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漆編:黒き龍、心を知りて。

むしむしする暑さに雨………これが梅雨ですね。じんわりとした感じの汗が下着をぬらし、無性にいらいらしてしまう………乾燥剤を部屋中にばら撒きたい心境です。

漆編:黒き龍、心を知りて。


「時雨君、絶対に私を幸せにするって言っていたのにっ!!」

「誤解だ、亜美……僕は今も君のことが好きだ」

「何よ、その嘘!私が何にも知らないって思ったら大間違い!これ、見なさいよ!」

「これは……いつこんなものを!?」

「あの女狐にあなたはだまされてるだけなの!」

「あの子のことをそんな風に言っちゃだめだ!大変なのは知ってるだろう?彼女は彼女なりに、がんばって僕らと接しようとしているんだから……ね?亜美もわかってあげてよ」

「……変わっちゃったね、時雨君……ここさ、どこだったか覚えてる?」

「え?何があった……場所だった?」

「ここ、時雨君に助けてもらった場所……ここで、ここでさよならするなんて思ってもみなかった……ばいばい、時雨君」

「あ、あぐぁっ!!」

――――――――

「おい、漆……お前は昼間っから何を見てるんだよ?」

「ん?『濃い時雨』って番組。今日で最終回」

 エンドロールが流れる向こう側の画面に血のりがつきまくっている……うわ、めっちゃどろどろとしたドラマだよな……おいおい、これまで仲のよかったシーンが流れてるじゃねぇか……見ていて心の中に後悔がふりそそがねぇ?

「漆、これみて面白いか?」

「ん〜?よくわかんない。友達だよね?この二人。なんでケンカなんてしてるんだろ?」

 どうやら冗談とかじゃなくて本当によくわかっていない顔で首をかしげて俺の方向を見てくる。ふむ、これは解説を入れてやったほうがよさそうだな。

「友達って言うよりもだな、それよりももっと近い関係だ。もっと、親しい関係」

「えーっと、親友?」

 一生懸命考えた末に出てきた言葉なのでよしとしようが、これはこれで違うものだな。ああ、そういえば女子と男子の間に友情はあるのかどうかをよくきくのだが結局のところ終止符は打たれたのだろうか?あれってやっぱり見る側の考え方によるんだろうなぁ……って、話がそれてるぞ、俺。

「違う違う。たしかに親しい存在なんだけどさっき男をぐっさぁってやったほうは刺された男の親友じゃないぞ。親友が別の友達と仲良くしているとこを指摘されたぐらいであそこまで狂気的な瞳をしないからな」

「ん〜そうだよねぇ?それだったら私、今頃輝を刺してるもんねぇ?だって、久遠や千佳、由佳と仲がいいから」

 首をかしげる漆にちょっと恐れを抱きながらも俺は持論を展開することにした。

「まぁ、世間一般的に言うならばあの二人は恋人だったんだ。恋人、わかるか?まぁ、彼らの場合だったら年齢的に見て夫婦だったんだろうが……」

「夫婦?」

 首をかしげるところをみるといまだよくわかっていないようだ。

「妻と夫だな……」

「それって、どういったことをする人なの?」

「朝起きたらおはようって言って、どっちかが料理を作って、お互いがお互いのことを信頼しているって感じだなぁ……」

 これぐらいしか俺は知識を持っていないというかこれ以上踏み込んだようなことを言ったらR指定に引っかかって削除されかねん。もしくは伏字となるだろう。

「夜に『ピーッ!』を『ピーッ!』して最終的には上から『ピーッ!』をするの?」

「……いや、さすがにそんなことをするとは思えないな。中にはしない夫婦もいると思うぞ、多分」

 無知とは恐いことだな……何も知らずに放送禁止用語を連発するなんて……

「ふぅん?じゃ、私と輝みたいな関係なんだ?」

「え?いや、それは……」

 漆はうれしそうに両手を挙げて万歳なんてしているが、俺は固まっていた。漆と公式に、そんなことをしてもいい間柄だったなんて……

「だって、朝起きたらおはようっていって輝が料理を作ってくれて、お互い信頼してるもんね?」

「ン〜確かに、言われて見ればそうだよなぁ……」

 R指定の部分を取っ払ったらこんなソフトな関係に……あくまで、俺の理想像なのだがそれがすでに具現化しているといっていいぞ、これは。

「じゃ、私はやっぱり輝を刺していいことだよね?」

「なぬ?」

 なぜ、そうなるのだろうか?漆の顔はまるで日向ぼっこをしている猫のような感じだったがいっていることは大統領しか押せない危険なスイッチを押すか、押さないかというところだ。

「だって、久遠とか千佳とか由佳に同じようなことしてるし……」

「あ〜そうだな、それはちょっと違うっていうか……」

 こりゃ、いきなり夫婦とかの考え方を教えたのが間違いだったといまさら気がついた。漆が立って台所に行こうとしているのを一生懸命抑える。漆の目には何を思ったのか包丁しか映っていない。

「ああ、あれだ、俺がどうやら段階を超えすぎて間違えてしまったようだ!そういったことなら俺より隣の奥さんに聞いてきてくれっ!!」

「隣の奥さん?」

 不思議そうに首をかしげている漆よりも先に包丁を取り上げてさっさとそれを隠す……まぁ、目の前で隠したって無意味だというのはご理解いただけるだろう。

「ああ、あの人は夫がいるし、多分あの人ならさっき見たようなドラマとか見てそうだからな!きっと俺より詳しく教えてくれる」

「ん、わかった」

 おとなしく従ってくれて本当に助かった……ちゃんと隠した包丁は片付けておかないと身の危険を感じる……

「じゃ、行って来ます!」

「ああ……行ってらっしゃい」

 若干の不安はあるものの、隣の奥さんなら何とかしてくれるはずだ……そう、俺は信じている。

―――――――――

「輝、ただいま」

 俺が夕食の準備をしているところに漆が帰ってきた。

「ああ、お帰り……で、どうだった?」

「ん?え、えっと……」

 照れたような顔を俺に見せた後、漆は何かを言おうとしていて……

「あのね、よくわからなかった」

「わからなかった?」

「うん、もうちょっと大人になってから来なさいって言われちゃった」

「ふぅん?」

 よくわからないな……十分漆は大人だろうに……胸だって出てるし。

「ま、それならそれでしょうがないわな。今日はお前の好きなハンバーグだぞ」

「やった!じゃ、手洗ってくるね♪」

 廊下を駆けてく漆の後姿を眺めて俺はなんとなくだが、思った。


 漆は……漆はもしかしてまだ生まれて間もないのではないのかと…………

 そして、今日から、それ以降……漆は俺の目を見て話すことはなくなった。


さて、今回の話はどうだったでしょうか?見ての通り、漆と久遠に話が分かれていき、いずれは全く異なった終わり方をすることとなります。しかし、異なる終わり方となってしまいますが以前書いた小説『飛龍とかいてワイバーンと読む』から地続きとなっている今作ですが、『白河』の話もいぜんとして続きます…………では、今回の問題を出したいと思います!え?前々回の答え?知っている人のほうが多いでしょうから無視しますね…………嘘です、答えは愛ですよ?さて、今回の問題はコロンブスの卵でいきましょうか?コロンブスはあの楕円形の卵を見事たたせました………さて、どうやってたたせたでしょうか?

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