ノーマルゲーマー・夫
「あぁ、アララ◯ト日食が起きないかなあ?」
暦を見ながら想いふける夫は、突然誰にも伝わらない言葉を口にする。
そんな夫に対し、妻はうっかり反応してしまう。
「は? 何それ?」
「え? 知らない? アララ◯ト日食と言ったら、『部分日食』、『金環日食』、『皆既日食』に並ぶ、四大日食のひとつで……」
「そういう嘘はいいから。で、何なのよ? 急に想いふけったと思ったら、よく分からない事を言い出して」
いつもの夫のバイオレンス・アンサーを妻はさらりとかわし、話を続けさせる。
「……アララ◯ト日食と言うのはね、昔、カルチ◯ーブレ◯ンと言うメーカーがフ◯ミコンで出した、シェラザ◯ドというゲームがあって、その中に大魔法というのがあって、その大魔法を使うためにはアララ◯ト日食が必要なんだ」
「随分とざっくりとした説明ね」
「君はあまりゲームに詳しくないから、こと細かく説明しても、途中で意味がわからなくなるだろう?」
「何か、苛つくわね……」
夫の心無い言葉に妻は苛立ちを覚えるが、夫は構わず話を続ける。
「それで、その大魔法の中にエロヒムーンというのがあって、それを使うと一気に大金持ちになれるんだ!!」
「それで、アララ◯ト日食が起きて欲しい……と」
妻は夫の子供みたいな発想に呆れ、ため息をつく。
それでも夫はまだ話を続ける。
「因みにそのゲームRPG何だけど、他のゲームと違ってお店で値切ることが出来たり、借金が出来るんだ!」
「は!? 借金!?」
「早く借金を返さないと、利子がついて最終的にはgame overになる所何かも、現実的だったね。」
「それで、あなたはそのゲームはクリア出来たの?」
「いや、それが駄目だったんだ。たまりにたまったつけが最後の最後で回ってきてね」
「あなた……、まさか……」
夫は深いため息をつくと、妻の想像通りの言葉を口にした。
「あの時、返せるときに返しておけば……」
「現実世界ではgame overにならないでね……?」
ごめんなさい、
あぁ、ごめんなさい。
ごめんなさい。