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元英雄の男装従者  作者: 花咲凪海
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02 現状把握




「申し訳ございません!」



 私達は今、非常に困惑している。


 私達はあの後、さっきまでいた場所からすぐ近くにある会議室のようなところに移動し、一息ついたところだった。


 ここにいるのはクラスメイトと、対面する形で座っている先程のローブの男だけだ。


 不安や不信感を抱きながら、今の状況に冷静に対処しようとしているクラスメイトは流石というものだろう。



 「おい、ここは何処なんだ!」


 …もちろん例外もいる。



 それはさておき、皆がとりあえず一息ついたところでの第一声が、ローブの男の先程の言葉だ。


 そりゃあ困惑するだろう。唐突に謝罪なんてされたんだから。


 そこに、1人の声が聞こえてきた。


 「どういうことなんですか?取り敢えず、謝罪より先に今の状況を説明してください。」


 ——お、この声は会長じゃないですか。


 クラスのまとめ役でもある会長は、こういう時に一番頼りになる人物だ。ムードメーカーとは違う、クラスをまとめてくれる人。

 この人なら、交渉を任せてもいいだろう。そう言った信頼がクラスメイトとの間に築かれていた。




 ✳︎ ✳︎ ✳︎




 そんな会長である榊原桜は非常に冷静な表情を装いながらも、内心はとても荒れていた。


 一体何事なのか。この面倒事を早急に対処しなければ。


 あぁぁぁ、と叫びたい衝動にかられたが、クラスの代表という立場が彼女の体面を保たせていた。


 ——取り敢えず、この状況をなんとかしないと。


 やっとのことで平常心を取り戻し、ローブの男の話を聞いた。


 「皆様には少々迷惑をお掛けします。説明はすぐにしますので少々時間をください。

 …ここはアレンシアの研究所です。」


 ——ん?この人は何を言っているんだ?


 突如私の頭に浮かんだ1つの疑問をよそに、ローブの男は少し高圧な態度で話し続ける。


 「グランドールの英雄は何処でしょう?この国にいることは分かっていたのです。わざわざと此処まで呼び寄せたんですから、諦めて出てきてください。」


 「ちょっと待ってください。それは誰ですか?私達は高校生ですよ。そもそも、アレンシアとかグランドールなんて、そんな地名は存在しませんよ。」


 ローブの男は、「いや、そんなことありえない。グランドールの英雄を知らない人間がいるはずがないのだ。」と言い返そうと口を開いたが、その言葉が発せられることはなかった。


 それは、榊原が意図せずに使った「高校生」という言葉。そんな言葉はこの世界で聞いた事がない。そして、誰もが知っているはずの「グランドールの英雄」という言葉に、殆どがが首をかしげたからだ。


 ローブの男はそこで初めて、目の前にいる人間とこの世界の人間との違和感を覚えた。


 顔の作りが少し違く、彫りが浅い。また、男子と女子で違うとはいえ、全員が同じ服を着ている。それも上等なものだ。あまり見慣れたものではない。


 彼の思考回路に1つの可能性が浮かび上がった。


 「…もしや、あなた方はこの世界の人間ではない?」



 いや、そんなはずない。思わず言い返そうとしたが、反論できるほどの情報を持っていない。それに、この男の言葉が嘘だとも思えない。


 時間をかけてこの言葉を理解した時、クラスメイトのと殆どが絶句した。国を越えるどころか、世界をも超えてきてしまったのだから。


 非常に現実ではありえない出来事なのに、脳は案外正常に働いていた。要するにこれは異世界召喚というものなのだろう。


 まさかこんなことになろうとは。誰が想像しただろう。

 想定外も甚だしいというのに、想像以上に今の状況を冷静に受け止めている自分自身の方が逆に恐ろしいくらいだ。


 クラスメイトの反応に、ローブの男は少し納得したような顔をした。そして、高圧な態度だったのが嘘のように丁寧に今の状況について話し出した。


 「まず、自己紹介からしましょう。私はこの研究所の所長のランスです。

 先程も話した通り、ここはアレンシアという国です。あなた方からしたら異世界の国でしょう。

 今この国は諸事情により混乱に陥っています。そこでグランドールの英雄という人物の助けを借りようとしましたが、彼は来てくれませんでした。その為、召喚という手段を使い彼に来てもらおうと考えたのですが、結果がこれです。

 関係のない人を巻き込んでしまいましたことに、謝罪申し上げます。」


 ローブの男は頭を下げた。


 「…頭を上げてください。」


 榊原の声に、ランスは少し安堵の表情を浮かべたが、続く声にその表情はすぐに引っ込んだ。


 「たとえ事故だったとしても、私達はあなた方を完全に許すことはしないでしょう。一時的だとしても、これは誘拐と変わらないのですから。

 それに、今はもっと別の話す事があるはずです。違いますか?」


 全くもってその通りだった。ぐうの音も出ない。


 「ええ。そうですね」


 ランスは腹を括った。




更新頻度はゆっくりです。


読んでいただきありがとうございます。

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