8本目
視点 主人公に戻ります、
◇◇◇
毛生え薬をめぐるオレたちの争いは、苛烈を極めた。
オレの斧が、大地をえぐり、謎の仮面女の氷魔法が、岩を砕く。
断続的な爆発音と、光の明滅で目も耳も痛くてたまらない。覆面をかぶっていなかったら耐えられないレベルだった。
「いい加減、そいつを返しやがれ!」
「絶対に嫌っ!」
女はオレに向かって杖を振り下ろした。
氷のツブテがまっすぐにオレに向かって飛んできて、体力を容赦なく削りとる。
だが、オレのパイ姉への気持ちは、こんなもんじゃ揺るがねえ!
多少の被ダメージは、ものともせず、女に向かって突進!
「うそ!?この状況で、普通突っ込んでくるの!?」
女が、ひるんだ。
魔法障壁は、一撃ごとの使い捨てだ!
そして魔術師相手に、魔力を消費させたということは、体力を削ったことと同義!
一度でダメなら、何発でも打ち込んでやればいい!
このまま押し切る!
「なんて体力!」
女が叫び、魔法を連打してくる!
向こうもこちらを回復させずに体力を削りきる作戦だ!
「うおおおおおお!」
それでも諦めるわけにはいかない!
オレは変わる!
パイ姉のとなりに立つのにふさわしい男に!
今のままでは、前に進めないのだから!
オレは女に向かって大きくジャンプしながら、その一挙一頭速を見て考える。
この戦いは、魔力と体力の殴り合いだ!
やつの魔力が尽きるのが先か、それともオレの体力が尽きるのが先か、どつちが先かのチキンレース!
勝てば結婚、負けたら、詰みの人生最大イベント!
「絶対負けるか!」
「絶対渡さない!」
毛生え薬の材料は、まるでドッジボールのようにオレたちの手の間をさまよっている。
「オレはパイ姉と結婚する!」
「私はクリ坊と添い遂げる!」
「「へあーっ!」」
ついに、オレの一撃がやつの頭を捉え、やつの仮面が砕けた!
同時に、俺の覆面も魔法で吹き飛ばされる。
命がけの戦いを繰り広げた相手!
その仮面の下から現れたのはよく知っている顔で、そしてそれは向こうも同じだった。
「えっ、クリ坊……?」
「パイ姉……な、なんで?」
次で完結!