10 11月30日(土)
学校の部活の試合があるので、朝に家を出た。
俺は別に熱心に部活をやる方ではないけれど、身体を動かすことは楽しいと思う。
現地集合、現地解散となり、残れるメンバーで反省会と称して焼肉屋で飯を食う。
店に入り、適当に席について肉を注文していく。
先輩たちが焼き始めてから、俺たち後輩も肉を焼く。
ジュージューとおいしそうな肉を焼く音と臭いに、俺の腹は期待にグーッとなりそうになった。
「お前の彼女って、確か中等部の可愛い子だったよな。」
俺の席の斜め前に座った、昨日とは別の先輩が、俺に話しかけてきた。
俺は「別れる予定です」とも言えず、「はい」と答える。
「昨日、彼女が駅でお前のことを待っていたぞ。」
え? 彼女は何も連絡してきてない。
俺の表情を見て、先輩が何か気づいたようだ。
「うまくいってないのか?」
俺はなんと答えたらいいのかわからず先輩を見ていたら、横から同じ学年の友達が言い出した。
「こいつ、今、恋わずらいしてるんです。」
俺は友達の方を見た。
なんてことを言い出してくれるんだよ!
話を膨らませるなよ!
「相手は誰だよ? 付き合ってる彼女ってことはなさそうだな。」
先輩は面白そうに俺を見る。
ほれ見たことか!
どう収集つけてくれるんだよ!
俺は嫌々ながら答える。
「年上の、綺麗な女の人です。」
焼肉の味がうまくなくなっていく。
「お前、年上好きだったんだ!」
先輩は尚もからかいにくる。
「へ~。それなら、今の彼女と二股ってわけか!」
「そんなことはしていません! その人と、付き合っていませんし!」
変な噂が流れることをここで断っておかないといけない。
「これからそうなるかもしれないんだろ?」
彼女と付き合えたら、どんなに幸せか!
しかし、そうはならないと、現実的に考えてしまう。
「彼女は、俺の相手をしてくれるほど男に飢えていないと思います。」
俺は気落ちして、先輩から目をそらして自分の取り皿を見てしまう。
そうだよ。彼女ほどの人が、俺と付き合ってくれるはずがないんだ。
俺は高校1年生のまだ子供で、背だって平均くらいしかないから彼女の方が高いし、経済的にも親のすねかじりだし、俺っていいとこないじゃないか!
どんどん暗い気持ちになっていく中、目の前の取り皿に、焼けた肉が乗せられていき、俺は顔を上げた。
「まあ、食え。食って元気を出せ。」
先輩が、朗らかな笑顔で俺の皿に焼けた肉を積んでいた。
隣に座る友達が、俺の肩に後ろから手を回して叩きながら言う。
「お前でも、女のことで悩むんだな! がんばれよ!」
俺の言葉を聞いていたと思われる数人が、俺に「まだこれからさ!」「がんばれ!」「なんとかなるさ!」と声をかけてくれる。
俺の周りの人たちは、いい人ばかりだ。
俺はぐっときて、「ありがとうございます」と一言言って、肉を腹に詰め込み始めた。




