第6章 残酷な出来事
*******************************
誰かのために生きること。それが私の生き甲斐でもあった。
誰かのために、自分がどうなってもいいと思っていた。
だけど本当に大切ならば、自分を犠牲にするのではない。
自分がいなくなって傷つく人のことも考えるべきだ。
この世から消えるのは簡単。
たくさんの感情で溢れたこの世界で、生きていくことの方がよっぽど大変だ。
でも生きていなきゃ、幸せも美しさや尊さも感じることができない。
*******************************
オリビアがOliveに加入してから数か月がたった。
3人は継続してSNSを通じて日本語・英語・フランス語・アラビア語の4言語で発信する。悲惨な出来後がこれから実現することを訴えた。
同じ予知夢をみた人間が世界にもいるのではないか。
仲間がいることをただただ信じた。
夏が終わり肌寒い季節が到来した10月だ。
ある事件が世間に衝撃を与えた。
桂花とオリビアが見た悲惨な事件の一つが実現したのだ。
平日の昼間、学校でお昼休みの時間だった。
「みーちゃん。この後の数学の宿題やった?」お弁当をひろげながら5限目の話をしていた。
「もちろん!もしかして、桂花やってきてないの?」ニヤニヤしながら聞いてくる。
私が数学が大の苦手なことを知っている翠は、数学のノートをちらつかせてきた。
「みー殿!ぜひともお見せいただけないでしょうか。」頭を机にくっつけて手を合わせた。
「しょうがないのう。」翠はノートを桂花に渡した。
ビービービービービービー!!!!!!
地震速報のときのように、急に全員の携帯が鳴ったのだ。
「何事?!」「急になに?!」「怖いだけど」「地震?!」
慌てる生徒たち。廊下にいた生徒たちは教室に急いで戻り、椅子の下に隠れた。
携帯からの音はしばらく続いた。
すると音はなり終わり、ある速報ニュースが流れた。
『半年前に開発され動物の体内に埋め込んだチップの副作用で、動物が狂暴化し市内に出没している。すでに20人が死亡し、250人が負傷した。』
『室内に緊急避難してください』
避難勧告の速報だった。
教師が急いでグランドにいる生徒を教室に戻し、校内放送が流れた。
「生徒の皆さん。落ち着いて聞いてください。
速報が流れた通り、外は危険な状況です。生徒は直ちに自分の教室に戻ってください、これより、昇降口や体育館など外から侵入できないよう鍵をかけます。
繰り返します。繰り返します….」
焦った校長先生の声が聞こえた。
教室では、不安な声がひろがった。
自分の携帯でニュースをみて、やばくない?うちの家族大丈夫かな?
電話をしようとしても、回線が混んでてどこも通じない。
パニックになる人もいた。
オリーブが使っているSNSは、動いており特進クラスの蒼からメッセージがとどいた。
「大丈夫か?これも予知夢?」
「大丈夫。みんなパニック状態よね。」
「そう。」「動物たちが可哀想…」
あれから2時間は続いた。
その間には政府は緊急会見を行い、現状と対策を説明した。
自衛隊と警察官による駆除がはじまり、逃げた動物たちが捕まるまで、その場での待機勧告がでた。
担任の教師たちは職員室で緊急会議を開いている。
時間がたつにつれ教室の生徒も落ち着きを戻す生徒もいれば、
家族と連絡がいまだとれず嘆く生徒。
漫画の世界だとふざけて信じない生徒もいた。
同じクラスである、目立つ生徒が声を上げた。
「もうやってらねー。都心の学校に動物なんて来るわけないだろう」
そういい鞄を肩にかけて、教室を出た。
「やめたほうがいいよ!」大きな声でいうクラスメイトの言葉を無視。
急いで職員室に向かい状況説明をしようとしたが、すでに手遅れで
彼は内側にかかった昇降口の鍵をあけ、校門に向かって歩いていた。
窓の外から彼が外に出ていく姿をみていると、黒い何かが彼を襲った。
ほんの一瞬だった。
ぎゃああああああああああああああ
がおおおおおおおおおおおお
彼の悲鳴と黒い物体の声が鳴り響いた。
そのあと3発の銃撃音が鳴り響いた。
すぐ近くにいた警察官が黒い物体を銃撃したようだ。
クラスメイトの悲鳴に動物の声、そしてはじめて聞く銃撃音に恐怖が襲った。
黒い物体は豹だったようで、血まみれの姿がみえた。
クラスメイトは腕と首をちぎられ、救急車で運ばれた。
政府による緊急避難解除は、1日かかった。
実験されていた50頭は、無事駆除されたとニュースがあった。
被害は思ったよりひどく、80人が死亡し30人が重症、110人が負傷したとのことだ。
実験室にいた人間たちは、1人残らず動物たちに殺された。
地獄のような日だった。
次の日の昼頃、学校に両親が迎えにきてもらう形で解散となった。
桂花と蒼のお母さんが迎えにきてくれて、桂花と蒼は帰った。
どちらの両親ともに職場で無事避難しており、怪我もなかった。
「ほんと世の中何が起こるか分からないわね~怖いわ~」
「2人とも怖かったでしょ」
ママ同士で話している一歩後ろで、桂花と蒼の2人は並んで歩いた。
「まだ助長にすぎないよ…」小声で桂花はいう。
「学校はしばらく休みだから、策を練る時間はあるさ。」
動物たちには一切罪はない。
ある一部の人間の欲望により、チップを入れられ人を殺した。
殺された動物たちが可哀想で仕方がない。
なにもできない自分悔しくて拳を握りしめた。
その後いったんそれぞれの家に戻り、今日は心の整理と休憩をすること。
そして次の日、2人はオリビアの無事を確認し、オンラインで会議をすることになった。