漆編:黒き龍、光を知りて。
カウントダウン2?
漆編:黒き龍、光を知りて。
「あいたたた………」
漆は静かに目を開ける。
「うわっ!?」
そこには顔を青ざめた輝が倒れていた。
「え?な、なんで輝が!?」
「僕が呼んだんだよ、君をえさにして」
「!?」
すばやく身を起こし、輝を引っ張って距離をとる。
「あなた誰!?」
「僕?僕は君が持っているその男の弟さ………」
髪をいじりながらそんなことを言う。その間、漆は相手のことを一切無視して輝の頬をばしばし叩く。少しだけ顔に赤みが戻ったが一向に目を開けることはなかった。
「あなた………輝に何をしたのよ!?」
この原因が目の前の相手にあることだと決め付けて漆は相手を睨みつけていた。
「僕の兄さんに何をしたかって?」
「弟?輝はあんたみたいに整った顔をしてないわよ!そんな嘘、すぐばれるんだから!そんなことはどうでもいいから輝をどうにかしなさいよ!」
「…………」
まくし立てて睨みつける。その目はもはや人のそれとは違っていた。
「………今兄さんには夢を見てもらってる」
「夢………?」
相手は頷き、説明を続ける。
「そう、夢さ………夢の中じゃ君は死んでる」
「え?私は生きてるわよ?」
「………夢の中では………今頃君の墓参りを兄さんはしている………そして、死んでしまった君を自分のせいだと思って自ら精神を壊すことを行っているのさ」
きざっぽく笑い、目を細めて漆を見下すようにねめつけていた。突如として部屋の明かりが消され、再びついたときには一人の少女が輝の弟の隣に静かに立っていた。
「………何も兄さんだけが白河全員が驚くような力を持っているわけじゃないんだよ?僕にだって少しはあるさ」
「それがどうしたの?」
「………君はずっと白河家にとって邪魔存在だったんだ。もう忘れたのかい?兄さんが君を助けるまでは君は閉じ込められていたんだよ?それよりも前のことを思い出せない?」
鼻をならしてふんと漆は言った。
「知らない、というか………輝の事だけしか頭にないもの。今すぐ私は輝をつれて看病する。あなたなんかに構っていられる暇なんてない」
「おやおや、いいのかい?何も人質は兄さんだけじゃない………」
指をぱちりとならすと上から縛られた一人の老人が現れる。
「………この人がどうなってもいいのかい?」
「別に」
「そ、それは酷いんじゃないのかのう、漆ちゃん」
苦笑しながら漆を見やるが漆はじーっと見ているだけだった。
「だって、私は輝のことだけ大事。ほかは………知らないもの」
「輝がそれを喜ぶ?」
「それは………」
漆は何も言えずにそっぽをむく。いつもは何か反応を示してくれるはずの輝も黙ったままで漆に背負われていた。
「そうだな、言い方を変えようか?このじーさんを助けるためには僕らを倒さないといけない………もし君が僕らを倒せたらじーさんだけじゃなくて君が背負っている兄さんも助けられるんだよ?」
「じゃあ、すぐにおじいさんを助ける………絶対に!」
陰が呼応するかのように歪んでいき、陰はもはや人の姿をしていない。長大な龍の姿に変わっているが漆の姿が龍になることはなかった。闇をまとうかのように、漆の周りは変に黒いオーラが立ち上っているのだ。
瞳は輝が漆を初めて見たときのように真っ赤に染まっている。
「ほぉ、兄さんが倒れているのにこんなことが出来るなんて………」
輝の弟を守るようにその少女は前に出てくると、徐々に姿を変えていく。
「いけ、ナハト」
それだけの言葉で真っ黒になった龍が漆へと襲いかかる。
「ナハトじゃと!?おぬしも封印を破ったのか!?」
「何も封印されていた黒龍は一体じゃない………それに、僕にだって少なからず力はありますからね」
鋭い雄たけびとともに口をあけ、漆を飲み込もうとする………だが、漆はそれを真っ向から受け止め、押さえつけた。
「なっ………押さえつけただと!?」
ナハトと呼んだ龍をけしかけた少年は驚いている。
「…………この程度?今の私をなめてもらっちゃ困る………輝、今すぐにでも助けてあげるからね!」
闇はさらに黒く輝き、漆の瞳は更に赤く染まって輝いた。
「…………ずっとずっと一人ぼっちだった私を出してくれた。それに友達だって輝のおかげで出来た!人間と龍が共存できるって教えてくれた………それに今だって、私のことを助けにここまでやってきてくれたっ!!」
押さえつけられているナハトは暴れるがもはや漆に勝てることなど皆無……それは誰が見ても明らかなもので徐々に元気をなくなっていき動かなくなった。
「………私は同類を傷つけたくなんてない………さ、早く輝を助けて」
「くっ………何も腕力だけが戦いじゃない!」
ぱちりと指を鳴らすことにより、電気がつき、再び消える。
「ここは………」
漆の前に広がった光景、それは墓地だった。




