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第167話 「絶望の緑の光。それは超化の輝き」(バトル)

 異界人特務部隊隊長ドウマに託された『超化翠』の使用によって、超化状態に入った『魔物召喚師サモンクイン』のマミカ。

 超化翠から迸った緑の光を全身に纏わせたその姿は、あきらかに先ほどまでは一線を画していた。

 メイのスレイブブレイズの自爆により失った右半身を、その身を食することで回復を行う『サクリファイスベビー』を摂取して再生させたマミカは、召喚した衣服に化ける魔物『ユメタンモノモドキ』に一糸纏わぬ体を覆わせ、制服を再現させた。

「やってくれんじゃん、オバさん!マジで死ぬかと思ったわよ!この超化したスキルで、ぜったいぶっ殺してやるんだから!」

 怒りとともに、マミカが纏う緑の光が一層強くなった。


「なによあれ・・・超化って言ってるけど、まさかパワーアップしたってこと?」

「あの様子を見る限り、そう考えて間違いないだろうな」

「厄介なことね。ただでさえ強力な魔物を気軽に召喚できてたのが、さらに強化されたわけでしょ?どうなるのか想像もつかないんだけど」

 得体の知れない力を身につけたマミカに、メイとジョンブルジョンは警戒心の壁を築く。


 歴戦の戦士、六姫聖のメイは敵の動きを座して待たない。

 メイはスナップで指を鳴らすと、小爆発を連続で起こしてジョンブルジョンの土の拘束を解いた。

 解放されたジョンブルジョンが立ち上がり、体中の土を払う。

「ふぅ、助かったぞ、メイ・カルナック。贅沢を言うともう少し早く助けて欲しかったがな」

「うっさい。私一人だと、どうなるか解らないから、念のために助けただけよ。冗談言う余裕があるなら構えて!」


 メイには余裕がなかった。

 形勢を五分程度に引き戻しはしたものの、一度は撃墜され、擬態を使わねばならないほどに追い込まれたのだ。

 一瞬の油断が命に関わることは、身をもって体験していた。

「す、すまん。だがメイ・カルナックよ、せっかく助けてもらって悪いが、今の私は素材を使い果たして武器を構築することがかなわぬため、戦力として期待に沿えることは出来んぞ」

 そう言うと、ジョンブルジョンはミサイルとして消費した左腕を見せた。そこには、手首から先がない左の義手があった。

「は?ちょっと、それどういうこと?武器が作れないあんたなんて、何の価値もないじゃない!」

「ぶ、無礼な!さすがに何の価値もないことはないぞ!まだ右腕が残っている。見損なうな!」

 メイのあまり貶しぶりに、ジョンブルジョンは激昂して、右手を蛇腹剣にして見せた。


「あんたたちぃ、よそ見してんじゃあないわよぉ!油断してる暇なんてないんだからねぇぇぇ!千手タイタン、ヘルクラウド!やっちゃえ!潰せ!潰せ!潰せ!」

 超化で力が漲るマミカは精神が侵されはじめていた。その言葉に魔物をペットのように愛でていた頃の余裕はなく、暴君のような振る舞いとなっていた。

 マミカの命を受けた千手タイタンが、今だ鮮血が滴り続ける腕を押さえながらメイと、ジョンブルジョンへと体を向けた。


「・・・あのさぁ、私、別に油断なんかしてないわよ」

「はぁ?どういう意味よ?」

「あんたたちへの対策は既に終わってるってこと。私がスレイブであんた達を釣ってる間に、私が何もしなかったって思う?だとしたら、あんたの方こそ油断してんじゃないの?」

「え・・・」

「周り、見てみなさい」

「周り?・・・え!?な、なによこれ!?」


 メイに促され、意識を周囲に向けたマミカ。そしてそこで見たものに言葉を失った。

 地上、空中と辺り一帯全てを埋め尽くすように、メイの炎によって生み出された分身、スレイブブレイズが取り囲んでいたのだ。

「なによ、この数?百、二百・・・?」

「五百よ」

「ご、五百・・・?」

「そうよ。私に時間を与えたら、これだけの準備が可能なの!・・・スレイブ、いけ!」

 

 メイの号令に従い、全てのスレイブブレイズが千手タイタンに取り付いた。その姿は大型の獲物に集団で群がる軍隊蟻のようだった。

 纏いつくスレイブを振り払おうと、千手タイタンが暴れもがく。

「無駄無駄。外れやしないわよ。さーて、それじゃあ、一発だけでも腕を吹き飛ばすスレイブの爆発、脅威の五百連発、全身で味わいなさい!」

 メイが右の掌を天にかざすと、それに呼応して千手タイタンに取り付いた五百のスレイブが先刻のスレイブ同様、発光し膨張した。

「『スレイブブレイズ・チェインエクスプロージョン』!!!!」

 勢い良く開いた掌を閉じた。


 光。

 爆発。

 連鎖、大爆発。

 爆風。

 衝撃。

 振動。

 煙。

 静寂。


 千手タイタンは消滅した。

 一瞬で神話級の魔物を消し去るほどの爆発は、その余波でヘルクラウドも消し去っていた。

 体を微細な霧状に変化させることが出来る雲の魔物も、その反応速度を上回る規模と威力の爆発は、回避行動の余裕を与える暇もなく焼き尽くしていた。


「な、なんという威力だ!?神話級の魔物を跡形もなくなんて・・・私の助力は必要ないではないか・・・」

「まだよ」

「なに?」

「今の二体は、あの娘が超化する前に呼び出した魔物。警戒しなきゃいけないのはここからよ」

「・・・そうだな、すまん!」

 チェインエクスプロージョンの規模に呆然とするジョンブルジョン。メイの警告はそんなジョンブルジョンの気を引き締めた。


 爆発の煙が収まった。

 煙が消え、そこには一つの塊があった。闇騎士キュロがマミカを庇い覆いかぶさっていたのだ。

 キュロは背面を全てえぐられていた。

 魔法と呪具を練りこむことによって鍛造された高い防御性能をほこる鎧を纏うキュロだったが、メイの巻き起こした爆発はその耐魔の力を難なく屠り去ったのだ。


「ああもう、重いじゃない。じゃまよ!どきなさい!」

 命を賭してその主を守った従者の鑑のような魔物の亡骸を、マミカはぞんざいに扱い蹴り飛ばした。鎧の擦れる音がむなしく響く。

「なんなのよあんた!さっきまで死にかけだったくせに、このふざけた魔力、マジで化け物じゃない!ああああもう、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ!この国がなくなるぐらいのヤツ呼び出して、ぶち殺してやるぅうううううう!」

 超化の影響のより、更に精神に以上をきたすマミカ。

 その様子に、メイとジョンブルジョンは恐怖と警戒心をあおられる。


「ジョンブルジョン、何か呼び出される前に、あいつを始末するわ!」

「う、うむ。では私が剣で首を刎ねる。私の加速なら、貴様の魔法より速度は出る。メイ・カルナック、援護を頼むぞ!」

 義足に車輪が備わり、ジョンブルジョンが前進した。

 通称『ゴキブリ』の機械の足が実現する速度は時速約二百キロ。瞬く間にジョンブルジョンはマミカに近づく。


「いけっ、プロミネンスソーサー!ついでに、ファイアーボール!」

 メイの背後から六枚の炎の円盤が飛び出した。

 左右に三枚ずつ、マミカを挟むように飛翔する。


 前方のジョンブルジョン、左右の炎の円盤。更に後方に追撃の火炎球。 

 未知の脅威を阻止するため、緑の光に包まれた少女に剣と炎が迫り、その命を狙う。


「もらった!覚悟!」

 ジョンブルジョンの剣がマミカの喉に差し掛かった。

「甘い!来い、『グラボイゾン』!」

 マミカの声に応えて、更なる上級の魔物『腐地魔神グラボイゾン』が地中から、鯨の捕食のごとき動作で飛び出してきた。

 捕食の動作に見合うサイズの巨体のグラボイゾンの皮膚は、ジョンブルジョンの剣を弾いた。それは金属のような硬さではなく、分厚い脂肪の鈍い壁だった。

 その壁はメイの炎魔法も容易く無効化し、マミカを守った。


「ち、地中から鯨だと!?・・・ぐわっ!」

 グラボイゾン出現によって発生した土砂の高波により、ジョンブルジョンはまたしても土に呑まれた。


 『腐地魔神グラボイゾン』

 地中を泳ぐ漆黒の巨体を誇る地鯨ちくじら

 脂肪の皮膚に包まれた体と対照的に、顔は硬質の鳥の嘴のような形状になっており、その顔をドリルのように回転させて地中を掘り進む。

 神話級以上の、神と同格の存在である。

 マミカは超化することにより、神を召喚する力を手にしたのだ。



イメージイラスト(AI)※あくまでイメージなので、他のイラストと差異があったりしますがご容赦ください。


日輪を背負う メイ・カルナック

挿絵(By みてみん)


超化状態のマミカ

挿絵(By みてみん)

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