第01話 「光」(ストーリー)
ペースは遅いですが、一生懸命やっていきますので目を通していただけたら幸いです。
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バトル描写に力を入れて書いているので、バトルだけでも読んでいって頂けると嬉しいです。
各話毎に()でストーリー系バトル系の話かで表記してありますので、見てってやってください。
「ど、どこだ、ここは?」
木々の葉を潜り抜け、わずかに陽光の差し込む森の中で男は疑問を口にした。突然の光景に男は困惑していたのだ。
男の記憶と体は、ほんの数秒前まで全く別の世界にあった。
舗装された道路、立ち並ぶビル、昼夜問わず動き続ける人間。穏やかな自然の風景とは真逆の、人工物に埋め尽くされた大都会のただ中で、任務についていたのだ。
男の名は『サイガ』。令和の世を生きる、現代の忍だ。
忍は古代日本の遺物ではない。暗殺、情報収集、内偵といった任務のそれは、日本独特の形態をとったスパイなのだ。それゆえに、幕府が消え政府となった日本の裏で時代に合わせた姿となって暗躍を続けている。
そして、古来より脈々と受け継がれてきた知識と技術は、現代において、最新の科学情報や技術を取り入れ進歩をし、その成果を示している。
サイガはそんな現代忍者の世界において、当代一の実力者と言われるほどの武芸者なのだ。
サイガは重要任務の真っ最中だった。国家転覆の容疑のある政治家と、それと繋がりの疑われる人物名簿および会合の決定的証拠となる映像データ。それを入手し依頼主へと届けるべく、東京の夜のビル街の屋上を、身に付けた忍術で跳び移りながら疾走していた。
そしてそのサイガを追う影が一つ。転覆を狙う勢力側の忍だ。名を『ドウマ』。サイガに並ぶと言われる実力者だ。
当代一の実力者と、それに並ぶと言われる忍が揃う。その現状がこの任務の重要性を物語っていた。
「サイガ!逃げても無駄だ!その名簿とお前の命、一緒にいただいてやるぞ!」
疾走するサイガの足に向けて、後方からドウマが金属製の小さな球を投じた。球にはひもが通してあり、足に絡み付いて自由を奪うのが目的の忍具だ。しかし、サイガはそれを見もせずにかわす。
「そんなものが通じるものか!はっ!」
疾走の最中、サイガが急に止まり、身体を地面に屈ませた。突然の行動に、ドウマは制止がきかずサイガを避けるように前方に飛び上がる。宙で身を翻し、着地するドウマ。二人が対峙する。
「俺から逃げられんと観念したかサイガ。さあ、そいつを渡せ」
ドウマが手を差し出す。
「たしかに、貴様の足を振りきるのは不可能のようだ。ならば・・・ここで始末をつける!」
左足を引いて半身となり、軽く腰を落としてサイガが刀を逆手に構えた。夜の闇に黒の忍装束が溶け込み、白銀の刃と眼光だけが光る。
「面白い。ならば、どっちの実力が上か、思い知らせてやるぞ!」
対峙した二人の姿が消えた。と、同時に複数箇所で火花が散った。互いの刃を刃と小手で防ぐ攻防が、一瞬にして数度行われたのだ。
互いに狙うのは急所に的を絞った一撃必殺。忍特有の直刀で突き、爪先に仕込んだ刃で死角からの蹴りが動脈を狙う。新旧様々な武器、暗器を用いて互いの命を削り会うのだ。
何十合の後、火花が移動を始めた。サイガが刃を受けながら後退を始めたのだ。
何十メートルかの追走劇の間に、ドウマはサイガを追うように刃を走らせた。同時に手裏剣などの投擲武器を放つ。サイガは襲い来る殺意の飛来物を、後ろ走りのまま手、足、刃、小手、具足で叩き落とした。
追撃の刃と投擲武器を全てさばききると、サイガは攻勢に転じた。しかしそれは直接的な攻撃ではなかった。後退する一歩の歩幅をわずかにせばめ、歩調を乱した。それがドウマの勘を一瞬だけ狂わせた。
距離感を誤ったドウマが、不必要にサイガとの距離をつめる。それを迎えるようにサイガが刀を構え、切っ先を喉に向けて前に踏み込む。
「しま・・・」
「終わりだ、ドウマ」
しかし、サイガの狙いは果たされることはなかった。
勝利の確信と不覚の念が重なりあおうとしたその刹那、突然、地面から謎の光と衝撃が発生し、二人の身体を包み込んだ。
不可解な現象に、二人の意識は任務から離れた。そして目も目前の敵よりも発光する地面に向けられる。
「なんだこれは?ドウマ、お前の仕業か」
「こんな大仕掛けなんぞ俺は使わん!」
「では、これは一体なんだ?」
「知ったことか!ええい、こんなものに構ってられん、データを寄越せ!」
戸惑いを振りきり、ドウマがサイガに手を伸ばした。が、一瞬速くサイガが動いていた。データを収めたUSBをクナイにくくりつけると、光の外の壁に投じ、深く突き刺した。
「サイガだ!任務の遂行が困難なため、情報を託す。場所はぎん…」
通信機に一息で伝言をはっしようとしたが、言い終わる前に地面からの光が一層強さを増すと、二人の姿を包み込み、そにの中へと二人は消えた。
あとに残ったのは夜の静寂だけだった。
ここまでがサイガの最新の記憶だ。サイガは夜のビル街から昼間の森へと、謎の光によって瞬時に身を移していたのだ。理解が追い付かないのは当然だった。
イメージイラスト(AI)
サイガ
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