1本目
病後リハビリ3本目の作品です。
総数1万字ほどで、すでに完成済。
1日1回、夜に更新予定です。評価コメント、ブクマご自由にどうぞ。
よろしくお願いしますー
ちな、前半はギャグ、後半はヒューマンドラマ。
◇◇◇
「ごめんなさいっ!」
その言葉に、頭の中が真っ白になる。
オレの目の前では、金髪が小刻みに震えていた。
そして、いつも、オレに、微笑みかけてくれる切れ長の目が伏せられていた。
形の良い小さな耳は真っ赤になり、汗がにじんでいる。
日頃、太陽のように美しいその顔も、今は白い指に隠されて表情が見えない。
オレは手を伸ばして、先ほどのプロポーズの答えをもう一度、幼馴染に問おうとした。
「パイ姉、オレ、なんで、なんで、」
女性としては少し高い肩が跳ねた。
「ごめんなさい〰〰〰〰っ」
叩きつけるように叫び、黄色のワンピースを翻しながら、3つ年上の幼馴染は去っていってしまった。
それを見て、オレの頭の中でぐるぐると、これまで彼女と一緒に過ごした時間が駆けぬけていく。
「クリ坊! ご飯できたよー」
「こら! イタズラしちゃ、メっ!だよ」
「おねーさんに任せなさいっ!」
「17歳のお誕生日おめでとー、これでもうクリ坊も、もう立派な大人だね!」
明るい髪に、透き通る眼をした、背の高い3つ年上の幼馴染。
そんなパイ姉は、生まれた時からオレの家のお隣さんで、いつも一緒に遊び、ご飯を食べて、お風呂に入り、同じベッドで寝て、仲良く過ごしてきた。
パイ姉は、昔からずーっと優しくて、魔法も勉強も得意で!
一方、体力と攻撃力しか取り柄のないオレは、モンスター退治のときには、いつも回復魔法の世話になってばかりいたものだ。
明るくて気立てもよくて、細かいことにもよく気づいて、作る料理はみんなおいしい。
そんな誰もがうらやむ幼なじみにオレは、いつからか夢中になり、そしてプロポーズして今。
オレは女神にフラれていた。
目の前は真っ白なのに、世界は真っ暗に思えた。
膝から崩れて、大地を握りしめ、そして、雑草をぶちぶち引き抜く!
「自分にはあると信じていた!」
「パイ姉に愛されるための資格があると!」
「だが、なかった!」
毛がなくても大丈夫、人間は見た目じゃないという誰かの甘言を信じ、現実の頭の光から逃げて目をそらし、知らず、聞かず! そのはてに終局だ!
全身の筋肉が縮こまって、プルプル震える。
ボロ雑巾のように絞られたかたちの口からは、絶望の言葉しか出てこなかった。
「あぁ、なんでだ、なんでなんだパイ姉……」
さわやかな夏の朝の太陽が、オレの頭をキラリと照らしていた。
土の上では、無慈悲に摘まれた雑草の束が、フサフサと風に揺れていた。
こうしてオレの17歳の誕生日パーティー、そしてその同時のプロポーズは、女神の遁走で幕を閉じ、自分史的・大失敗に終わったのだ。
明日もお楽しみにー