久遠編:そしてもう一人は
久遠編:そしてもう一人は
久遠にあらかた事情を話し、俺は絶対に久遠を助けると誓った…………勿論、そんな恥ずかしいことを久遠には話さなかったのでそれから手をつないで走っていた俺らの前に目的の人物がいた。公園の出入り口に設置されていた滑り台の上に立っていたのだ。
「よぉ、輝………夜遊びか?それとも路上プレイの場所探しか?」
滑ってきて俺らを足元から眺める。
「じ、じーさん!」
すでに何かを知っているといわんばかりの表情、そしてその態度は俺にイライラをプレゼントしてくれる存在だった。
「あんた、もしかしてはじめから何もかも知っていたのか?久遠のことを!」
詰め寄って気がつけば胸倉をつかんでいた。
「あ、輝さん?何を………」
久遠が俺を止めようとするがおれの手は止まらな………痛い!痛いっ!
俺の手をつかんでそれこそ力づくでじーさんの胸倉から手を放させた。これが人の力と龍の違い?天と地ほどの差を実感した。
俺から離されたじーさんだったが、別に気に障ったとかそういった態度は一切見せずに真剣そうな表情で言った。
「いいや、しらなかった………といわせてもらおうかのぅ?じゃが、おまえさんたちが行きたい場所を教えてやってもいい」
「本当か!?」
「ああ、わしはうそをつかん」
その言葉自体が嘘っぽかったがもはやすがりつく相手はこの人しか残っていないのかもしれないと思っていた。
「じゃが、おまえさんたちが求めているものはすでにそこにはないぞ?」
「てんめぇっ!!」
にやりとした表情にかっとなって再び胸倉をつかもうとしたのだが、あっさりそれを久遠に止められる。
「ぐが…………」
「すみません、おじいさん…………」
「結構結構、もはや輝の心の中には久遠しかいないようじゃのう?」
「……………」
「え、えーっと………」
なんとなく未だに俺の手を握っている久遠の顔が上気していておれのほうを見ている気がした。
「それで、どういうことだよ?」
「ああ、今から焚き火をしようと思ってなぁ、ほれ」
取り出した一冊のファイルに五つの記憶媒体。それを何の未練もなく地面に落してついでに火をつけたマッチを落とした………が、いまいち火は燃え上がらない。
「よし、着火剤をかけてみるか」
「え?」
「あの、危険………」
ですよと久遠が言う前にどこからか取り出した着火剤を放り込んでいた。
ぼんっ!!
そんな音と共に火は燃え広がってあっという間に燃やすのはどうかと思われる記憶媒体があっさりと燃えはてた。
「これでお前さんたちの当初の目的は果たした…………じゃがな」
そういったじーさんの額に何かがのめりこんだ。
「え?」
「あ………」
そのまま後頭部を地面にたたきつけて大の字に転がる。何かが飛んできた方向………そちらのほうを急いでみると暗かったが一人の人間が立っているのがよくわかった。
「よくもやってくれたな、くそじじい!」
その手に、拳銃が握られていること、その表情は殺意に塗られていたことを俺は知った。
「お、おまえ…………」
「輝さん!」
相手に躍りかかろうとした俺の腕をつかんであっさりと遊具の陰に隠れるようにひっぱった。
「なにするんだよ、久遠!」
「冷静になってください!輝さんが撃たれたらどうするんですかっ!?」
「…………」
その眼に涙をためて泣いている久遠を俺は抱きしめる。
「安心してほしいなぁ、僕は無駄なことはしない主義なんだ」
かつかつかつ、そういった音を出しながら隠れていた俺たちの所へとやってきて銃を久遠へと向けた。
「っ!?」
とっさのことで俺は久遠をかばえなかった………いや、もしかしたら怖くて体が動かなかったのかもしれない。とにかく、その結果が迎えたことは………
「久遠ぅぅっっっっ!!」
俺の声が公園に響いたことだった。




