11 12月1日(日)
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今日は休養日だ。
きっちりした人生設計のできた人なら、こういう時にまとめて予習だのなんだのするのだろうけれど、俺はふわっとした人生設計しかしていないので、「休養日」は休養するために充てる。
たっぷり寝たいだけ二度寝してリビングに来たとき、インターフォンの音がした。
母が対応に出ると、隣の部屋の彼女の涼やかな声が聴こえてきた。
「こんにちは。隣の---です。
友達とクリスマスの飾りを作ったのですが、ちょっと作り過ぎてしまって。
よろしかったら、少しもらっていただけませんか?」
「はーい。今玄関に行きますね。」
母がパタパタとスリッパを鳴らして玄関に向かう。
俺は急いで手櫛で髪をととのえて、何となくそわそわする。
玄関を開ける音がして、彼女と母が会話する声が聞こえてくる。
彼女の楽しそうな声が聞こえてきて、俺は口元が緩む。
しばらくすると、また玄関を開ける音がして、閉まる音と共に静かになった。
母がリビングに戻り、紙袋に入ったクリスマスリースや、オーナメントを見せてくれた。
「やっぱり女の子は可愛いわね。見てよ、これ、みんな手作りですって。」
俺は母が頬に手をあてて喜んでいるのを見て、彼女のことを歓迎しているのか気になった。
「母さんは、彼女のこと、嫌いじゃない?」
「え? 好きとか嫌いとか、まだよくわからないわよ。知り合ったばかりだもの。」
母が俺を見て、不思議そうに言う。
「そっか。そうだよね。」
俺は母に何を言わせたかったのかと、自分の言葉を思い返して照れた。
「そうそう、毎朝お隣りさんと駅まで一緒に行ってるそうね。」
それ、誰からの情報?
管理人はもう少し後から来るから朝には会っていないし、弟の繋がりの親が何か言ったのだろうか?
「さっき、お隣りさんが言っていたわよ。日本人の高校生の知り合いが出来てうれしいって。」
さっき!
俺は彼女の声に聞き惚れていて、内容が頭に入っていなかった。
「そうなんだ。たまたま家を出る時間が毎朝一緒で。」
「せっかくだから、英会話の練習相手にでもなってもらったら?」
母が思いついたように言う。
「そんなこと、彼女に失礼だろ?」
「彼女が嫌がらないなら、いいんじゃないの?」
これだから、親というのは!
相手の迷惑とか考えないのか?!
ん? 待てよ?
親が彼女と会って、積極的に会話しろ、と言っているのか?
いいね! 親公認だ!
「わかったよ。彼女と会って、会話すればいいんだろ。」
俺は顔が緩むのを我慢して言った。
「変な顔して。嫌なら無理しなくていいわよ。」
ここで意見を撤回するなよ!
「嫌ではないよ。だったら、彼女と会って、夕飯食べるとかしてもいいよね?
その方が自然な会話ができるし。」
「いいけど、、。さっきから、なんか顔が変よ?
顔面偏差値だけは高いのだから、変な顔するのはやめてよね。」
「だけ」は余分だ!
成績だって、頑張って上げてる最中だよ!
俺はふふ~んと鼻歌でも歌いたい気分で、彼女をどうやって夕飯に誘おうか考えて午後を過ごした。