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第一話「別れ」・9回裏ツーアウトツーエンドスリーfor逆転サヨナラ満塁ホームラン

平成10年3月午前3時冷たく霧雨が降っていた。都会の街中は朝日が青く光りはじめていた。名古屋駅の新幹線に続く、大理石の広い空間をよろよろと歩く男女の姿があった。男の方はどこか 疲れ果てたようにだらだらとしていて、気力がぬけたような 歩き方がどこか、、みすぼらし気にも見えて見劣りする風貌に見えた。男は右手で、キャスターのとってをつかみながらもよろけるようにふらふらと歩いていた。その後をやや猫背気味な濃い化粧がはがれかけたような疲れ顔の女が、よろよろと男の後ろになんとかたよりながらくっついて行くかのように歩いていた。キャスターの音がカタカタと空間に響いていた。男はやがて新幹線の券売機の前で、立ち止まって なにやらポケットからなんまいかの札びらをにとりだして、機械に滑り込ませると真剣な顔をして機械のボタンをポチポチと押しはじめた。券売機の下の払い戻し口からコインが流れ出てきたような高い金属音が空間の中に響いた。男は、しょぼついた顔を戻し口に近ずけながら、覗き込むようなしぐさで真剣に切符をつまみとっていた。やがて、ぼーっとした顔の女の方を見ながら 真顔でポケットの中を確認するかのようになにやらポケットの中で手をなにやらもぞもぞと

まさぐりながら  何かを考えるようなしぐさでいたが 急に「おい!、こだまだけど、もう止まって

いるぞ!。」と、間宮京介は、少し声を大きくして平野洋子に向かって言い放った。女は、はっと?自分に言われた言葉だと気がついたように、こくりと、首を男の顔をみながら前に傾けていた。洋子からしてみると京介の言っているこだまが止まっているとかのことはどうでもよかった。ただこれから別れていくという現実の方がとても気になるところであり、それに対しての京介の積極的な行動の方にいくらかの怒りにもにたような感情が ふつふつと心の中に湧き上がって来ていることの方がどうにもやりきれなくてつらくなっていた。いっそ、やっぱりこれから別れるのはやめようかなぐらいの気持ちが出てきていた。大体が、今日の朝に、故郷の浜松に帰っていくという事でさえも洋子が決めたことでもなく、なぜか京介がなんとなく話をもっていったというか、言葉のはずみというか、よく話し合って決めたとかいう時間があったような気がしていない。洋子は京介が言う、「じゃあ、金曜日に帰るか?」と言う言葉に「う~ん、そうだね!」とうなずいたような記憶はあるが、そこからついつい帰り支度が始まって、いつしかお別れ会みたいな流れになってさっきまでのいつもの仲間たち

とのいつもの飲み屋での座敷での飲みになっていた事実へとつながっていくのである。洋子にしてみるとあまり京介とわかれていくんだという実感がわいていない。むしろなぜ?どうして?そこまでいくのという気持ちばかりが強い。それにしても本当にどうしてこんな風な事にまでなるの?と洋子自身もよくわからないでいるといった方が正しい。大体がそもそもの喧嘩の発端と言ったら本当に馬鹿馬鹿しい些細な事がきっかけであった。「お前の食べ物の

摘まみ代がおおすぎるんだよ!。」とまあそんな言葉からの初まりだったような気がする。いつの時でも、些細な時間の空間の場合でも小さな言葉の売り言葉に買い言葉の流れから、予想もつかない展開に言葉というものは発展してしまうので、一言の言葉というものにはより良い注意と観察力が本当に必要な物だということを洋子自身も今回のことのように大げさに発展してしまった事で若干の反省の気持ちは感じていた。やがてふたりはホームへと続くエスカレーターに乗っていた。エスカレーターから見上げるホームには大分明るい朝の陽が青色から白色の景色に変わっていて

ホームのパームライトには銀色の細い雨糸が今も光って見えた。まだ雨が降っているな!京介は少し緊張しながらそれを見ていた。あとしばらくしたら今日まで、けっこう長い時間を共にしてきた今横にいる女とこれからどれくらいになるだろうか?まあ多分しばらくは顔をみなくなる。悲しいというよりも、楽しみが減るといった方があっているかもしれない。毎日毎日 よくもあきもせずに喧嘩をする、そんな相手がいなくなるということが、多分時間を長く感じさせる要因にもなるであろう。喧嘩相手というものは時にはまあ人にもよるが、仲良し相手だからこそと、言う人もいるし、喧嘩する程に仲がいいとか、なんでも言い合える仲だからこそ感情までぶつけあえるとか 良

いことの方に捕らえる人もたくさんいたりして、一概に悪いことだとは、認めにくい。.京介には多分仲の良い喧嘩相手だったといった方が正解であろう。本当は洋子の事を一番愛した事があるのは自分ではないかと思う自負さえもある。洋子とは中学校時代の同級生であった。京介の頭の中には今でもはっきりと初めて洋子という女を この世で初めて見た時の事は今でも鮮明におぼえている。こんな言い方を誰かに言ったとしたら随分と大げさな言い方のように聞こえるかもしれない.

 しかし、確かにあの時のあの感情を言い表すとしたなら、多分こんなぐらいの表現になるであろうと思えてならない。と、いうか本当にそれくらいの衝撃はあったことは本当に大袈裟でもなく過剰な表現でもないくらいに京介には感じていた。あの、旧校舎と新校舎とをつなぐ臨時で作られていた渡り板?、のところですれ違いざまに見た洋子という女の子の笑顔を見た時には、心底 心をふるわされた記憶が今でも衝撃的に頭の中にしびれた記憶として残っているのである。それほどに洋子という女には一瞬にして京介の心を惹きつける 程の魅力があった。それが初恋というものだというのなら、たぶんそのとうりであり言葉にするとしたならまさしく初恋というものがそれであると思える。まあ、それにしても京介にとってはその当時の洋子という存在は重く烈しく 心に埋め込まれてしまっていた。 


たしかに洋子はその頃、学校の中では、みんなが今年入ってきた新1年生のなかでは一番きれいだ、かわいいだと、当時の男子たちの中ではもてはやされていた。そしてみんなが一斉に洋子に惹かれてしまっていた。そうして たくさんのライバル達の中の一人に京介もあっという間に入ってしまっていた。洋子のかわいい笑顔は強烈に京介の心を焦がした。そうして京介の毎日は洋子の顔を見に学校に通うという目的にまで変化をしていった。いつしか洋子の顔を見ることだけが一日の糧となり、顔を見ずにはいられないといった、中毒というか、ほとんど依存症に近いといったようなそんな風な精神状態にまでいつしか心は陥ってしまっていったのである。1メートル、2メートル、5メートル、10メートル、からの距離を開けながらも洋子の顔を除き見ていたりしていた。一日の中での授業と授業との間の休み時間、昼休み、放課後のクラブの時間の中での、洋子は簡単にみつけられた。そんなところを まるで忍者のように 学校のあちらこちらの隙間を動き回りながらも洋子の顔をなんとか見ようと 探しては見るということを京介は学校での一日の中での大半の時間をそんなことに費やすような日々を常に繰り返したりしていった。そんな病的なそんな行為のことを現代ではストーカー行為に近い物とされるだろうが、当時の京介にとってはそうしたことが悪びれたこととはおもわずにただ自然な自身の欲望を満たす行為となり さしての罪とも思わずにただ、ひたすら洋子に溺れるというような心のままひたすら そんな行為に ただ毎日が おぼれていった。それがいつしか自然な当たり前のような行動のようになってしまっていた。勉強が嫌いな15歳の思春期の少年はあっというまに恋に落ちて、その相手を何処からかの間を見つけてはじっと盗み見したりすることに何かしらの心のやすらぎをそんなところから得るようになっていたりした。京介が洋子の事を誰よりも思っていたという自負があるという意味の中には

そんな時間を通り越してきたからこそ言いたい自信の現われのような物かもしれない。

まあ、とにかく当時の京介にとっての洋子という存在は特別な女であっということに間違いはない。今 エスカレーターの自分の横にいる女は当時の特別な女であった洋子に間違いはない。ホームに上がると細い雨糸は降ってはいるものの、朝の明るい陽射しもまばゆく輝いていた。ホームの売店で動く初老?の女の姿が見えた。エスカレーターから降りると京介は迷わずその売店の方に向かって歩いていった。そうしてそこの前に立つと「350のビール1缶と、柿の種。」そう言いながら1枚の千円札をすっと女の手のひらの上にのるように差しだした。それを受け取った女は白いビニール袋に缶ビールと柿の種を素早く放り込みながらおつりのコインを京介に差しだした。乾き物のつまみの中で唯一洋子が好きなスナック菓子である。キャスターはバックの中にしまって 手持ちにしたボストンバッグを右腕に抱えて左手にビニール袋を持った京介はそこから新幹線の前車両の方にどんどんと歩いて行った。洋子はその後ろ姿を追いかけるように早足になっていた。やがて京介はふっと、立ち止まり、洋子が来るのをいくらか待って、洋子になにやら呟いた。そうするとすうっと、前のめりに体を傾けて車両の中に入っていった。洋子もその後を追うようについていった。前5車両は自由席で、まだ他の人の姿はなく、空席の車両へと京介と洋子は急ぎ足で空席の車両通路を進んで行った。やがて、急に、京介はある所でふっと立ち止まると3列並びの個人シートの隙間に体を入れていき右腕に持っていたボストンバッグを窓側の荷物棚置場の所にすうっと、バッグを滑り込ませるようにきちんと棚幅に丁寧に角をあわせるようにどさっと置いた。そうしてちゃんとおさまったのを確認するかのようにバッグをポンと叩いた。すると左手に持っていたビールが入ったビニール袋は窓際のシート席にポンと置いて洋子の方に歩いてきてすれ違いながら追い越していくと今度は車両の外、 ホーム側に向かって、勢いよく 体が宙を飛ぶような感じでポンと飛び降りると、まるできれいに着地が決まったかのようにすくっとそこに背筋が伸びて両足まで揃って、直立姿勢になったような形になった。洋子は乗車扉のところまでは京介のあとをついてはいったが、降り口の所ではすっと立ち止まった。そうなると京介と洋子は扉を間において向かい合わせに間1メートルぐらいであろうか?向かい合う形となった。

と、そこで「まもなく東京行き、4時7分発、こだまが発車いたします!まもなく扉がしまります!ご乗車のお客様は白線の所までお下がりください。!。」ホームになめらかで甲高いアナウンスの声がながれた。瞬間、 二人の体は緊張でいつのまにかで、背筋がすうっと、伸びたような形のままの姿勢で向かい合っていた。やがて京介は洋子の顔をぐっと見つめた。そこで扉が、がーっとした音をだしてしまったのである。透明な扉のガラス越しの向こうの洋子の顔も京介の顔をしっかりと見つめていた。互いの眼差しには緊張感そのものがあった。しかし、まさに

そのとたんの、次の瞬間ではあったが、洋子の顔が、急に崩れ落ちるような表情になって、あっという間のことではあったが、まるで果実が ぎゅうっと絞られたかのように洋子の顔が、 泣き崩れた表情にかわったのである。そうして頬には大粒の涙が流れでている、そのあっという間の表情の崩れた時間の速さに京介の心臓はおもわずドキッと大きく高鳴っていた。驚きはもちろんであったが、あまりに急すぎた表情の変化に頭の中の理解は予想もしていなかったことが大きすぎて、言葉をおもわずに忘れてしまいそうな程に 驚いていた。まさか?なんでそんな泣き顔になる?驚きと戸惑いが強く京介の頭の中でうずまきだしていた。そして 大きく動揺する心にも震えながら、ふいに体まで固まったかのようにおもわずそこに立ちすくんだように茫然(ぼうぜん)と、そこに立ち止まっていた。よく頭の中が真っ白になるというたとえ話を聞くことはあったが、 まさにこんなような時のことを指す事なのではないかと思うぐらいに 今まさに京介はその言葉どおりのことを体感しているかのような気持ちになっていた。目の前の扉のガラス越しに両手と顔を押し付けたような姿勢のままで、しかも、 頬には大粒の涙がこぼれたままの洋子がガラスの向こう側の列車のスピードの速さのままにすうっと、流れて行きながら その映像のような景色はだんだんと小さくなっていき、 やがては、京介の視界の限界の最後の果てまでへと、その景色は流れていきながらも、やがてはすうっと、消えていったのであった。それはとても心を震わせるには全く十分すぎるほどに 現実的な映像そのままで、洋子の充分すぎる程のリアクションでもあったかのように京介の頭の中にははっきりとした記憶となって、強く映り込んでいた。列車と共にそれはしかし、あっという間に流れていって 今ではもう手の届かないような遠くへとなっていった先に、 まるで一瞬の間の寸劇でもおこなわれたかのように見えた。そしてそれはものすごい速さで流れていき、一瞬にして、消えていったかのように京介の頭の中では 感じたのであった。その大粒の涙はまだ頬をつたったままでいて 洋子の姿といえばそれもまた、あっという間の出来事のように小さくなっていってしまった。まだその残像が、強烈に京介の頭の中にはまだ残ったままでいて、その姿を見送ったままの、今まさに京介はその驚きに圧倒されてしまったかのようにそこに立ちつくしていた。あまりにも突然すぎたその洋子の泣き崩れた顔と大粒の涙が、予想外すぎて、 慌てて動揺して、身動きさえできないでいた。洋子は昔からそういえば想像もつかない言動とか、態度とかをとるような、ちょっと変わった癖があるような女ではあったが、逆にそこが面白くて憎めなくて、飾らない自然体な性格がかわいくて魅力だ、 という人も 過去には何人かはいただろう、が、京介からしてみればそんなことは単に無教養でただ、おちゃらけ娘だったということぐらいにしか思えていない!。が、!。それなのに、なぜか今日のこの涙の中にはなんとなく過去の洋子の性格から 想像してみてもどこかちょっと違うものがあったかのように 京介の心にはなぜかはわからないが 引っかかって残るものがあった。どうしてあんなにも、急に、しかもあんなにも、悲しそうに急に泣き崩れるような顔になったのか?なぜ?、もっと、事前に 自分に対しても言える時間なり、訴えれる事ができたはずであったと思うのに、別れたくないとか、悲しむ理由とかを話す機会もあったはずなのに?なぜ?こんな直前になったここで、あんなにも泣いたりしたのか?考えだしたら本当に思い描くことが

たくさん出てきてしまう。なにが、今、ここで、悲しかったのか?、なぜ、そんなにも涙をこぼしてまで?なにを?俺に訴えたかったのか?。どうにも、京介には理解ができなくて、そして、今の今までの間まで、それに気が付かなかったのか?さっきまでは自分と一緒にいたというのに、洋子は何にも話さずに黙っていたのである。それが、余計に傷ともいえるような痛恨の後悔のように感じる。そして、それが、今、怒涛の波のようになぜか今、心に押し寄せてきている.それを 何とか

受け止めようとしている自身の心が苦しい。新幹線のこだまのフロント部分の丸い形の前頭部は、銀色の細い雨が降りそそぐ雨の中に小さくなって消えていった。赤茶色のレールの先はぼんやりとした黒っぽい灰色のような風景に見えていた。それを見送ったばかりの

京介はそこに まだ立ちすくんだ姿勢のままでいた。そうして   

しばらくはそのままで、 動けないままの京介は じっとそこに立ちつくしていた。  赤茶色のレールがまっすぐに伸びている遠い先の 景色には白い霧がけむっているかのよう見えて、なぜか、もの悲しく感じながらも、

、どんよりとした薄暗い風景がぼんやりと朝早い冬が冷たく、見えていた。レールはその白い霧の中へと続いていて、 小さくなった列車の後ろ側のフロントの丸はやがては小さくなってその白い霧の中へと のみこまれながら、消えて行ったかのようにも見えた。さっきは本当に そんなように京介の目には写って見えたかのように感じた。そしてその景色は今ではもう雨の中にけむっている景色へと変わってしまっている。今はそれが、まるですべてが、終わってしまった後のように静かに見えているのである。そして、京介の頭の中には、いまだ、レールの先に消えて行ったさっきまでの残像がまだうっすらと残って見えていた。残像の中には頬に大粒の涙を流しながら、ガラスの向こう側で、洋子が列車のスピードと共に流れながら、小さくなって消えて行った姿であった。なぜか、悲しすぎる 別れを映し出した まるで映画のラストシーンみたいに叙情的(じょじょうてき)で、激しくて、おもわず 涙がどっとあふれでてきそうなほどに狂おしくて、切なくて、 まるで心の溝に染み込んでくるかのようにそこには、重苦しくて、緊迫感に包まれた感動的なドラマを鑑賞(かんしょう)した後のようであったかのように思えて仕方がない。

。だからこそ、余計にその残像が京介の心には、苦しくなるほどに胸に突き刺さってきていた。そうして、今ではただ、呆然としてそこに立ちつくすだけの 自分が精いっぱいでたたずむようでいた。


やがて、いつのまにか屋根のないホームの先の方に立っていたせいか、頬に落ちてきた雨の冷たさを敏感に感じとったのか、

はっと、なって、驚きながら、茫然茫然(ぼうぜん)としながらも、なぜかそこに 立っていた自分がいることに、ふっと、 気がついた。 列車が去って行った後の空気を感じてか、やがて

見送りが、終わった後を察してか、過ぎ去ったことのように、ふっと、一歩あるきだしていた。が、その時、うっと!嗚咽のようなうめき声がおもわずに口をついてでてきていた。それからこみあげるように涙が、目頭に うかんできた。おもわず、右手をズボンの後ろポケットにいれると、常に忍ばせておいてあるハンカチをあわてて 取り出すと、おもわず、こぼれた涙をぬぐい隠すようにそれを目に当てた。そうしながら、洋子とは、別れない!。思わずにそんな言葉が、唐突に頭の中を駆け巡ってきた。一瞬、、 よろめいたように揺れた体制を整えながらも京介は、やっぱり、洋子が好きだ!、、と、 まるで急に雷にでも打たれたかのようにそのことが強く、深く、そんな考えが急に、ふっと、 頭の中に渦巻いてもきていた。そしてなぜか、あの時、あの場所ですれちがいざまに見た洋子の顔までもまでが浮かんできていた。忘れられないほどにその微笑みは圧倒的に光輝いて美しく、本当にこの世の中で、1番輝いていて、 今日まで生きてきた現在

という世界の中では自身が感じえる限りの心の中では確実に 最高に心がときめいた時間であったと、其のことは 愛おしいと、思えるぐらいにまるで、 それが幸せという気持ちに近い物の姿のように思えて仕方がなかった。それを別の表現でいうとしたなら,偉大な程に強くて大きな愛❓それをまさに形に変えてみた、、というような物で まさに、それを、幸せという形にたとえてみて、まさにそういったことを

言葉にしてみて表現するとしたなら本当に、それが一番ふさわしい言葉であるように思えた。そして今は、その去っていった向こう側を、レールの先に消えて行った列車の残像の向こう側を見つめていた。今消えて行ったあとの景色はぼやけた灰色がどんよりとして見える。細い雨糸がまた頬に濡れて冷たく当たった。赤茶色のレールはまっすぐに伸びていて、遠い先の景色は白い(もや)の中に突き刺さっていくかのように伸びていた。そんな景色の残像が今 京介の頭の中には



はかなくて、あっけなくも消えていってしまった大切な想い出の品物を失くしてしまって、途方に暮れている、まるで子供みたいに 

ただ、呆然とホームにひとり寂しそうに

立ちつくしている姿だけであった。そうしながらもまだ、大きな喪失感みたいなものも同時に心の中には重くのしかかってきていた。

それと気だるいような悲しみみたいなものも、同時に、 感じていた。やがて、気がつくと、いつしか頬に一筋の涙がつたっていた。そういえば

さようならの、言葉さえも言ってなかったな?と、京介は、まるで忘れていたものを急にふっと、思い出しては自己嫌悪に、また呆れて、つい微笑んでみたりする人みたいに静かに降る雨の方を見ながら、くすっと笑っていた。そうして これまでに自分が洋子という女に関わってきて できた 数々の想い出の一つ一つを 丁寧に振り返るように頭の中で、ゆっくりと、自分なりに思う、洋子という女に対して感じる自分の心の中のすべてをじっくりと、そして慎重に、まるで世界一の美酒でもたしなむかのように、自慢げに満足感を充分に味わっているかのごとく、 洋子に対して自分が感じえれる限りの最大の愛おしさみたいなものを込めながらも、しみじみと、そこに立ちつくしながら

洋子が好きだという自分の気持ちをあますこともなく忠実に思う噓!偽りのない自分の心のまま

の姿で、洋子が好きだという気持ちというものを一直線上に続いていて 長くて揺るぎのないレールの上に重なるかのごとく京介が抱く洋子への、その強い愛というものを本当に自由にまっすぐを見つめながら 思うがままに描いていた。





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