと捧げて、ゲイルは外法の禁術を発動させた。

 全ての戦士達を強い脱力感が襲う。

 そしてそれは、先日のものとは比べ物にならないほどの効力だった。

 ゲイルは高笑いすると、右手を剣の形へと変化させた。

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