3本目
◇◇◇
ツルツル高地には竜が棲んでいる。土地のヒトはそう信じて疑わない。
その竜の名は「キューティクル」。
その名の通り、全身毛だらけのドラゴンだ。
正式なものとして残っている最初の記録は、聖歴6年、勇者至上思想の初期の「むらびと・惨殺伝」である。
――とある朝、巨大な竜が高原の川べりから姿を現し、岸へ上陸、尾を振って樫の大木を何本もなぎ倒したという。
これを見た血気盛んな村人たち9人が、怪獣退治とばかりに、竜に戦いを挑んだ。
だが、次の瞬間、恐ろしいことに怪獣の全身の毛が針のように伸び、仲間8人が体を貫かれて即死してしまう。
だが1人だけは、勇敢にも斧を振り上げて、竜の頭に一撃を与え、頭の毛を切り取ったのだと言う。
竜は大いに怒り、暴れまわって村人たちを丸呑みにし村を壊滅させたが、切り取られた毛はのちに貴族の手に渡り、これを煎じて毛を生やしたいところに塗ると、なんと!
「不毛の大地」が、たちまち緑豊かな大森林になったらしい……
「と、伝えられているんだな、これが」
親友の言葉に、ゴクリとオレの喉がなる。
「ドラゴンは大抵、ウロコに覆われてツルツルの体だが、ソイツは寒冷地に住んでいるからか、寒さから身を守るための長い体毛で覆われている」
「伝承にもあったように、中でも特別な、頭の上に生えた一本の太い毛には寒冷地を生き抜くための、毛髪エナジーが大量に含まれているらしい、」
こいつが、おそらくは、お前の求めるブツだと、コップをテーブルに置く、男爵家の三男坊。
そして、副菜のサラダをひとつまみパクつく。
「しかし、キューティクル・ドラゴンの毛はすべての生き物の毛の中で最も強靭であるがゆえ、手に入れることは大変困難になるだろう、」
「その毛髪はあらゆる刃を一切通さず、さらに何千万もある毛の一本一本が、自分の首のように自在に動いて人間を絞め殺すのだという、」
数百万の首を持つヒュドラだと思って立ち向かうべきだと、ものの本には書かれていたのだ。
「退治には。ヘラクレスを、1ダース以上揃えなければならない」
「…………」
キューティクルとは可愛い感じの名前だが、聞けば聞くほど、恐ろしい相手だ。
「そうだろうそうだろう、猛獣退治なんて、一般人のやることじゃないんだよ」
そういうのは、勇者とかに任せておきなさいと、臆病ものは締めくくった。
「…………」
しかし、命の危険があるとの親友の言葉を聞いて、逆に!
俺は全身が湧きたちハッスルしてきた。
「むしろ上等! ここまで聞いたら、やるしかないだろ!」
毛髪クエストだ!
俺は鼻息荒く立ち上がる。
「オイ、これを聞いたらお前が諦めると思って話をしたんだぞ」
冒険の前に、もう一度、彼女とよく話し合えと、男爵家の三男坊。
「竜を倒し、財宝を手に入れ! 女と結婚するのは男の本懐だ!」
オレは意気揚々と、愛用の斧を掴んで酒場を出る。
扉の先は光で満ち溢れている!
「……お前やっぱり脳みそハゲてるよ!」
今回は、一部、昔、趣味で書いてた小説からのコピペ箇所があります、
6000pvくらいしか、いかなかったやつなのでもし知ってる人がいたら、コメント残してくれると、作者が喜びます、