第十二話:「今回も………その、長すぎで………いいわけじゃありませんよ?」
前回の反省:適当な企画を垂れ流した結果、総スルーを喰らった上に読者の皆様から『おいおい、前書きに毎回毎回駄文を書くなよ………本編、読むのにもうワンクリック必要だろう?』と思われているに違いないと信じている今日この頃。あ、ちなみに今回は気合をこめて取り掛かりました。よろしければ、評価なんかよろしくお願いしたいと思います。
第十二話:
「あの夕陽に向かって走っているまるで一昔前のスポーツ漫画の登場人物っぽい人の足にスライディングを決めてころばせたい」
玄関に立っていたのはお隣の奥さん、身長二メートル、体重は三桁に達するかという……がっちがちの化け物みたいな人じゃない。身長推定一メートル六十センチ、体重四十一ぐらい………という感じの人だ。一言付け加えるならフレームレスの眼鏡がよく似合っている。
「あら、輝君じゃない?お母さんは?」
「いませんよ」
いつもこの人は俺の母さんに用事があってくるのだが残念ながら母さんとあったことは数える程度しかないそうだ。
「そう、それならこれを渡しておいてくれないかしら?」
「わかりました」
いつものとおり、ダンボールを受け取る。これを空き部屋のひとつである母さんの部屋においておけばミッション完了である。
「そうだ、ちょっと腕相撲していく?」
怪しく光る隣人の人妻……なんだかエロい題名だな。
そういえば、この奥さんはめちゃくちゃ強いといわれていて下着を盗んだ人を踏んじまってぼこぼこにして警察に突き出したといううわさを聞く。黒帯とか持っている人が暴力を働けば銃刀法違反になるそうだが……それ以上だといううわさを聞いた。まぁ、あくまでうわさだし、どう見ても俺より身体の線は細い。
「いいですよ?勝ったら何かくれますか?」
「わ・た・しの唇」
「いりません」
「即答?悲しいわぁ……」
「ちょっと漆?」
「何?」
近くを通りかかった……(なぜか頭に俺のトランクスをかぶっている)……漆をよんでレフェリーを頼む。
「輝、女の人に腕相撲なんて……」
「いいからいいから」
「……レディ〜」
俺と奥さんの視線が交差し、彼女は勝利を確信したような顔をしていた。
「GO!」
「ふんぬばぁっ!!」
「えいっ!!」
ごきっ♪
「いってぇ!」
俺はあわてて腕をはずしてさする。
「つ、つえぇ……」
「ふふ♪毎日毎日身体を鍛えてる割にはひ弱ねぇ……その程度テクニックじゃおばさん、満足できないわ♪」
テクニックも何も腕相撲は純粋に力と力のぶつかりあいじゃないのだろうか?そうおもったし、実力を惜しみなく出した……。
「……輝、ちょっと変わって」
「おいおい、漆……」
龍が人間に全力出したら大変だろうが?といおうとして目の前には隣人の奥さんがいるので控えようと思ったのだが漆が口を引きつらせながら笑う。
「大丈夫、相手にとって不足ないから」
「……まさか……」
奥さんは首をばきばきと鳴らした後に手をぐー、ぱー、ぐー、ぱー、を繰り返す。その間も手からはごきごき、べきべきという音が聞こえてきて……気のせいだろうかとおもうほどの闘気をまとっていた。
「……輝君、レフェリーを頼むわ……」
「え、ええ……」
両者が軽く腕をつかみ、俺は重ねあっているその手の上にさらに手を乗せる。
「……3、2、1……」
「ごくり……」
「……」
「GO!」
その瞬間、俺の右手は跳ね上げられて俺の身体もものすごい風を感じた。
「う、うぉぉぉぉ!?」
あわてて両手を顔の目の前でクロスさせて防御姿勢。足は思い切り踏ん張って全力をもって吹き飛ばされないようにしながらも二人の戦いを目に刻もうとする。
「くぬぬぬ……」
「な、なかなかやるじゃない?わたしもちょっと年かしら?」
組み合った手からなんだかものすごい力を感じる……ばちばちとか音、してるしさ……なんだか、腕相撲にものすごい無駄な労力を使っているようにしか俺の目には見えなかった。
「く、くっはっ!!」
「もらったぁっ!!」
だん!!!という音が聞こえて下駄箱に穴が開く。
「はぁ……はぁ……」
「所詮はまだまだ小娘ね♪わたしでよかったら何度でも相手してあげるわよ、お譲ちゃん……ところで、この子は輝君の彼女?すごいわねぇ、こんな子を手ごまにするなんて」
「してませんし、漆は彼女じゃないですよ」
「何々?どうしたの輝さん?」
おくからものすごい音を聞いて気になったのかタオルをたたみながら久遠がやってきた。
「……あ、輝さん……この人は!?」
「え?ああ、隣の奥さん」
「……あら、そっちの子とも一度やっておきたいわね……」
妖艶に笑う人妻、獲物に狙いを定めたように彼女は蛇のように鋭く久遠を眺めていた。
「久遠、悪いが俺たち二人の敵をとってくれ」
「……つ、強かった……」
そして、俺は漆の肩を抱いて下がる。
「え?よ、よくはわかりませんが……何をすれば?」
「「「腕相撲」」」
「は?」
――――――――
「よもや、輝君がいつの間にかここまで変わった子達を手ごまにしてたなんてねぇ……」
「してません」
「こんな純情そうな子まで輝君の毒牙にかかったのね?」
「かけてません。そんな話、関係ないですから準備、いいんですか?」
そういうと心外そうに奥さんは俺を見ていた。
「あらら、それはちょっと違うわ。なんにせよ、大切な人をおもいながら闘えばものすごい力を発揮するもの……あなた、久遠ちゃんだっけ?」
「はい?」
「あなたの大切な人を思い浮かべてやってみてね♪」
「は、はいっ!」
垂れ目っぽい久遠の瞳がすっと引き締まり、俺は彼女たちの組み合った手の上に自分の手を乗せる。
「3、2、1……」
「……」
「……」
両者のにらみ合い、まだ彼女たちの手には力が入っていないがものすごい重圧を俺が受けていたりする。ものすごく、居心地の悪い家だな……。
「GO!」
「えいぃっ!!」
「ぬぅっ!!」
ごっ!という音がして俺が吹き飛ばないように支えていた漆が声を上げる。
「こ、これってなにぃっ!?」
「し、しらねぇっ!!」
先ほどの1、5倍の圧力を感じて俺と漆は戦う二人を見守ることにした。
「……くぅっ!!」
「な、なかな……か、やるわねぇ……散っていった輝と漆ちゃんの敵とり……あ、あなたなんかに……」
実に楽しそうに奥さんは嗤っていた。そして、久遠の瞳には真剣という文字が浮き彫りになっているようでいつもと迫力が違う。
「わたしはっ……わたしは絶対に負けません!負けてしまった輝さん、漆さんの敵をとって見せますからっ!!見ててください、輝さんっ!!」
そう叫び、光がその手からほとばしる。
「な、なんて力なの!?」
どんっ!!
そんな音を残して下駄箱は音をたてずに粉砕。こんな現象があるのか……というぐらいに粉末状になって玄関に散ったのだった。
「や、やりましたよ輝さんっ!」
そんなにうれしいのか俺を抱きしめてぴょんぴょんとジャンプしている久遠。
「あ、ああ……やったな……」
「完敗よ、久遠ちゃん……」
そういって右手を差し出す奥さん……
「はいっ!ありがとうございま……いたたたっ!!」
右手をつかんだ瞬間ににこやか〜に握力勝負を始める奥さん、年齢不詳……見た目は二十代。
「あなたは子どもですか?」
「子どもぉ?」
そういって左手で俺の左手をつかむ奥さん。
「ぐぁあぁぁぁぁぁっ!?」
まるで万力……俺の左手がものすごい音をたてる。
「子どもはこんなに握力強くないわよ♪」
「「いたいっっっ!!」」
俺と久遠は奥さんが許してくれるまで苦しみ続けたのであった。
「……となりの奥さん、恐るべしっ!!」
「う、漆っ!何勝手に閉めてるんだよぉっ!!」
ちなみに、後に俺はもっとすごい出会いをすることになるということだけを付け加えておこう。
さて、雨月の作品の中には途中から空中分解が始まって結末が様々なものにばらけるというものが少数ですがあります。これは、せっかくキャラを登場させているのだから全員が幸せになってほしいという意図の下に考え出したものです。いまだキャラが立っていない部分が多々ありますが、よろしければどのキャラがお気に入りか教えてもらえると幸いです。




